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欅坂46の6枚目のアルバム「ガラスを割れ!」

 欅坂46の6枚目のアルバム「ガラスを割れ!」が発売された。そのタイミングで、Spotifyでも解禁された。これまでは、本人たちのアルバム以外の欅坂の楽曲が入っていたが、これで、スマホにCDデータを落とさなくても、どこでも聞ける。

欅坂46、Spotifyで解禁 「サイマジョ」から「ガラスを割れ!」まで一挙に

 いろいろな想いが交錯するアルバムである。「ガラスを割れ!」はタイプAからDまでと通常版の5種類。タイプAは、平手友梨奈だけの写真で構成されている。そして、他のタイプには、平手が一切出ていない。タイプAは、まるで平手のシングルアルバムのような仕立てである。そして、今回、僕が一番気になった曲は、平手の「夜明けの孤独」である。繰り返し、聞いている。スローバラードだけど、TAKAHIRO先生のソロの振付がみたい。

 欅坂46というグループの歴史は、一冊の青春小説のようなドキュメンタリーである。秋元康をはじめスタッフは、21人の女の子の心の軌跡を追いかけるように、あるいは先回りするように、追跡してきた腕っこきのジャーナリストである。

 コンプレックスの塊のような21人の女の子たちが、大人たちに囲まれ、グループ内の個別の関係性を深めながら、チームとして成長し、チームが成長することにより、自分自身も成長していく。女子サッカーのなでしこジャパンやカーリングの女子チームのように、個人の魅力が混ざり合い、チームそのものが個性を輝かせる。「誰かが辞める時は、全員が辞める時」と言っていたのは誰だったけか。アイドルグループとしては稀に、デビュー以來、卒業した子がいない。ファンも箱推しが多いのだと思う。

 タイプAの平手は、発煙筒を持ちながら、つり包帯をしている。満身創痍というか、ボロボロである。ネットでは、幕張での発煙筒男を思い出させる小道具はひでえのではないか、という声もあるが、ミュージックビデオで、包帯を燃やすところからはじまる。これは、平手自身の提案だと、映像監督の新宮良平は語っている。まさに、発煙筒事件などでは「私は泣かない」という意志表明ではないのか。

 秋元康は、初期の頃から「平手は、他のメンバーとは目指すものが違う」と語っていた。平手が自分自身でそれを強く自覚したのは、2016年暮れの、COUNTDOWN JAPANの頃だろう。新年明けから、明らかに、目指す目的を自覚して進み始めた。それは他の仲間や周辺にとっては、唐突に見えたかもしれないし、自分勝手に思われたかもしれない。

 歌謡曲の歴史を見直すと、藤圭子・山口百恵・中森明菜など、他とは一線を画す歌手は、みずからの内に何か昏い影があり、それを振り払おうとして叫ぶ声が、聴くものに訴える。「夜明けの孤独」は、叫んではいないが、静かな叫びが聞こえてくる。

群れの中 守られていても
本当の道は絶対
見つからない
(夜明けの孤独、作詞・秋元康)

 14歳になったばかりの平手が欅坂46に参加して、出会った大人が秋元康であり、TAKAHIROだろう。特にTAKAHIROは、欅坂46の方向性を大きく切り開いたし、平手たちにとっては、レッスンの場で一番、長く時間を共有した同志だろう。TAKAHIROが話しているさまざまなビデオを見ると、情景を言葉にすることが出来る稀有な振付師だと思う。TAKAHIROは大学を出て、アメリカに一人で行き、アポロシアターで修行をし、頭角を表した。一人にならないとつかめないものがあることを、平手は自覚していると思う。

 平手はやがて、自分の言葉で歌を歌いだすと思う。それが彼女の目指す道だと思う。その前に、TAKAHIROの作詞で平手に歌ってもらいたいという気持ちもある。

 当初はメインパーソナリティだった「こちら有楽町星空放送局」(ニッポン放送・こち星)に出なくなったのは、放送作家が、平手の意にそぐわない演出をしたからだろう。 ラジオが嫌いなのではなく、Tokyo FMのSCHOOL OF LOCK!には通常通り出ているので、遠山校長とは心が通いあえているということだろう。わがままではなく、意志の通じない人とはコミュニケーション出来ないという、正直すぎる態度なのではないか。

 4月6日に、デビュー2周年ライブがある。「欅坂46 2nd YEAR ANNIVERSARY LIVE」(武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナ)。2周年ということは、高校でいえば3年生になるということである。欅坂46が、とてもユニークな学校だとしたら、あと一年で将来の方向性を決めなければならない。「二人セゾン」の心情を、現実として受け止めなければならない一年でもある。

 「ガラスを割れ」は「想像のガラス」であり、作られた自分を壊して、本当の自分として出ていくということだろう。若い時代は、自分を、過度に大きく思ったり、過度に小さく思ったりする。自負と自責の自分の中での戦いが起こる。文学とは、その相克の中で生まれるものだ。想像の自分を壊して、リアルな自分として生きていくことが、誰もが目指すものだろう。平手だけが追求しているのではない。

 そして、リアルな自分をメンバーの一人ひとりがつかんだ時、新たな欅坂46がスタートするのだと思っている。

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