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アルゴリズムによるネットワーク型の建築をめざして


 コロナ・パンデミックの混乱の中で、友人たちが続々と書籍を刊行していく。たまたまの出版のタイミングもあるのだろうが、じっくりと自分の経験をみつめなおす時間と環境が与えられているのだろう。

 柄沢くんは、数学的な思考と、社会への洞察を深め、建築の世界で独自の領域を切り開いてきた。アルゴリズム建築という、建築の世界では世界的な潮流だが、閉鎖的な日本の建築世界では、なかなか受け入れられない手法だ。衣食住が人間社会の基本アイテムとすれば、衣食は、世界で多くの日本の個人が活躍してるが、建築の世界では、まだ日本建築会の権威ある人たちしか、国際性は持ち得ていないように見える。そうした日本風土の中で、柄沢くんは、個人として、日本よりむしろ世界での評価が高い建築家である。

 柄沢くんとは、ここ数年、さまざまなテーマで議論してきた友人である。新刊「柄沢祐輔 アルゴリズムによるネットワーク型の建築をめざして (現代建築家コンセプト・シリーズ) 」を送ってもらった。

 柄沢くんは現代社会について、さまざまにアプローチしている論客であるから、理論書なのかと思って頁を開いてみたら、まるで、美しい画集であった。柄沢くんのコンセプトデザインによる建築画が、数学の定理とともに紹介されている。

 本書をゆっくり眺めつつ、僕らの生きる社会を見つめ、新しい社会のイメージを思い浮かべる。コロナ・パンデミックは、衣食住のあらゆる領域において、これまでの社会の方法論を遮断させ、まったく新しい方向性への思推を、当事者たちに要求している。建築家・柄沢祐輔が、この人類的な厄災の状況を経て、どういう美しい建築を実現していくのかが楽しみである。

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柄沢祐輔 アルゴリズムによるネットワーク型の建築をめざして (現代建築家コンセプト・シリーズ) (日本語) 単行本(ソフトカバー) ? 2021/2/10
柄沢祐輔 (著)


▼柄沢祐輔
建築家、柄沢祐輔建築設計事務所主宰。1976年東京都生まれ。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科建築・都市デザインコース修了。文化庁派遣芸術家在外研修制度にてMVRDV(オランダ)在籍、坂茂建築設計勤務を経て、2006年に柄沢祐輔建築設計事務所設立。『10+1』48号「アルゴリズム的思考と建築」特集(INAX出版、2007年)では責任編集を務めるなど、情報論的、あるいはアルゴリズム的な思考を軸とした建築・都市空間の探求を行なっている。2011年英国D&AD賞Spatial Design部門受賞。主な展覧会に「日本の家 1945年以降の建築と暮し」(MAXXI国立21世紀美術館、バービカン・センター、東京国立近代美術館、2016-2017)、「Japan-ness. Architecture and urbanism in Japan since 1945」(ポンピドゥー・センター・メス、2017-2018)など。s-houseの模型はフランス国立ポンピドゥー・センターの所蔵コレクションとして収蔵されている。

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