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The 3 Revolutions of Web 3 日本語訳

こちらの記事は、2020年1月22日にOsmoのデザイナーTony Aubéさんによって Medium に投稿されたThe 3 Revolutions of Web 3の翻訳記事になります。

2年前の記事とはいえ、Web3の概要がインターネットの歴史と共にまとめられている素晴らしい記事です。

日本で周りの人に「Web 3.0」について説明するときに良い記事がないかなーと探していたところ、この最高の記事を発見したのがきっかけで、

著者のTony Aubéさんに「翻訳させてください!」とお願いしたところ

Tony兄貴の簡潔な返事

なんと30分後に「いいよ!」とのこと。優しいですね。そんなこんなで、今筆を走らせています。ありがとう!Tonyの兄貴。

ちなみに自分は、42 Tokyoというコンピュータサイエンスの教育機関で学生をしているMonesynth Dofukuと言います。この記事は、同じく学生のKenta A. Takahashiと一緒に翻訳したもので、2年前に書かれた記事なので一部時間軸がズレてたりしますが、ちょくちょく訳注を挟みつつも、基本的にはそのまま翻訳しています。

1万4000字で読み応えがある仕上がりになっていますがぜひ最後までお読みください!

それではどうぞ!

ー 本文はじまりー

Web3の3つの革命

昨年、Webは30歳の歳を迎えました。

Webの概念を発明したティム・バーナーズ=リーは、近年のWebが進む方向性に満足していないことを表明しました。

“At age 30, this is not the Web we wanted”

Tim Berners-Lee

彼の価値観と、なぜそれが重要なのかを理解するためには、Webの歴史を振り返ることが近道です。

Webの歴史

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Webが生まれる前には、インターネットがありました。

インターネットは、アメリカ-ソ連間の冷戦がピークに達していた70年代に発明されました。

当時、アメリカは核兵器を中央集権的に管理するコンピューターを保持していました。

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アメリカ政府は、コンピューターへの攻撃によって、この核兵器システムが使用不可能になることを恐れていました。

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そのため、彼らは、複数のコンピュータ群から成る、アメリカ国内に分散されたシステムを作り上げました。万が一攻撃が起きても、システム全体は稼働を続けることができ、それによって核抑止を保つことができるのです。

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これは、少しだけダークな、インターネットの始まりのお話です。これが、「分散化」という考え方の起源なのです。

そこから、1990年に、ティム・バーナーズ=リーが World Wide Web を作り上げたのでした。

Webは、インターネット上の最初のアプリケーションとなりました。それは人々がコンテンツにアクセスすること簡単にしました。しかし、それは極度に専門的なツールであり、研究者や学生の間でのみ利用されていました。

しかしその状況はすぐに変わりました。

Web 1.0

早くも5年後、MosaicやMicrosoft Internet Explorerといった新しいブラウザが、Webをメインストリームへ持って行きます。

この頃は牧歌的で、古き良き時代が広がっていました。インターネットをsurf(訳注:原文ママ)するのです。当時のWeb上のデザインは酷かった。接続も、ダイアルアップ接続でした。画像やビデオをダウンロードするのには、永遠とも言える時間がかかりました。これが、Web 1.0でした。

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Web 1.0は分散化された世界で、一般的なコンピュータによって動いていました。これはTim Berners-Leeのコンピュータです。そこには「インターネットを動かしているので電源を切らないでください」と書かれた貼り紙がしてありますね。

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Web 1.0はオープンソースでもありました。誰でも自由に実装することができました。これにより、Webがプライベートなものであったならば実現不可能だったであろうGoogleやAmazonのような新しいビジネスが生まれました。

最後に、Web 1.0は読み取り専用でした。つまり、何千人何万ものブラウザを利用するユーザーの中で、コンテンツを公開できるのは、技術的な知見を持ったほんの一握りの人々だけだったのです。

Web 2.0

2005年あたりに、この状況は大きく変化しました。それはYouTubeやFacebookやTwitterというサイトが登場した頃のことで、これらはWeb 2.0と呼ばれました。

この頃になると、誰もが技術的スキルに関係なく、簡単にコンテンツをオンラインに公開することができました。Facebook、YouTube、Twitterを利用することは、自分達のWebサイトを所有するよりも簡単でした。これらサービスの存在は、今日のWebの大流行につながりました。

しかしその頃から、人々はこれら新しいサイトの問題点を見始めることになりました。彼らは我々のオンライン活動を簡単にしてくれる一方で、ゆっくりと壁に囲まれた庭園をWeb上に築き始めていたのです。Webの本来の姿から離れ始めて行きました。

Social networking sites as walled-gardens by David Simonds.

さらに、これまでWebを支えてきたコンピュータ達は、これらのプラットフォームを動かすために必要な巨大な中央集中型データセンターへと徐々に姿を変えて行きました。

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スマートフォンの発明は、この現象を加速させました。今日、我々はさまざまなことを可能にする驚くべきデバイスを手に入れました。例えば、Safari、Firefox、Chromeなどのアプリで、Webをブラウズすることができます。

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しかし残念なことに、これらのアプリは閉鎖的でプライベートで不透明な他のアプリの海の中に紛れてしまっているのです。

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Web 3.0とは何か?

まず、Web 2.0とはバズワードであることを理解しましょう。

この言葉は、上述した歴史を見てきたうちの一人であるティム・オライリーによって、Web 2.0 Summitにて発された言葉です。Web 2.0 Summitとは、エンジニア・研究者が一緒になってWebの未来について議論する大きなカンファレンスでした。

Web 2.0の概念が広がると、必然的に次の質問が出てきました。

「Web 3.0って、どんな世界だろう?」

当時は色々な憶測が飛び交いました。人々は、Web 3.0は「AIのWeb」「VRのWeb」になると予想しました。私は、これらはエキサイティングなテクノロジーだと思いますが、これらがWebを再定義するとは思っていません。

昨年、Web 3.0 Summit という名の大きなカンファレンスが開催されました。

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Web 2.0 Summitと同様に、このカンファレンスにはエンジニアと研究者が招待されました。メッセージは明確でした。それは、Web 3.0とはWebをもう一度分散化させることである。というものでした。

なぜ、Webを分散化させる必要があるのでしょうか?

残念ながら、今日のWebは、崩壊しているのです。

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なぜWebが崩壊しているのか?それにはいくつかの理由があります。

現代Webの問題

1.アド(広告)の問題

ご存知の通り、今日、Webはアドで溢れかえっています。

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なぜこんなにもたくさんのアドがあるのでしょう?Webの黎明期には、価値を伝達するためのネイティブな方法がありませんでした。なぜならば、人々はクレジットカードをオンライン上で利用することに抵抗があったからです。そのため、オンライン上で利益を得るには、コンテンツを無料で提供し、広告でマネタイズするのが一番だったのです。

それにより、AdWordsやDouble Clickといった企業が勃興することとなります。彼らはオンライン広告を促進することでコンテンツを無料で配信するビジネスモデルを可能にしました。

やがて、広告はWebのデフォルトのビジネスモデルとなりました。

これらは、Webユーザーがアド・ブロッカーを使い、メディアはアド・ブロッカー・ブロッカーを使うという今日のWebを作り出しました。

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オンライン広告は、かつての印刷広告ほど収益性がないため、メディアの収益は徐々に下がってきています。

これを補うために、クリックベイト(訳注:煽情的なタイトルをつけたり誇大な画像でクリックを誘うこと)や、フェイクニュース、ガセネタといった妖術 ー より人々の興味をマネタイズ可能なものに頼るようになりました。これは、Webが広告に依存していることによる悪循環と言えるでしょう。

2. データの漏洩

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2017年、the Economistは、「データは新しい石油だ」と発表しました。

今日では、オンライン上のデータをいかにして集めるかの競争が繰り広げられているのです。これはユーザーデータはより良い広告になるというアイデアからきています。その後のAIの台頭により、このニーズはますます強まっていますよね。

しかし残念ながら、これらデータは巨大な中央集中型のサーバーによって収集されており、そこはハッカー達の格好の的となっています。

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2018年、Equifax hackと呼ばれる、社会保障番号や免許証の情報を含んだ1億4300万人もの個人情報が盗まれる事件がありました。人々はEquifaxに対して彼らの貧弱なセキュリティを非難しました。

しかしFacebookやGoogleといった世界最高峰のエンジニアを雇用する企業達も、同年にデータ漏洩を起こすこととなったのです。

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ここでの教訓は、完璧に安全なシステムなど存在しないということです。中央集中型サーバーでデータを保持した瞬間に、誰かがそれを盗むという動機を作ることになります。そして全てのシステムは突破可能です。

2017年、63億個ものアカウントがハックされました。これは地球上の全人類のアカウント数に匹敵する数です。私はこの数が2019年も増え続けると断言します。

3. 監視

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残念なことに、データを蓄えているのは企業だけではありません。政府も同様に蓄えています。2014年、アメリカのグローバル監視プログラムPRISMの存在を世に伝えたエドワード・スノーデンによって我々はそれを知ることになりました。

アメリカ以外でも、国民のデータを収集しソーシャルスコアリングを行う中国のような政府がいくつか存在しています。

これは、あなたの国民として障害が対象であることを除けば、信用情報のコンセプトと似ています。スコアが低すぎると、飛行機や電車のチケットの購入などが禁止されることもあるらしく、これはとても心配な方向性です。

4. 検閲

次に、検閲があります。中央集中のサーバーが存在すると、政府によるアク
セス遮断が容易になります。

例えば、トルコはWikipediaへのアクセスを約2年近くブロックしていました。なぜなら、ご存知の通り、Wikipediaは国家の安全に対する脅威だからです。

中国には、グレートファイアーウォールがあり、ロシアやインドも同じようなものを持っています。

5 . データの損失

2000年前、アレクサンドリア図書館の火災がありました。炎は、何千という計り知れぬ価値の書物を歴史から燃やし去ってしまいました。

これは人類にとっての悲劇であると誰もが賛同するでしょう。そう、しかしこれと同じようなことが、現代のWebでは起きているのです。

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リンクにアクセスすると、リンク先が壊れていて、404エラーが返ってくる。これは誰もが経験したことがあるでしょう。そのページは失われたのです。

平均的なWebサイトの寿命は、100日と言われています。

毎月、2%ものオンラインのリンクが永久的に消滅しているのです。

これは、今日のWebが、文化や記録、という観点からどれだけ重要なものかを考えたときに、非常に衝撃的な数字となります。

Internet Archive Foundationのような非営利団体が、Webのバックアップを取ろうと努力しています。しかしWebの成長と消滅の速度を考えると、これは不可能なタスクではないでしょうか。

率直にいって、物事は悪化している

Webは多くの問題を抱えています。これらにどう対処していけばいいのでしょうか?

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このプレゼンテーションを準備するにあたって(訳注:この記事は元々著者がプレゼンで利用したものを記事に書き起こしたものです。)私はDesigning an Internetという、インターネットの父の一人であるDavit D. Clarkが記した本を読みました。

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タイトルが全てを物語っています:インターネットをデザインする

この本を読んで、私たちは今日のWebというものは、たくさんある実現可能な解釈の一つにすぎないということを理解しました。

私やあなたのような人々によって作られた部品を集めて作られたものなのです。当時の彼らには納期があり、妥協して、今のWebを作ったのです。

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30年が経過し、これらの部品は今日のWebが抱える問題を解決するような進化を遂げていません。

Web 3.0とは、上述した問題を解決するために、これらの部品をアップデートするための努力なのです。

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Web 3.0、略してWeb 3は、以下の3つの変化をもたらすでしょう。

  1. 通貨はインターネットの基本機能となる

  2. 分散型アプリケーションがユーザーへ新しい可能性を与える

  3. ユーザーが、自分のデータやデジタルアイデンティティをよりコントロールできるようになる

通貨はインターネットの基本機能となる

先に、私は、信頼できる価値の移動手段がないために、Webのデフォルトのビジネスモデルは広告であったと言いました。

ありがたいことに、この問題を解決してくれる発明が最近登場しました。この発明は、今後数十年の間に私達の社会に大きな影響を与えることになると思います。

その発明とは、ビットコインです。

ビットコインの革命

2018年、私はブロックチェーンとビットコインについて話す機会がありました。私はビットコインが単なる流行に終わるかどうかは問題ではないと主張しました。なぜなら、それは雪だるま式に効果を生み出したからです。デジタル通貨に対する考え方を完全に変えてしまったのです。

ビットコインは、2つの大きなイノベーションをもたらしました。

  1. 歴史上初めて、デジタルの世界に希少性をもたらしました。デジタルでありながらユニークなアイテムを作ることができるのです。

  2. 仲介者を介すことなく、オンラインで通貨を利用することを可能にしました。

これら2つのイノベーションが、価値のインターネットと呼ばれるものをもたらしました。

価値のインターネット

これがいかに大きなことかを理解するためには、Web 1とWeb 2がどのようにして情報の自由な流通に革命をもたらしたかを考えてみてください。

テクノロジーはあらゆる、新聞、電話、テレビ、本、ラジオ、写真、百科事典など、ありとあらゆるメディアを変化させました。

情報革命

これらは全て、この20年間でテクノロジーによって完全に変容した社会の構成要素です。

一夜にして、世界中の誰もが、いつでも、どこでも、無料で、瞬時に情報を送ることができるようになったのです。これは、私達の世界を完全に変えました。

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今日、私たちは未来に生きているようだと感じます。誰とでも、どこでも、瞬時に話すことができます。

これは凄いことです。

しかしよく考えてみれば、こんなに大きな技術革命があったにもかかわらず、変わらなかった社会の他のあらゆる部分の方が奇妙に思えてはこないでしょうか。

この50年間、ほとんど進化していない社会の一部

変化しなかった物事は、価値と関係があるものが多いのです。

Web 1とWeb2が情報の自由な流通を爆発的に拡大させたように、Web 3は価値の自由な流通にを爆発的に拡大させるのでしょう。

情報でそれが起きたように、次の数十年では、価値の移動がグローバルに、瞬時に、自由に、そして誰でもアクセス可能になっていくでしょう。

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ビットコインは現金や金を崩壊させる可能性がありますが、価値革命はそれをはるかに超えるでしょう。

株式、債券、ID、不動産など ー 社会のあらゆる構成要素を考えたとき、これら全てはWeb 3によって変容可能です。

これはとても大きなことです。

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分散型アプリケーションとは、ブロックチェーン、暗号通貨、P2Pネットワーク、コンセンサスアルゴリズムといったビットコインを動かすイノベーションを、Webアプリケーションに取り入れるという考え方です。

ビットコインでは仲介者なしで取引を行うことができます。では、同じアイデアで他のアプリケーションを構築できるのではないでしょうか?

例えば、Messengerのようなチャットアプリではどうでしょう。先ほどの例と同じで、子どものように友達とおしゃべりしたいときは、手を挙げて許可をもらう必要があります。結局、Facebookのような企業が、私の友人との会話を所有しているのです。

おかしいと思いませんか?一方で、Orbitのような分散型チャットアプリを使うこともできます。これは今すぐ使えるシンプルなアプリで、仲介者なしで友人とチャットをすることができます。

そう、ここにクレイジーなアイデアがあります。つまり、今日私たちが使っているWeb上のありとあらゆるアプリケーションを分散型アプリケーションに作りかえるということです。

例えば、Airbnb、Twitter、Facebook、YouTubeなどは全て、中央の権威や権力を持たない分散型バージョンのアプリケーションが有志によって構築され始めています。

上から、PeepEth、Minds、そしてDTubeです。

今日、分散型アプリケーションは山ほど存在するようになりました。

https://medium.com/@essentia1/why-the-net-giants-are-worried-about-the-web-3-0-44b2d3620da5

これは一種のムーブメントとなっています。あらゆる分野 - お金、銀行、支払い、広告、サプライチェーンなど - で、今日私たちが使っているアプリの分散型アプリケーション版を作っている人たちがいます。

分散型アプリケーションを構築するには?

先ほども言いましたが、これはWebのインフラそのものを変えるということです。

Webのインフラは、ビットコインのようなプロジェクトによって基盤となる決済システムを持つことになるでしょう。(もちろん、ビットコインだけではありません。他にも競合する暗号通貨はたくさんあります)

それから、Ethereumのような仮想マシンがあります。これらのプラットフォームは、分散型アプリケーションを動かすコードを実行するものです。

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これらのレイヤーの上に、「分散型ストレージ」のレイヤーを追加することもできるでしょう。これは、画像、動画、テキストなど、アプリに必要なソースファイルを保存するものです。これについては、IPFSプロジェクトは注目に値します。

IPFS

IPFSは、プロトコルラボフアン・ベネによるプロジェクトで、InterPlanetary File Systemの略称です。IPFSは、HTTPプロトコルの代替となることを目指しています。

大まかに言えば、IPFSを使うと「ローカルなWeb」を作ることができるようになります。これはどういうことでしょうか?

今日、私が画像をダウンロードしようと思ったら、ほとんどの場合、クラウドからダウンロードすることになるでしょう。

IPFSは、Wi-Fiなどの機器のネットワーク機能を利用して、相互接続されたネットワークを構築します。IPFSを使うとHTTPと同様にクラウドからファイルをダウンロードすることができますが、私が一度自分のローカルにファイルを手に入れたら、誰でも私のデバイスからそのファイルを手に入れることができるという仕組みです。

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これは、多くの恩恵をもたらします。

1. 検閲への抵抗が可能になる

先ほど、トルコが2年近くもWikipediaへのアクセスをブロックしていることを述べましたね。そこでHacktivistたち(訳注:Hacker + 政治的活動家たちのこと)は、トルコがアクセスをブロックできないIPFSネットワーク上で動作する分散版トルコ語版ウィキペディアを作りました。これは、先ほど述べた検閲の問題を解決することを目的としたイノベーションの一つと言えるでしょう。

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2. データの永続性が強化される

私はこの講演の準備のために色々と調べものをし、いくつかのWeb上のリンクをブックマークに保存しておきました。しかし数年後にこれらのリンクに戻ろうとすれば、そのうちのいくつかは確実に失われていることでしょう。

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しかし、私がこれらを、IPFSを使って自分の端末に保存しておけば、誰でも私のパソコンからそのデータへアクセスすることができるのです。たとえYouTubeやMediumが無くなっても、地球上のどこか1台のデバイスがそのファイルをホストしている限りは、そのデータへアクセスし続けることができるのです。

さらに、IPFSにはデータのバージョンの履歴も内蔵されています。

これは、MacのTime Machineなどの機能に似ていて、現在の多くのソフトウェアで見られる近年人気の機能です。データファイルの以前のバージョンを参照することができるのです。これはIPFSの機能として直接組み込まれています。

IPFSは、データ損失の解決を目指しているプロジェクトです。

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自分のデータを自分で管理する

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これまで政府は、パスポートや運転免許証の発行など、私たちのを身分証明を管理する役割を担ってきました。

しかし奇妙なことは、近年、民間企業も身分証明の管理者になっているということです。今日、私たちはWeb上でこの種の情報を要求するWebフォームを度々目にします。そしてそれらはあらゆる種類の個人情報を提供するよう求めています。

小規模な企業にとって、身分証明情報の管理は困難です。そこで、最近では、FacebookやGoogleなどの大手ハイテク企業が、Web上の身分証明管理者になることで、事態を円滑に進めています。

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改めて考えてみましょう。利益を追求する私企業が、私たちの身分証明を管理するようになったというのは、ちょっと変な話ではないでしょうか?

この問題は、私たちの友人であるティム・バーナーズ=リーが長い間取り組もうとしてきたことでした。彼は、この問題について多くの著作や講演を行っています。

昨年、彼はこれを変えることを目的とした新しいプロジェクトを発表しました。このプロジェクトは、Social Linked Dataの頭文字をとって、Solidと呼ばれています。

ここではその仕組みを簡単に説明します。

基本的なアイデアは、「自分の情報を民間企業に渡すのではなく、ユーザーが自分の個人情報をpod ー Personal Online Data Storage unit に保存する」というものです。ユーザーはそこに自分の氏名、住所、電話番号などを保存することができます。つまりオンライン上の自分の身分証明に関するあらゆる情報を保存することができるのです。

Podは暗号化されており、ユーザーの端末、サーバー、あるいはブロックチェーン上など、ユーザーが望む場所でホスティングすることができます。

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目指す未来は、このようなボタンでWebアプリに接続できるようにすることです。そして既存のFacebookログインのようなボタンと違うのは、データの管理は私たちが行うので、どのアプリがどの情報にアクセスできるかをきめ細かくコントロールすることができるということです。

どういうことか?これはスマホの通知管理と似ています。通知管理では、アプリのリストがあって、それぞれのアプリが送信できる通知の種類を選択できますよね。

これと同じように、「情報へのアクセス権を持つ人」を管理することができるようになるのです。

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Solidは新しいプロジェクトです。まだ作成中ですが、ここで試すことができます。(訳注:元記事のリンクが壊れていました。こちらが新しいリンクのようです。

正直なところ、今はまだあまり良くありません。あまりうまく動作しないのです。しかし、クリプトの世界には、他にも多くのプロジェクトがあります。

uPortBlockStackは、Solidと同じ問題を解決するために、それぞれ僅かに異なる方法で取り組んでいます。

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多くのプロジェクトがあるにもかかわらず、核となる考え方は変わりません:人々が自分のデータを自分で管理することです。これは多くの恩恵をもたらします。

1. Webフォームから解放される

まず第一に、フォームが不要になることです。フォームに記入するのが好きな人はいないでしょう。繰り返しが多くイライラしますよね。分散型身分証明のアイデアは、自分の情報を一度だけ記入したら、そこから全てがつながるというものです。

2. 一方通行のデータフロー

クレジットカードは完全に時代遅れの決済技術です。クレジットカードを使うとき、あなたはカード番号、有効期限、セキュリティコードを加盟店に渡します。言い換えれば、あなたのお金に対するパスワードを加盟店に渡しているのです。

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これらの情報があれば、加盟店はあなたの同意なしにいくらでも金銭を請求することができます。クレジットカードの不正利用が多いのはこのためです。

一方、ビットコインを送るときは、パスワードを教える代わりに、取引に暗号化された署名をします。この署名はユニークで、その取引にのみ有効です。したがって、販売者があなたの同意なしに再び請求することは不可能です。

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考えてみれば、身分証明の問題もこれと同じです。

自分の社会保障番号をウェブサイトに提供すると、私の身分証明のパスワードを渡してしまうことになります。彼らはそれを安全でないサーバーに保存し、しばらくするとそれはハッカーに盗まれてしまいます。

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ここに、暗号を使うことができます。自分の身元のパスワードを教えるのではなく、自分であることを証明する取引に暗号で署名することができるのです。そうすれば、誰も私の身分証明を盗むことはできません。

これが、より安全で分散化された身分証明の基礎となるのです。

3. より安全に

分散化は、中央集中化よりも安全です。

先ほども言いましたが、完全に安全なシステムというのはありません。データ流出やハッキングは常にあります。あなたのPodに誰もアクセスしないことを約束することはできません。しかし、そのデータは中央のサーバーに保存されているわけではないので、ハッカーがサーバーに侵入して1億5千万の社会保障番号を盗むようなケースは起きないでしょう。1億5000万件の分散型身分証明を盗むには、誰かが1億5000万台のPodをハッキングしなければなりませんが、それはかなり無理な話です。

このような技術革新は、データハックや監視などの問題を解決するのに役立つはずです。

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開発者が生きやすい世界

これまで、Web 3が決済、データ保管、身分証明に新しい基礎的なWebのレイヤーをもたらすことを紹介してきました。これらの技術革新により、Webアプリの開発も容易になるはずです。

例えば、Uberのようなアプリを考えてみましょう。このようなアプリを作るには、決済、ストレージ、ID管理システムなど、多くのコンポーネントを組み立てる必要があります。

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そして、Lyftのような別の会社が同じようなアプリを開発してきたとします。彼らは、しかし彼らはこれらのコンポーネントをもう一度構築する必要があります。その作業は、ほとんどUberのそれと重複しています。

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Web3の考え方は、これらのコンポーネントを取り出して分散化し、ユーザーに還元することです。これはユーザーはもちろんですが、開発者にとっても嬉しいことです。コンポーネントを重複して作る必要がないのですから。

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もしUberとLyftがこれらの分散コンポーネントを使いたくなければ、分散バージョンのUberとLyftがそれらを使うので問題ありません。

この革新的なインフラは、開発者がWebアプリを作りやすくすることで、独占を防ぐのにも役立つはずです。

Web 3はどんなものでしょう?

これらWeb 3のすべてはとても興味深いことですが、おそらく皆さんは自問自答していることでしょう。Web3は一体どうやって閲覧するんだ?と。これには、まあ、いろいろな方法があります。

MetaMask

MetaMaskについて少しお話します。私は、Web3をブラウズするための、これまでで最もエレガントなソリューションの1つだと思っています。

MetaMaskは、ChromeやFirefoxなどのブラウザに追加できる拡張機能です。追加すると、右上にこのような小さなアイコンが表示されます。

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そして、Metamaskを使ってあなたのウォレットに接続することで、ブラウザにブロックチェーンと接続するための新しい機能が備わります。

これにより、例えばRobert Leshner による Compound Finance や、CryptoKitties によるCryptokittiesといったWeb 3のアプリケーションを利用することができるようになります。

Brave

Braveは、Mozilla、Firefoxの共同設立者であり、JavaScriptを発明した非常に重要な人物である、BrendanEichによるプロジェクトです。

彼の新しいプロジェクトはBraveと呼ばれるブラウザで、デフォルトで広告とトラッカーをブロックします。これは、市場で最も高速なブラウザで、Chromeの約4倍の速さを誇ります。

Braveは、Basic Attention Token(BAT)と呼ばれる暗号通貨と連動するように開発されています。

 Braveを使って、例えばYouTubeを見るときに、BATのアイコンをクリックすると、自分のウォレットにアクセスすることができます。

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これを使えば、ネット上のどんなコンテンツクリエイターにも、そのWebサイトから直接お金を渡すことができるのです。

また、自動投稿機能もあり、毎月一定額を積み立てることができます。一度設定すれば、あとはWebを閲覧していれば、Braveが自動的に各ページにお金を分配してくれます。

Braveは現在、デスクトップ、タブレット、携帯電話のAndroidとIOSの両方で利用可能です。月間アクティブユーザー数は550万人で、暗号通貨の世界への入門として最適です。

最終的にBraveは、広告の分散型市場を構築することで、ブロックチェーンと暗号技術を使った広告の革命を目指しています。

これは、ブラウザからの直接支払いを促進することで、Webが広告に依存しないようにするためのプロジェクトです。

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まとめ

今回の記事では、この30年間でWebがどのように進化してきたかを見ていきました。

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今回私たちは、読み取り専用で分散的だったWeb 1.0について学びました。その後、大手ハイテク企業が現れ、Webをより簡単に使えるようにしましたが、その過程で中央集権化も進めました。これがWeb 2.0です。そして今、Web3は、仲介者なしにユーザーが互いに交流することを可能にします。それはウェブを再度分散化させることでもあります。

ほとんどの変化はインフラレベルで起こるので、これはほとんどの人にとってゆっくりとした、ほとんど目に見えない変化になるでしょう。もしかしたら、ウォレットの使い方やブロックチェーンの扱い方を学ぶ必要があるかもしれません。あるいは今とは違うブラウザに慣れる必要があるかもしれません。しかし、全体的に見れば、Webユーザーにとっては今とほとんど変わらない世界となるでしょう。

振り子を考える

考えてみれば、人類の歴史は常に中央集権と地方分権を行ったり来たりしてきたのです。

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例えば、原始人の時代に遡れば、当時は誰もが自分の力で生きていました。それは自然淘汰の世界でした。

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やがて人々は、一緒にいた方がより強く、より効率的であることを理解するようになりました。そこで、徐々に部族単位で集まるようになり、それが都市や国へと発展していきました。これが君主制になり、少数の王が皆を支配するようになり、ひどい権力の乱用につながりました。

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人々はうんざりしました。だから彼らは反乱を起こし、王の首を切りました。その結果、無政府状態になりました。これはある種の分散化と捉えることができます。

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何世紀にもわたって中央集権と分散化の両端を行ったり来たりした結果、バランスの取れたシステム、すなわち民主主義が誕生しました。それは、大統領のような中央集権的な要素と、国民一人一人の投票のような分散的な要素を併せ持つものでした。

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考えてみれば、技術も同じようなものです。私たちは最初、部屋全体を占める巨大な中央集中の大型汎用コンピュータを作りました。

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そのようなシステムの弱点を見て、私たちは分散型システム、Web 1.0を作りました。それは素晴らしいものでしたが、使いにくいものでした。

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その後、Google、Facebook、Twitterといった大企業が登場し、Webをより身近なものにしました。これがWeb2.0でした。

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はっきり言って、私はこれらの会社が悪いとは思っていません。それどころか、彼らはウェブと私たちの生活に信じられないほどの貢献をしてくれました。彼らの存在は、人類にとっての純粋な恩恵であると信じています。

Web 3は、彼らを置き換えるためのものではありません。よりバランスのとれた、より民主的なWebへと、物事を押し戻すだけです。


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物のインターネット(IoT)

家の中のあらゆるものが最終的にインターネットに接続されるという方向性を考えると、これは非常に重要なことだと思います。

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Nest Thermostatという製品について考えてみましょう。これは、あなたがどの部屋で多くの時間を過ごしているかなど、あなたの機密データを収集する装置です。

2014年、GoogleはNestを買収しました。これにより、Googleがそのデータを利用するのではないかと多くの人が心配しました。

そこで、当時NestのCEOだったFadellは、プライバシーポリシーに変更はありませんと言って、人々を安心させようとしました。私はSundar(訳注:GoogleのCEO)が純粋で善の人であると信じています。

しかしここで問題なのは、私の所有するサーモスタットから自分自身を守るために、なぜ彼(訳注:FadellとSundar)の約束に頼る必要があるのか、ということです。Nest以前は、サーモスタットが私の個人データをインターネット上に送信することを心配する必要はなかったのです。

GoogleやFacebook、Mark Zuckerbergの約束に頼らなくても、私たちはデバイスから私たちを守ることができるはずです。これこそが、Web 3が目指すところです。

Web 2.0が「Don't be evil(訳注:悪になるな)」という約束に依存していたのに対し、Web 3は人や大企業が「Can't be evil(訳注:悪になれない)」ようなWebを構築するために、インフラそのものを変えようとすることなのです。

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この講演をあなたの技術カンファレンスで開催したいですか?hello@tonyaube.comまでご連絡ください。

ここで述べられた意見は私個人のものであり、必ずしも私の雇用主の意見を反映したものではありません。

TikTok: https://www.tiktok.com/@tony.aube
YouTube www.youtube.com/tonyaube
Twitter: https://twitter.com/aubetony

ー 本文おわりー

訳者:
Monesynth Dofuku(https://twitter.com/mdofuku
Kenta
 A. Takahashi https://twitter.com/tkhshknt


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