vs変態科学者3

「さっきの魔法少女、大丈夫かな。どこに吹っ飛ばされたんだろう」

教室では、ざわざわと重い空気が漂っていた。
窓に張り付いて戦闘を見守っていた生徒たちだが、運動場に2人の姿がなくなり、それぞれ席へと戻っていた。

「俺たちを守ろうとしてくれていたんだよな」
「でも敵が強すぎる…。その差は圧倒的だったよ」

正義のヒーローが大ピンチという異常事態だ。誰も、百合がいないことなど気が付かない。リリーの正体はばれていないようだ。

「何これ…!みんな見て!」

突然、一人の女子生徒が叫んだ。
それぞれに、彼女が指差す窓の方を見やる。そして、絶句した。

窓ガラスの向こうに、リリーがいた。
鎖で全身を縛られ、上から吊し上げられている。
無理矢理に両手をバンザイにさせられた状態で、コスチュームもボロボロだ。破れ、焦げ、ところどころ素肌が露わになっている。

「屋上から吊るされているのか!?」
「なんで私たちの教室の窓ガラスに…」

皆、窓に張り付いて、心配そうに彼女を見つめた。それがハクの狙いだった。

(やめて…!こんな惨めな私を見ないで!)

縛り上げられ、クラスメイトの前に無抵抗な姿を晒される。リリーにとって、屈辱的すぎる。
ハクは、そんな彼女を見たかったのだ。屋上から見下ろし、ニタニタと笑みを浮かべる。

「さあ、もっと惨めになってもらおうか!」

鎖が、ビリビリと音を立てる。電流だ。
リリーはされるがまま、全身を走る痛みに絶叫した。

「うあああああっ…!」

(こんな失態、見られたくない!)

心配そうなクラスメイトの視線が突き刺さる。
電流が止まった後、がくんと項垂れた。

上から、ハクの声がした。

「今日は楽しいショーをありがとう。僕はここで帰らせてもらうよ。あとは君で何とか脱出しなよ、じゃあね」

敵に向かって、待って、と言いそうになった。
ひとりぼっちにされたリリーは、体力がある程度回復するまで、視線を浴び続けるのだった。

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