【現代表記】福沢諭吉「西洋事情」(1787年議定せる合衆国の律例 第1条 第3類)

底本には小泉信三監修『福澤諭吉全集』第一巻(再版)所収の「西洋事情󠄁」を使用した。


第三類

上院の議事官は、各州の評議官にて撰挙して一州より二人宛を出し、在職六年を限るべし。

此度初て諸州より上院の議事官を会するときは、総人数を三部に分ち、第一部は二年の後に新員と交代し、第二部は四年の後に交代し、第三部は六年の後に交代し、爾後此順序に従て二年毎に新員三分一を撰挙して旧員と交代せしむべし。若し各州の議事局、休会の間に、上院の議事官、欠員することあれば、其州より不時に人を撰挙して其欠位を満たし、次の発会を待つべし。

年三十歳に満たず合衆国の戸籍に入て九年を経ざる者は上院の議事官となるを許さず。合衆国の副統領は上院の上席なれども、別に特権あることなし。 

上院の議事官は、副統領及び他の主役を推挙し、又副統領にて大統領の代任を司るときは別に臨時の副統領を推挙すべし。

上院の議事官は、諸有司の失過を吟味して之を廃黜するの権あり。大統領の過失を吟味するときは裁判役の総督、之に列坐すべし。都て吟味のときは其席に列坐せる人数三分の二の裁断に従うべし。

諸有司の過失を吟味して之を廃黜すと雖ども、唯其官爵をぎ給料を奪うのみにて、在職中に刑を加うることなし。但し爵禄を奪うの後は尚又裁判局に於て之を糺問して、罪なければ之を免し、罪あれば法律に従て罰すべし。


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