【現代表記】 福沢諭吉 「西洋事情」 (フランス 銭貨出納)
底本には小泉信三監修『福澤諭吉全集』第一巻(再版)所収の「西洋事情󠄁」を使用した。
西洋事情二編 巻之四
福沢諭吉 纂集
仏蘭西
銭貨出納
1789年の騒乱より以前は、仏蘭西の税法、悪弊の極を致せり。其法、大概、人の家庭に就て分頭税を取ると雖ども、貴族、富豪、僧徒の如きは此税を免して問わず。又物品税の法もあれども、其規則、極めて正しからず。或は賦役と唱え強いて人を役するの法を設け、其苦役を蒙るものは独り貧寒の農民のみ。概して之を云えば、一国の税法、偏頗不正にして苛刻なるものと称す可し。騒乱の時に至て此悪弊を一新し、改めて令を下だし、国中の人民は其身分の区別なく、唯其貧富に準じて国用を助く可しとの法を定め、此法を施行せんが為め、初めは専ら分頭税を試みたれども行われ難く、乃ち又物品税の法を用い、旧来の弊風を除て全く正に帰し、今日に至るまで仏蘭西には分頭税よりも物品税の高を多しとす。方今分頭税の主たるものは、第一地税家税なり。其貸料(即ち地代店賃なり)の高に応じて之を収む。第二雑税、其内プル・タキスと称するものは人別に就て収る税にて、男子18歳以上の者へ2日の日傭賃を税として納めしむる法なり。又モビリエルと称するは借屋の大小に従い其借人より納めしむる税なり。又ライセンス・ジューチと称するものは商売免許の税なり。其高は本人の住居する家賃の高下と都邑人口の多寡とに従て之を定む。又国内の各所に官局を設て、諸証文の受授を糺して其税を収め、政府の歳入と為るもの多し。此他の税法は大抵英国に同じ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?