【現代表記】福沢諭吉「西洋事情」(1787年議定せる合衆国の律例 第2条 第1類)

底本には小泉信三監修『福澤諭吉全集』第一巻(再版)所収の「西洋事情󠄁」を使用した。


第二条

第一類

定法を施行するの権は亜米利加合衆国大統領の手に在り。大統領及び副統領は在職四年を限とす。之を撰挙するの法、左の如し。

大統領及び副統領を入撰するため、諸州に法を立て之を撰挙する人を命ず。其人員は上下院の議事官の数に同じ。但し議事官及び其他合衆国の職禄を受る者は此員に入ることを得ず。

此撰挙人を命ずるの時節並に統領を撰挙する日は議事院にて之を定む。但し其日限は合衆国中同日たるべし。

合衆国に生たる人に非ざれば大統領と為るを得ず。又合衆国の産にても年三十五歳に満たず生来十四年の間合衆国に住居したる者に非ざれば此撰挙に当る可らず。

大統領不時に退職し或は死し或は其職掌を尽す才徳なければ副統領之に代るべし。副統領代任して亦不時に退職し或は死し或は其職掌を尽す才徳なければ、議事院にて一人物を撰び仮に大統領と為して、次の大統領を撰挙するときを待つべし。

大統領は例年定式の給料を受け、在職の間決して其高を増減すべからず。又在職の間は給料の外に諸州より利潤を受くべからず。

大統領、職に即くときは誓を発す可し。其詞に云く、 

 余謹て誓を発し、余誠実の意を以て合衆国大統領の職掌を遂げ、余が才力を尽して合衆政治を保護すべし。


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