菜食主義について

こんにちは。

比較的、最近は落ち着いていたと思っていた

「ヴィーガン・菜食主義論争」

をまた最近、よく見かけるようになりました。これについては前のブログで結構語ったのですが、私も完全菜食経験者として、そして思想家の卵として改めてこの問題について一石投じたいと思います。

「確かに菜食は健康リスクが低い」

まず、基本的な事を言いますと菜食は健康リスクが低い事が多くの研究で認められています。様々な疾患に対する羅看率を平均化すれば菜食者がもっとも疾病リスクが低いと認められます。これらに関する細かなデータの引用は今回は割愛しますが、気になる方は「菜食 疾病率」などで調べて頂くと主に海外のデータですが、ご納得いただけると思います。

「栄養面でも問題は無い。しかし・・・」

加えて栄養面においても、完全菜食でもすべての栄養を補完することが出来ます。特にやり玉にされるV.B12も腸内細菌で発酵産生されることが最新の研究で判明していますし、そうでなくとも海苔にも含まれています。
また、多くの人が心配するたんぱく質においても豆類、穀類をバランス良く摂取すれば必須アミノ酸はすべて摂取出来ます。
たんぱく質の量についても1日2食程度食べればしっかりと補えます。
(必須アミノ酸と必須脂肪酸の計算はマストですが。)
これを証明するものとしてはヴィーガンのアスリートやウェイトリフティング選手の存在が挙げられます。彼らはなんの問題もなく、生活しそして肉食を含む雑食者の方々を凌駕する肉体を保持しています。
しかし、これには大きな問題もあります。

「栄養学も習っていない一般人がどうやって植物だけて生きていくのか?」

これです。ヴィーガンの方々の主張の多くにこの栄養学的な知識の提案と代替案に関する提案が欠如していると私は強く感じます。
先ほど例に挙げたアスリートたちはだいたいプロの栄養士が着いています。
それ専門の人が居て、彼らのサポートを全面に受けて活動しています。
じゃあ一般の方々はどうでしょう?その役割を肉食否定のヴィーガンの方々はしっかり担っているのでしょうか?
肉食に代わる栄養学の提案や啓蒙もなく、多くのヴィーガンたちがただ「肉食は暴力・殺人と同じからやめろ」と言う主張は言論の世界で言えばこれもまた暴力と同じだと私は思います。
それに菜食におけるたんぱく質の摂り方を教育または証明するような主張よりも「動物が可哀そう」という主張が多く見受けられ、ただその主張を真に受けて菜食に取り組んだ人たちが軒並み体調を崩し、医療のお世話になっている事を加味すればこのただ「肉をやめろ」という主張すらも「殺人的である」と私は思います。
実際に私も完全菜食に切り替えた最初の半年は貧血や倦怠感など様々な症状に悩まされました。幸い、栄養学に対する知見があったが為に自身で調べ研究する事でこれらの症状は無くなり、完全菜食ながら筋肉質な身体を手にいれる事も出来ましたが、これを多くの一般の方々が真似出来るかと言えばほぼ無理です。
幸い、私は料理人でもありましたから限られた食材でも新たな料理法を編み出したり、また動物性に近い味を探すなど楽しみながら実践出来ましたがそうでない人が、また自炊すら出来ない人々がヴィーガンの生活をするなんてほぼ不可能だと思うのです。

「ドーパミンに関する問題を加味していない」

それに肉食における問題は栄養面だけではありません。
皆さんもご存知かと思いますが、肉には強烈な旨さがあります。
この強烈な旨さに対する脳の報酬系回路つまりドーパミンが分泌される神経回路が私たち現代人の脳には完全に形成されています。
これは一度経験した快楽や喜びを再度味わおうとする脳の神経系回路で、例えばお酒を飲んで楽しい想いをするとまた何かの機会に飲みたくなります。
パチンコも同じように大フィーバーした時の快感が脳に記憶されるとまたこの大フィーバーを味わいたいと思う神経回路が脳に形成されます。
これらの報酬に対する反応を担っているのがドーパミンで、この反応は様々な活動に対して機能します。
何が言いたいかと言うと「肉の旨味に対する報酬回路」が私たち現代人の脳にはしっかりと形成されているのです。
このドーパミンは強烈な行動喚起能力を持っていますから並大抵の努力では対抗できません。
なのにですよ、「動物が可哀そうだから肉を食べるのをやめろ」と主張するのは感情で考えれば理解は出来ます。確かに狭いゲージに入れられて育てられる鳥や牛たちは可哀そうです。
ですがその同情だけでこの強烈なドーパミンに対する抑制回路が肉食肯定者の脳に形成されると思っての主張なのか?と疑問に思う訳です。
本気で肉食社会を変えたいのなら、このドーパミン反応をどうするのか真剣に考えるべきだと私は思うのです。
それこそが本当の意味でこの問題を解決し得る糸口になりますし、そういう主張ならもっと多くの人に耳を貸してもらえるのだから肉食を減らせる可能性も高まるはずです。そういった意味で考えても彼らの主張に建設性を感じませんし、ただ感情をぶつけているだけで主張というよりも子どもの駄々に近い印象を受けるのは私だけではないと思います。

「腸内細菌の問題」

これも多くのヴィーガンの主張に含まれていない生理学的な問題として挙げられるのが「腸内細菌叢」の問題です。
長年肉食をしてきた人々にいきなり完全菜食なんてさせたら確実に体調不良を起こします。多くの人がこれを経験をして、完全菜食やヴィーガンは身体に悪いとする結論に至るのですがこれは主に腸内細菌に起因します。
生まれてきてからずっと完全菜食なら、菜食に適した腸内細菌叢が形成されますから、肉や魚を食べなくても腸内において必要な栄養が作りだせるのですがそうでない人がいきなり菜食なんてやったら大腸で代謝するはずの前駆体が無くなることによって、急性の栄養失調になる可能性は大いにあり得えます。まして今の日本人は、先祖代々受け継いだはずの腸内細菌とはまったく相いれない生活文化と食生活をしているために本来いるはずの量の1/3の腸内細菌しかもっていないという大問題を抱えています。
この状態でいきなり完全菜食になんて切り替えたらたんぱく質を分解・発酵するタイプのファーミキューテス菌が飢えてしまい、栄養を作り出せなくなることによって栄養失調を起こす危険性が考えられます。
また、炭水化物を分解・発酵させて多くの有機酸を作り出し体内で利用されるATPというエネルギー源を作り出すバクテロイデスと言う菌も多くの現代人の腸には不足しています。この問題は炭水化物で太ってしまう人々の根本的な問題でもあるのですが、とにかくこの状態から完全菜食に移行するのはかなり危険なのです。
ちなみに菜食→肉食でも同じ現象が起きます。ほぼ芋しか食べない南パプアニューギニアの先住民も年に1度だけ豚肉を食べるそうですが、この時多くの人が体調不良を訴えるそうです。(儀式だから仕方がないそうです)
また、アザラシの肉を主食とするエスキモーの方々も氷が一部溶けて海藻が取れる夏場だけ海藻を口にするそうですがこの時もやはり膨満感を伴う不調を味わうそうです。
ですのでこの問題を加味して「肉をやめろ」という主張をしているのか、という疑問も残ります。少なからずこうした道筋を示しているヴィーガンにはまだ会った事がありません。

「安直な菜食の勧めは危険である」

私はこれらの問題を加味して、自分はほぼ菜食ですが現時点で人には進めていません。言っても「野菜や豆をたくさん食べよう!」程度です。
現時点での生活環境においてストレスが多い人にはいきなり肉をやめるのを勧めるのではなく、白米を食べているのであれば雑穀を含む玄米を勧め、キャノーラ油などを使っているのであれば安全な米油を使うように勧めるなど、まず今の状況で実現出来る方法を提案しています。
(同時に玄米の炊き方もレクチャーしています)
また、成長ホルモン剤で育った外国産の肉はなるべく避けて国内産を推奨したり、水銀の心配が少ない小魚やオメガ-3脂肪酸を多く含む青魚の摂取を推奨したり、可能な限りでの代替案を提案しています。
ラットを使った動物実験でも判明していますが、人間も動物も高いストレス環境におかれると動物性脂肪に対する摂食欲求が高まることが分かっています。(疲れたときに焼肉に行きたくなるのはこれのせいかもしれませんね)
このような状況のとき、まず解決すべきは
「焼肉に行きたくなる衝動を抑えるための抑制回路の脳に形成すること」
ではなく
「高ストレスな環境をいかに低ストレスな環境に改善していくか」
という事です。
根本的な問題を解決しなけらば、やせ我慢で肉を断ってもいずれまた肉を食べたくなってその衝動に負ける日が必ず訪れます。
これでは元の木阿弥です。
だからこそ、私自身はほぼ菜食ですが自分以外の人には安直に菜食は勧めていません。まず栄養学的な知識もそうですし自炊能力も自炊する時間も多くの人には足りていない状況で完全菜食を取り入れるなど、先のお話をまとめればお分かりになると思いますがほぼ自殺行為だからです。
マンツーマンで指導しながら、菜食に移行するサービスを考えてはいますが、現時点では提供していません。
なので理論的には健康になれるし元気にもなれますが、推奨はしていません。
登山家が自分ではアルプスには登るけど知識が無い人が登山すると言ったら止めるのと同じ意味合いです。

エビデンスも無く、ざっくりとまとめましたが私自身は完全菜食でも生きていける知識と経験がありますからほぼ肉や魚は食べませんが、だからと言って人に薦めはしていません。それとこれとは別だと思っています。
個人的な話をすれば、私は日々の生活の中で生ずるであろうストレスを予め予測して、先手を打ってストレスが生じないようにしたり瞑想を取り入れたり尋常じゃない程の乳酸菌及びビフィズス菌などのプロバイオティクスサプリを摂取しているからこそ、ほぼ菜食で生活できています。
それでもストレスが溜まるとやはりお肉が食べたくなります。
この欲求の98%は乗り越えられますが、この肉に対する欲求の向上を私はストレス具合を測る一つの指針にしてそういうときはヨガやストレッチ、ゆっくりお風呂に入るなどしてストレスを緩和する措置を取っているので食べずに済んでいますがそれが出来る環境だからこそ、というものです。
これも私が所属しているFiNC Technologiesと言う会社において比較的自由に活動させて頂けているおかげです。
これを多くの人が同じように出来るとは当然ながら思いません。
一人ひとり生きる環境が違う中で、また学んできた環境が違う中で画一的に肉をただやめようとする主張には現実味を感じません。

食肉を取り巻く問題には環境問題もあります。
だから野放しするのも違うと思います。
積極的に解決していくべきだと私も思います。
ですがこの問題の解決にはもっと建設的な提案が必要なのです。
他の生物に対する愛情、そして同情を感じ取ることが出来るヴィーガンの方々の思いには本当に痛み入りますが、残念ながら感情論で済む話では無いのです。

何度でも言いますが建設的な提案が必要です。
敵対視して、争っても意味がありません。
文化を恨めど、人を恨むべきではありません。
肉食が如何に悪いかだけではなく、人々の健康を想い
菜食が如何に体に良いかも提案しなけらば耳を貸してもらえません。
本当に肉食という文化を止めたいのなら、感情論ではなく
正攻法を取るべきです。

これが中立的な立場から肉食肯定者の方にも肉食否定者の方にも
是非今一度考えて頂きたいと心の底から願う者の想いです。

私はすべての人々が健康で幸せに天命を全うできる社会の実現を願っています。

ご精読、有難う御座いました。
もし共感頂けたら、シェアして頂けると幸いです。

關 貴仁

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