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レゴブロックで作るあひる

 前回は手のひらサイズの蛙について記事を書いた。まるまると肥えた蛙のパーツそのものの形を活かした造形とは裏腹に、今回は言わば積分的な組み方をした作品についてごく適当に紹介していく。

 一人暮らしの一年目は毎日きちんと湯船にお湯を貯めて銭湯ごっこをしていたのだが、だんだんと生活も適当になって、最近はシャワーで済ませている。節水大国オーストラリアの血が騒ぐ。グダイマイ。

 湯船にラバー製のあひるを浮かべるのは、お風呂が嫌いな子供のため。言われてみれば確かに浴槽で良い思い出はあまりない。お風呂のご利益やありがたみというものは、たいてい入浴後に感じるものだ。お風呂に対する面倒くささは不思議と後に引かない。

 自分の作品群の中では基本的なブロックを用いてしっかりと組まれたクラシックなつくりになっているが、捻くれ者なので敢えて向きを45度ずらしていたりする。向きをずらすことで目玉のポジションが定まり、頭部の立体感も出せる。ラバー製と言えども元々は動物。動物の顔は目の位置で決まり、たいていは正面と側面の間くらいに引っ付いている。パソコンの画面だけ見ていればいい我々とは違って、彼ら彼女らには生きるために目を使う。そのためには十分な視野の確保が必要だ。動物の顔を箱型と捉えたときに、このように中心に辺や頂点を置くようなレイアウトになるのはさして特殊なアプローチではない。

 クラシックなビルドのことを仲間内では「積分ビルド」と呼んでいる。ブロックやプレートを大量に使って形を整えていく様がまるで積分のようだからだ。町をほっつき歩いているとたまに見る、大量のレゴで組まれた大型なオブジェは大体積分ビルドだ。積分ビルドはその特性上どうしても大型になり、それなりに大きなお金が必要になる。その代わりに一際目を引くので、万人がその作品の素晴らしさを享受しやすいというメリットもある。一般の人が思い浮かべる「レゴブロックらしさ」で構成されているからだ。対して、特殊パーツの形状自体を見立てて組んでいくアプローチを微分ビルドと呼んだりする。私はどちらかというと微分ビルドを得意とするが、大量のパーツや時間を確保できない環境の裏返しでもある。場所を取らないミニマムなビルドだが、迫力に欠ける所があるのも事実として認めざるを得ない。

 アヒル一つ作る際にも、そこにはいろいろな視点やアプローチが平等にあるということだ。これはアヒル限らず他の物事にも言えることで、こういった柔軟な思考ができる人材を現代社会は要求しているらしい。

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