Jリーグ改革案③~スタジアムの稼働日数比較と稼働率を上げる方法~

2023年に、Jリーグは30周年を迎えた。
だが、そんな年でありながら、インターネットで話題になりやすいのは、サポーターの不祥事や、専用スタジアム建設によるJリーグと自治体の衝突といった悪いニュースが多く見える。

この30周年という節目を期に、Jリーグそのものの在り方を変えてもいいのではないかと思っている。

※私自身は、プロスポーツ観戦をしたことが無く、ニュースや他のサイト等で興味本位で見たり、リーグ構造を調べたりする程度である。
そんな素人の意見の為、あまり鵜呑みにはせず読んでいただければと思う。

今回は、プロスポーツの本拠地のスタジアム・アリーナ稼働日数の比較や、稼働日数を増やすために人工芝への移行は可能かを考えることとした。
また、おまけとして、稼働日数を増やすための工夫を紹介しておく。




本拠地のスタジアム・アリーナ稼働日数

最初に、Jリーグ、NPB、Bリーグで使用している本拠地のスタジアム・アリーナ稼働日数を比較しておく。
ただし、見積もりは正確ではない為、あくまで参考として捉えて欲しい。
※いずれも、2023年度のデータとする


Jリーグの本拠地のスタジアム稼働日数

リーグ戦は、ホーム&アウェイで計2回総当たり戦を行う。
例として、J1は現時点で18チームあり、合計34試合を行い、うち半分の17試合分がホームゲームとなる。
この他、ルヴァンカップや天皇杯等がある為、稼働日数は大体20日程度‬となる。

ここから底上げをするとなれば、天然芝の問題をクリアする必要がある。
試合後は芝の養生の為に、2週間程度開ける期間があり、この期間中はアマチュアの使用など、他の用途に使用することができない。
その為、稼働日数の底上げが他と比べると難しい。

陸上競技場と一体化しているスタジアムの場合は、当然陸上競技の分も加算しているため、稼働日数は多い。
だが、サッカー専用スタジアムの場合は上述の通りだ。
その為、会議室や他施設を利用して、稼働日数を増やしているようだ。


プロ野球の本拠地のスタジアム稼働日数

リーグ内の6チームで25回総当たり、交流戦で各3試合あり、合計143試合を行う。
ホームゲームは、その半分の71~72試合。
この他、オープン戦やCS、日本シリーズ等がある為、地方巡業を考慮しない場合の稼働日数は大体80日程度となる
(地方球場で試合を開催することがある為、その場合はもう少し減る)。

また、アマチュアでの使用や、コンサート等にも使用されることがあり、稼働日数は更に増やすこともできる。
プロ野球以外での利用もすでに確立されているということだ。

芝の規定はないようで、人工芝の使用が認められているのも追い風か。
初期投資は高いが、養生する必要がなく、メンテナンスも容易の為、稼働日数を増やしやすい。
天然芝のグラウンドもあるが、同じような稼働日数で利用されている。


Bリーグの本拠地のアリーナ稼働日数

3地区ごとに別れており、ホーム&アウェイで自地区で4回、他地区で2回の計6回総当たり戦を行う。
現在24チーム(1地区8チーム)あり、合計60試合を行い、内半分の30試合がホームゲームとなる。
この他、チャンピオンシップ等があるが、微々たる差である為、稼働日数は大体30日程度となる。

アリーナの最大の特徴は、芝の問題を気にしなくてもいい点だろう。
アリーナ部分に関しても、当然アマチュアの使用やコンサート、場合によっては他スポーツ等に使用することも問題ない。
その為、稼働日数の底上げは容易であると考えられる。


人工芝への移行は可能なのか

サッカー専用スタジアムの稼働日数は、上述の通りどうしても少なくなってしまう。
公共性があるから作るべきだという人物もいるが、本当に公共性があるならば、プロ以外の選手が気軽に使えるように、あるいは他の用途へ転用できるようにすべきだ。

プロ以外が気軽に使えるようにする為に、天然芝から人工芝にした方が、養生に時間を掛けることは少なくなり、その分別の用途へ転用でき、稼働日数も増やせるだろう。
しかし、そもそも天然芝から人工芝への変更は可能なのだろうか。
スタジアム基準等を踏まえ、考えていく。

参考までに、JFAのスタジアムガイドラインおよびJリーグのJ1~J3スタジアム基準を載せておく。

(スタジアム標準 サッカースタジアムの建設・改修にあたってのガイドライン↓)
https://www.jfa.jp/documents/pdf/basic/07/01.pdf

(Jリーグスタジアム基準↓)
https://aboutj.jleague.jp/corporate/wp-content/themes/j_corp/assets/pdf/028_20230131.pdf


天然芝から人工芝への移行

結論から言うと、JFAが基準を変更しない限りは不可能である。
Jリーグのスタジアム基準に、人工芝でプレイしてもよいといった記述が存在しないからだ。
JFAの発行したガイドラインには、こう記載されている。

クラス2以上のスタジアムのピッチは、平坦で常緑の天然芝で覆われていなければなりません。
また、常緑天然芝の維持管理のために有効な給排水設備の設置が必要です。
寒冷地域では、冬季に氷結するのを避けるため、地下に暖房設備を設置することも必要となります。

JFA[スタジアム標準]18ページより

厳密には、クラス4と呼ばれるスタジアムであれば、基準をクリアした上で使用可ということだそうだが、それらを使用することが出来るのはJFLや地域大会といったアマチュアぐらいのものだ。
Jリーグは天然芝もしくはハイブリッド芝を必ず利用することになる。

ただ、FIFA側は、プロの試合であっても人工芝の利用を(限定的に)認めている。

FIFA加盟サッカー協会の代表チームまたはクラブチームの国際競技会のいずれの試合において、人工芝が用いられる場合、その表面は、「FIFA クオリティプログラム―サッカー芝」の要件を満たさなければならない。
ただし、IFABから特別な適用免除を受けた場合を除く。

[サッカー競技規則2023/24]より


人工芝のデメリット

当然、人工芝にもデメリットは存在する。
プレイ上の問題として、

  • 足への負担が大きい

  • 素材によっては摩擦熱で火傷を起こす可能性がある

といったものがあるが、プレイ外ではもっと重大な問題を抱えている。

人工芝の素材は基本的にプラスチックで出来ているので、何かしらの対策がなければ、破片がマイクロプラスチックとして海へ流入してしまうということだ。
特に環境問題に目敏い人であれば、この点は許容することは出来ないと思われる。

その対策として、天然素材で作られた人工芝も開発されているようだが、サッカー等への使用に耐えうるものなのかは、未だ不明と言える。

結局のところ、JFA側がプロの試合においても人工芝を全面的に容認するようにしなければ、ピッチの稼働日数の増加というのは当分先の話となるだろう。


【参考】稼働日数を増やすシステム

参考として、サッカースタジアムの稼働日数を増やすためのシステムを紹介しておく。


ピッチの昇降システムを導入する

ピッチの一部、もしくは全部を昇降させることで、下のコンクリート部分(あるいはアリーナの部分)で屋内スポーツ等を楽しめるようにする。
サッカー場を使う際はそのまま、アリーナを使う場合は、ピッチを稼働させて屋根として利用する。
既存のスタジアムに取り付けることが出来る為、導入は比較的容易と思われる(コスト面を除いて)。

また、現在はアリーナ側を昇降させる逆パターンのものも開発されているようだ。
(参考↓)

https://www.yokogawa-yma.jp/technology/phovare/


ピッチを地下に格納する

ピッチを分割し、スライドさせて地下に収納する。
剥き出しになったコンクリート部分で、屋内スポーツ等ができるようにするというもの。
こちらは設計時点でそうなっているようで、新しく取りつけることは難しいだろう。

リンクを見ればわかるかもしれないが、日本国内ではクラブの財政状況もあって、非現実的にも思える。
(参考↓)


いずれの方法であっても、芝の養生期間中に、別競技で稼働日数を増やすことが出来る。
見た目的にも面白く、ある意味天然芝限定だからこそ生み出された画期的なシステムともいえるだろう。

ただし、いずれも「ピッチ自体の稼働率はそのままで、プロ以外がサッカー目的で使うことは難しい」という点には留意しなければならない。


次回は、Jリーグを取り巻く税金の問題と、税金に頼らずにJリーグやチームの存続は可能かを考えていこうと思う。


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