日商簿記範囲外のEX論点【有価証券⑤】~有価証券の信用取引②~

日商簿記3級から1級の範囲外の論点、および範囲内ではあるものの出題率の極めて低い論点を紹介します。
基本的に、公認会計士・税理士等で紹介されるような論点となります。
なお、論点に対しての適用指針等は紹介しません。

今回は、有価証券の論点から「信用取引(配当落ち)」を紹介します。




1.信用取引の配当落ち

概要

配当落ち(権利落ち)とは、配当等を受ける権利が消滅すること、もしくはその配当分だけ株価が下落することです。
配当落ちが発生する日(権利付最終売買日翌日)を、配当落ち日と呼んでいます。

信用取引を行っており、保有している買建株売建株が未決済の状態で配当落ちが発生した場合、配当金確定後に、その配当金相当の額を配当落調整額として、売り手より徴収し、買い手へ支払われます。

なお、配当落調整額は、本来の配当金とは異なるため、受取配当金の益金不算入額に含まれることはありません。


仕訳(買い手側)

発生時の仕訳 (株式決済前)

現金預金  XXX / 担保差入有価証券  XXX

株式の決済約定日に配当落調整額を受け取った際は、担保差入有価証券勘定の額から控除といった形で計上します。

発生時の仕訳 (株式決済後)

現金預金  XXX / 有価証券売却益  XXX

株式の決済約定日に配当落調整額を受け取った際は、有価証券売却益勘定にて計上します。


仕訳(売り手側)

徴収時の仕訳

借入有価証券  XXX / 担保差入金    XXX
現金預金    XXX / 有価証券売却益  XXX
          or
借入有価証券   XXX / 担保差入金  XXX
有価証券売却損  XXX / 現金預金   XXX

有価証券の信用取引①の記事にある
3.有価証券の信用売りの"反対売買による決済時の仕訳"と同一

株式決済時に配当落調整額を計上する為、決済時の仕訳を行う際に、有価証券売却損益勘定の額を増減させる形で計上します。


2.例題

(1)配当落調整額(買い手)

以下の取引について、仕訳を示しなさい。(単位:円)

①A社は、保有していたX株式の決済前に配当金が付き、配当落調整額として、一株当たり11円を受け取った。

現金預金  8,250 / 担保差入有価証券  8,250

配当落調整額8,250 = 1株当たり価額11円 × 750株

②配当落調整額がX株式の決済後に発生した場合の仕訳を示しなさい。
 資料は、上記①と同様とする。

現金預金  8,250 / 有価証券売却益  8,250


(2)配当落調整額(売り手)

以下の取引について、仕訳を示しなさい。(単位:円)

①当社は、X株式(取得日時価:@8,000)を900株、信用取引で売り付けた。
なお、委託手数料が50,000円発生している。

担保差入金  7,200,000 / 借入有価証券  7,150,000
            / 未払金     50,000

借入有価証券7,150,000 = 取得原価@8,000 × 900株 - 委託手数料50,000

②決済日を迎えたので、反対売買によって決済を行った。
 A株式の決済日時価は@7,700であった。
 なお、以下の金額が発生している。
・返済時手数料:40,000円
・配当落調整額:1株当たり13円

借入有価証券  7,150,000 / 担保差入金    7,200,000
未払金     50,000 / 有価証券売却益  168,300
現金預金    168,300 /

①購入価額6,970,000 = 決済日時価@7,700 × 900株 + 返済時手数料40,000
②配当落調整額11,700 = 1株当たり価額13円 × 900株
③有価証券売却益168,300 = 借入有価証券7,150,000 - 購入価額6,970,000 - 配当落調整額11,700
④現金預金168,300 = 担保差入金7,200,000 - 購入価額6,970,000 - 未払金50,000 - 配当落調整額11,700


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