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ゲームで失う友達の輪

MOBAというジャンルのゲームをご存知だろうか?
すごく簡単に言うと一人一体のキャラを操作し、5対5に分かれてお互いの陣地を攻略し合うゲームだ。
ゲームによっては毎年賞金総額20億円の大会が開かれるなど、凄まじい人気を誇るジャンルである。

ただ対戦ゲームという性質上、非常に民度が低い。
ゲーム内でコミュニケーションを図るためのチャットやVCは大体が敵味方を罵倒する事だけに使用されるし、上手くいかず諦めて放置プレイなんてのもままある。

これは海外サーバーで偶然出会った同郷人との心温まる交流


だが、それをさっ引いても有り余るほどにこのゲームは面白い。
僕は一時期このゲームに熱中し、様々なMOBAを触り、そして多くの知己を失う事になる。
これは僕が10年以上の間、渡り歩いてきた歴史だ。


League of Legends時代
(通称LoL)

悲劇の始まり
元々僕は対戦ゲームと言えばもっぱらFPSという人で、MOBAなんてものは存在すら知らなかった。
当時激ハマりしていたFPSがあり、そこでは多くのフレンドを得られ、一つの外部コミュニティを形成していた。
こういったゲーム外コミュニティを築くと、元々やっていたゲームもそこそこに、新しく皆で遊べるゲームを探してしまうのは分かる人も多いのではないだろうか。

そうして見つけてきたゲームがLoLだ!

MOBAはこの時点で世界的にも浸透しておらず
当然我々にもあまり馴染みがなかった。
しかしLoLもリリースして間がないため、セオリーなども無く、周り全員初心者という状況はのびのびキャッキャしながら遊ぶことができ、MOBAの世界にどっぷりと浸かって行くには十分な環境だった。
それからは毎夜仕事終わりに数戦を日課に、休日が他の人と合えば昼間から遊ぶ事もした。
そしてこのゲームにもプロプレイヤーというものが現れ、大会も積極的に開かれる様になってきた頃、僕らも大分実力がついたという実感を持っていた。



この時はホントみんな軽い気持ちだったと思う
ちょっとだけ違う空気を吸いたくなっただけだったんだと思う。

そう、ランクマッチに行こうという話になった。

ノーマルもランクも実力の近いもの同士でマッチングされる為、ゲーム内容は特に今までと変わらないのだが、連敗していく過程で徐々にと変化が現れてきた。
このゲームは一戦が短くて20分、長くて1時間を超える。
その為、連敗した際に負け分を取り戻すのが非常に時間がかかるのだ。
これにてノーマルマッチの様な「負けても良い戦い」から「負けられない戦い」へと変じた。

まず最初の変化としては今まで誰も指摘しなかった装備アイテムにケチがつき始めた。
このゲームは慣れてくるといわゆるテンプレ装備から外れて自分なりの理論や信念に基づいて装備を買い揃えていく人がいる。
今回指摘を受けたのはそんな人だ。

どんなキャラクターでも防御をガッチガチに固める為、敵をバサバサ倒すキャラでも防御装備を買いまくっていた彼は、毎回「頼むから武器を買ってくれ」と言われていた。
そんな指摘は小さな歪みを生みだし、お互いにプレイスタイルからキャラの選択まで口を出してしまう様になってしまう事によって、少しずつ仲を拗れさせていく。

まず、ギリギリで敵を逃した時にかける言葉が
「ドンマイ!惜しかったなぁ」
「ごめん合わせられんかった!」から
「今の倒せてたでしょ」
「突っ込むタイミング悪すぎ」
に変わった。

経験値となる雑魚敵が固まっている時は
「すまん、ちょっとそれ譲って」から
そこへ向かっている人へ無言で撤退合図を打ちまくる様になった

どうしてこうなった……。
気まずいからせめて喋ってくれ……。

しかし、ここまで拗れたのは特定の間柄だけなので他の身内は多少ギスった空気を纏わせるだけで済んだのが幸い。
ただ、誰もランクマッチに行こうとしなくなったし、そもそもLoLより元のFPSで遊ぶことが多くなった。

Defense of the Ancients2時
(通称DOTA2)

MOBAの始祖DOTA、そのリメイク作品
リメイクしてくれるのがなんと僕らのやっていたFPSを開発した会社
これには今までLoLに興味がなかった人たちも、ちょっとやってみるかという反応になった。

元々LoLをやっていた人を含めるとかなりの大所帯となり、複数の固定チームが生まれた。
時に人数が足りない所へ応援に行ったり、初めたての人にレクチャーしあったりと、最初は和気藹々と出来ていたと思う。
最初はという事から察する事ができたと思うが、こちらのゲームでも無事崩壊している。

今回は複数チームが出来ていた事に起因する。
Dota2のランク分けは数値で表され、100も開いていれば一方的な試合展開となる事が多い。
このレートという目に見える強さの指標によって、内心みなどう思っていたのか分からないが、格差意識が生まれてしまっていたのだと思う。

ある日、僕らよりレート200ほど下チームと紅白戦をする事となった。
実の所彼らはレートこそ低いものの、ノーマルマッチを繰り返していて、普通に強い。
その為、かなり良い勝負をしていたのだが、試合も中盤に差し掛かった時、一人の機嫌がかなり悪くなっていた。
そんな折、味方チームが全滅したタイミングを持って少々おふざけプレイをしていた味方メンバーに対し、彼は溜まった怒りを噴出させた。

「やる気がないならやめてくれ!!」

言われた方もなんで紅白戦如きでキレてんだとキレだして一気に修羅場と化す。
残るメンバー全員(相手チームも一緒にVCしてた)で諌めに走るがどうにももう収まらない。

紅白戦は幾度となくやっていたし彼が怒り出した原因は今も不明なのだが恐らく、自分が教えてきた初心者に実力が抜かれていくのに焦りを覚えたのではないかなぁ…と勝手に思っている。

この一件以来、チームとして纏まりを欠き、元のメンバーで5人揃えて戦う事はなくなった。
また、チームとしての体裁が整わなくなった為、紅白戦のお誘いは来なくなったが、人数が足りない時の傭兵として誰かが呼ばれるという様な形になんとか収まった。

Lord of Vermilion Arena時代
(通称LoVA)

和製のMOBA。現在はサービス終了している。
DOTA2を一緒に遊んでた仲間が見つけてきて、誘われた。
1、2戦やってみて普通に面白かったのでしばらくこのゲームを遊ぶ事にしたのだが、誘ってきた相手がPCとの相性が悪く一緒に遊べなかった。せめて誘う前に試していて欲しかった。

結局一人でやる事になったのだが
折角の日本製で、ゲーム内コミュニティもほぼ日本人しかいないなら何処かのクランに入ってしまおう。
そう思い、適当なクランに加入してみた。

入った所ガチクランだった……。

この手のゲームの魅力はそれぞれに役割を持つ様々なキャラを使える事にある。
それにより中々飽きが来ず楽しめる。

だけどまず最初に僕は役割を固定された。
他のキャラを使いたい場合はソロプレイ推奨である。
それに合わせて連携力高める為同じ場所で戦う相方も常に固定とされた。
絆値を上げてパワーアップ!ってやかましいわ!!

そしてこの相方がめっちゃ厳しい。
スキル一発でも外したら怒られるし、
調子悪かったら特訓させられるし、
バランス調整毎に人権化するキャラを揃えさせられる……。


でもぶっちゃけそんな環境も悪くはなかった。
実力はメキメキ上達したし、上手くいった時はお互いに喜び会える仲にもなっていた。
今までの負けても楽しくじゃなく、全力で勝ちに行く楽しみ方っていうのも有りだなと思い始めてきた。

そしてある日の試合
相方が自ポジションを僕に任せ、他の味方の救援に行った。
しばらくしたら敵を倒したと言うアナウンスが流れ、上手くいったんだなと思い「ナイス」と労おうとした瞬間


「何べんいえばわかんだよ!!」



という凄まじいガチギレボイスが響いてきた。
怒ったのは救援に駆けつけた際に元々その場所で戦っていた人。
ガチのマジの本気でキレてた。
理由は敵を倒せば倒すほど強力になっていくキャラを使っていたのに、トドメを譲らなかったから。

その後の会話はほぼ覚えていない。
唯一覚えているのは相方はが小さく「…ごめん」と謝っていて、ブチギレボイスとそれだけは未だに耳に残っている。



翌日、僕の相方が消えた
更にその翌日、怒鳴った人も消えた
そして僕もINしなくなった。

月日は流れ、風の噂でサービスが終了すると耳した為、郷愁の念を感じログインしてみる。
すると当初のクランの穏健派がまだ残っており
久しぶりと声をかけてくれた。
当時は居なかった知らない人とも一緒に遊んで非常に楽しい時を過ごせた。
あそこで辞めずに続けてたら良かったかなと思いつつ最後のlovaを楽しんだ。

Heroes of Newerth時代
(通称HoN)

少し疲れたのでソロで遊ぶ事にした。
ゲームから離れるという選択肢はない。
次に選んだのはDOTAのコピーゲー。
民度がぶっちぎりで低い。

日本人が遊ぼうとすると東南アジアサーバーとアメリカサーバーどちらかを選ぶ事になるのだが、僕はプレイ人口が多いとされる東南アジアサーバーを選択した。
この選択が吉と出るか凶と出るか……。

結果はというと無事タガログ語の罵倒語をマスターできた。

最も多く出没し、暴言をかましていくフィリピン人
どうも向こうはネカフェ大国であるらしく
小学生くらいの子が「ちょっとゲーセン寄ってこうぜ」みたいな感覚でネカフェに入り、MOBAで遊ぶらしい。

何を言われても「まぁキッズだしな」で済ませられればそれでいいが、このゲームなんとキック(強制退場)機能がある。
少しでも気に食わないと容赦なくキック投票が始まるのだが(自分のプレイヤーネームや選択したキャラの名前が出たら大体自分が異端審問にかけられているとわかる)ここで黙っていたらほぼ必ずキックが通ってしまう。
そこで試しに覚えたてのタガログ語でbobo(馬鹿)って言ったらやっぱりキックされた。

キックや自己中プレイでまともに遊べないのでアメリカサーバーへお邪魔する…が、どちゃくそな過疎
そりゃDotaのコピーゲーなんだからDotaがリメイクされればみなそっちへ行く
見事に残ったのは悪意を抽出して煮詰めて絞った絞りカスをさらに絞った様な連中ばかりである。
しばらくの間住処としている中、そこで出会ったものといえば

・30分にわたる煽りながらのリスポーンキル
10デスでもしたら死にすぎじゃって怒られるゲームでみんな仲良く30〜40デスくらいした。
抜けるとリスキルしてる側に通報されてペナルティをくらう。理不尽すぎる

・活躍してる人が急にピタっと止まり、「勝たせて欲しければ何か歌え」とリクエスト(3分くらい口論の後一人がギターソロ始めた)

・試合が始まった瞬間「ピザが届いた」とか言って試合から抜ける奴

お?なんだ?ここも地獄か?

まぁしかし住めば都とは言ったもので人は慣れる生き物だ。
慣れるというか同じレベルまで落ちぶれる事にした。負の連鎖である。
チーム構成なんて知らねぇ!俺は好きなキャラを選んで好き勝手遊ぶぞ!!の精神は海外サーバーで遊ぶ時には本当に重要。

たまに出現する超いい人に心を癒されつつ
なんだかんだ楽しんだ。

SMITE時代

LoVAもそうだったが、珍しい三人称視点のアクション系MOBAを始める(基本は見下ろし視点)
いい加減懲りろよって感じだが、それでもやっぱり僕はMOBAが好きだ。

アジア系のサーバーなんてものは無く
いつものアメリカサーバーにお世話になる。
ソロプレイはもう懲り懲りなのでlol時代やdota2時代の残党、敗残兵をかき集めて固定チームを作る
そしてメンバーを集める途中に一人が謎の人脈を発揮し、とんでもなく上昇志向な人物を連れてきた。

やめろバカ!!

おまえは何を学んで来たんだ!
しかし嫌な予感はしつつも一緒に遊んでみるとこれが普通に感じの良い人で、連敗も失敗についても文句ひとつなく、テクニックの共有や戦略の組み上げなどもやってくれて、いつしか僕らの中心人物となっていた。

まぁ結論から言うとそんな優秀な人がいつまでもノーマルマッチ専門のエンジョイ勢の中にいる訳はなく、彼は来る日も来る日もランクマッチに勤しんでいた。
いつしか彼がランクマッチで忙しく、こちらに合流できない日は「じゃあ今日はやめとくか」という流れが既にできており、その頻度は日に日に増えていった。
それでもたまに参加してくれてはいたが、いつの間にかチームは自然消滅していた。

こんなもので自然消滅したという事はMOBAに対する情熱も相応に失せてきてるのだろうと感じ、少々寂しい。

それにしてもストイックというのはああいう事なのかと彼には思い知らされた。

丁度良い区切りなので今回を機にMOBAから足を洗うのも良いかもしれない、そう思った。


非人類学園時代


でも俺MOBAやめられないんだけどwww

ソシャゲのMOBAに手を出した。
現在進行形でソシャゲで知り合った仲間と遊んでいる。
今の所皆ほのぼのと遊んでおり、危惧している事態にはなりそうもない。

一試合が非常に短くサクサクプレイでき、ランクも上げやすいシステムになっているからか、緊張感の様なものは皆無だ。
元々隙あらば殴り合いしている内ゲバなる土壌もできているので紅白戦でやらかす事もないだろう。

それでももう怖くてランクには行けず、頑なにノーマルマッチしか行かない様にしてはいる。
自分以外全員ランクマッチに行ってるから意味のない抵抗ではあるのだけど、関係を崩してしまいそうな要素はできる限り排除したい。

以上簡単にまとめたせいか、短い間の出来事の様に思うだろうが、いずれのゲームも数年単位で遊んでいる。
そんな付き合いでも壊れる時は一瞬なんだなとしみじみ思う。
ただ、未だに付き合いの続いてる人達はいるし
一緒に遊んでいた時は楽しかったのは確か。
これらを反面教師にして、ゲームは楽しい物という気持ちを忘れずにいたい。


ちなみにこれはMOBAとは関係ない所で友情にヒビが入ったシーン

あっ今までのチーム崩壊の原因僕かもしれん

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