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彼岸花、赤く赤く

小学生の時、畦道に咲いていた彼岸花を摘んで持ち帰り、母に見せた。
喜んでくれるとばかり思っていたのに、母はあからさまに表情を曇らせた。

どうして?赤くてきれいなのに、と聞くと
「葬式花や、それは。」

家に持ち込むものではないと言う。

こんなに赤いのに葬式?
白い菊なら、まだわかるけど…。

お盆の時期に咲くから彼岸花。
この赤い花にはお盆に帰ってくる魂が宿っている。

そう聞かされても、11才くらいの私には全くピンと来なかった。
わからないながらも、彼岸花は特別な、少し怖い花なのだと思った。

その後ずいぶん経ってから、彼岸花には毒があると知った。
手折って毒に触れないように、昔から人は強く注意を促す為に彼岸花を怖いものとして言い伝えていたのだろう。
母の話はそれだったのだ。

今年もお盆に彼岸花が咲いている。
赤い赤い。

たくさんの魂が愛する人たちのそばへ帰ってきた。

おかえり、お母さん。
綺麗だ。
花でもお母さんはやっぱり美しい。

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