恋のつぼみ
中学校の放課後自習教室でのこと。
集まってくる生徒一人一人に「こんにちは!」と挨拶をしていた。
すると、明らかに様子の変な女の子がいて、気になり、目で追いながら近づいて聞いてみた。
「どうしたん?」
「・・・・・・・・・・。」
目も合わない。
どこを見ているのか、よくわからない表情だ。
心ここにあらず。
小柄でほっそりとした色白の、目がフニャッとしたかわいい女の子。
いつもは、ニコ~ッと笑っているのに、今日はどうしたんだろう?
「・・・大丈夫?何かあった?」
「・・・・・・・・・・。先生、先生に聞いてほしい。」
依然、目も合わないまま、妙に神妙な声色で言われ、
一体、何事!?と思ったが、そんなふうに頼られたんじゃ、これはもうガッツリと受け止めるしかない!
「え?何?・・・とりあえず、カバン置いて。
・・・何かつらいことでもあったか?」
「・・・・つらいこと?・・・・その反対のことがあった。」
え?そうなん!?
さっきから表情が固まったままになってるのに?嬉しいことがあったの??
「あの…」
耳元で小声でコソコソ内緒話で教えてくれた内容をまとめると、こうだ。
以前から気になっていた先輩に、電話番号とメールアドレスを
今日こそ聞こう、聞こうと毎日思っていた彼女、
ついに今日、ついさっき聞けたのだそうだ。
階段の掃除をしていた先輩にタイミングよく会え、
友達の手助けもあって、話しかけることができたらしい。
「・・・う・・嬉しい。」
そ、そうか!よかったなぁ!!
じゃあ、さっそくメール送るの?
「番号とか覚えてないから、また今度って言われた。」
えっ・・!?そ、そうなん??
LINEのIDとかでもよかったのになぁ?
「でも、うちも覚えてないから。」
そ、そうなん??じゃ、じゃあ、仕方ないよね。(覚えてないんかーーい!?
でもさ!!
じゃあ、またもう一回、話せる機会があるってことやん!その先輩と。
「・・・・・・・・・・・・・っ~~~~~」
また固まってしまう彼女・・・・
な、なんてピュアなんだーーーー
「ずっとその人の名前ばかり考えてしまうねん。
授業中もノートに、その人の名前書いたりして。」
・・・・わかる。
好きな人は、特別な存在で、
その人の名前は、なぜだかとても素晴らしく思えて
ノートに書くと、魔法が宿った言葉のように見える。
そういうこと、私にもあった。
あったけどーーーー
もうずいぶん昔過ぎて、はっきりと思い出せないわよ…
頭では思い出せても、
この彼女の純粋な熱量にシンクロして、「わかる!」とうなづけるくらいの気持ちが追い付いてこない・・・!
このピュアさ、私にはもう・・・ない。
自分のポケットの中を一生懸命探ってみたけど、出てこない。
憧れの人と話せて、震えるくらい、爆発しそうなくらい嬉しくて
どうしたらいいのか、わかんなくなっちゃう。
・・・いいなぁ、13才の彼女の恋心。
まだまだ子供っぽさを残す横顔。
花、まだ蕾。これから膨らむ緑の蕾。
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私のブログ 夢で逢えたら… に同じ記事があります。
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