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膀胱炎は哀しい病

膀胱炎は哀しい病だ。
病気というものはすべからくつらく悲しく苦しい。
膀胱炎よりもさらに重篤で大変な思いをされている御仁に、
「何を言う。私などはもっと…」と次々意見を頂戴しそうだが、
誰でも我が身に起こったことが一番なのだ。

病はある日、唐突にやって来る。
招きもしないのに、いつの間にやら体の中に居座りやがる。
その日も午前中までは何ということもなかったのだ。
昼食をとり、しばらくするとなんだかずいぶんと体が重い気がした。
眠気に誘われるまま小一時間ほど午睡し、目覚めると下腹部に鈍痛。
和室で寝転がって昼寝をしたのがいけなかった。冷えてしまった。
いや、しかし…この気持ちの悪い痛み方は…これまでも何回か経験したものだ。
知っている。
久しぶりの膀胱炎か。

膀胱炎だとしたら早めに受診し、抗生物質を処方してもらわねば。
それしか治す方法はない。薬さえ飲めば確実に良くなるなのだ。

夕刻になったら近くのクリニックへ行こう。
とりあえずそれまでは午前にやっていた手芸の続きを…と編み針を持ち、細い絹糸を編み始めたが、全く集中できない。

とにかく尿意に絶えず襲われる。
切ない残尿感。
そして徐々に排尿時の痛みが顕著になってきた。
下腹部の鈍痛がひどくなり耐え難い。

そんな状態で受診した際の検尿カップの中の色は苺ジュースかと思うほど、目で見てもはっきりと赤かった。

医師はその尿を検体検査に出すと言う。
いや、膀胱炎だから一刻も早く薬を!薬をくれ!!と言いたかったが、そんな会話さえも省略したい焦燥に、ただ頷いた。
すると、膀胱のエコー検査を受けたことがあるか?と医師が聞いてきた。
人間ドックでの腹部エコーは毎年受けているが、膀胱に特化した検査は受けたことはない。
「膀胱炎だと思いますが、膀胱の内部にポリープがあったりすることもあるので。」
なるほど、膀胱がんの検査もしておけと言うことか。
正直、これは本当に単なる膀胱炎だと思うのだが。とにかく早く薬をもらいたいのだが。
…と言うことさえ煩わしく、素直に検査を了承した。
すると受付で、検査日の予約にまた時間がかかり、下腹部の鈍痛に海老のように背を丸めて耐え待った。

やっと手に入れた処方箋を持ち、三軒隣の薬局へと駆け込む。
空いているのになぜ遅いのかとイライラしながら待ち、ようやく処方薬の錠剤をもらうことができた。

帰宅し、すぐに服用。
本当は薬局で今すぐ飲みたいので水をもらえないかと聞きたいくらいだった。

これでしばらくすれば楽になる…安堵できたものの症状はすぐには引かない。
両足に力が入らない。
排尿時の痛みは足の裏からゾゾゾゾ…と寒気が駆け上ってくるような気味の悪さ。
それでもとにかく菌を体から排出せねばならないので、せっせと湯さましを飲み続けた。
その夜はあまりの痛さに眠れず、鎮痛剤カロナールを服用し、なんとか睡眠した。

翌朝、目覚めると薬が効いて楽になったのを体感できた。
膀胱炎の症状は軽くなったが、疲労感がずっしりとある。
睡眠不足のせいか?
いや、抗生物質の薬が膀胱内で悪さをしている菌と合戦を繰り広げ、大鉈を振るって鎮圧したのだ。
私の体は焼け野原の戦場と化していた。

このように体調がすぐれない時に限って、出かけねばならない用が立て続けにあり難儀したが、
五日間、薬を飲み快癒した。

後日受けた膀胱のエコー検査も、おかげさまで問題なし。
健康はありがたい。

同時期に父も尿路感染を患ったのだが、まだ尿の管が抜けない。
管がついたままでは自宅での生活は困難だ。
サービス付きの高齢者住宅に入居すべきかもしれない。
生きていくのにどんな生き物も必須の「食べて、出して」。
当たり前のようで尊い行為。




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