桑田佳祐「明日晴れるかな」【読解】歌詞を読む
サザンの桑田佳祐さん、今年はソロ活動中。(※2007年04月12日(木) の日記再UP)
来月発売の新曲「明日晴れるかな」(サザン公式サイトに歌詞&試聴あり↓)
この曲は月9ドラマ「プロポーズ大作戦」の主題歌。
主役は山下智久くん。
山Pのドラマは、これまでも、どれも面白い。
今回のドラマも長女の今期必須番組に登録されているので、見逃す心配はなさそうだ♪
(長女は我が家のチャンネル権を牛耳っている・・・)
ドラマの内容は、大変あり得ないもので
過去にタイムスリップして、失敗を改め、現状を変えるというもの。
ずっと好きだった彼女が他の男性と結婚してしまう。
どうして自分が彼女の隣りにいないのか?
どこで何を間違ったのか?
・・・それをやり直しさせてくれるなんてーーー
そんな虫のいい話、ドラマの中にしかないーーー
わかっていても誰もが一度は心の底から望むこと。
その夢を叶えてくれるドラマだ。
過去に戻っても、そう上手くはやり直せない。
少しくらい何かを変えられたって、「今」は変わらない。
そういう現実も見せてくれる。
でも、彼がどこまでやれるのか、
夢は叶えられるのか、・・・見届けたい気もする。
笑えるシーンもふんだんに織り込まれ、なかなか面白い。
サザンには膨大な曲数があるが、その多くが
女神のような彼女に熱く恋をし、夏の終わりと共に恋が消え、
深い後悔と共に砂浜で一人、夜空の星を見上げ涙する・・・
という内容と言っても過言ではない。
「もしもやり直すことができるなら」
深い慕情と未練、どうすることもできない後悔・・・
それがサザンの曲が多くの人の心を惹き付ける魅力。
だから、このドラマの主題歌に桑田さんを起用したのは、とてもピッタリのように思う。
・・・ところが。
最近のサザンの曲は、そういう傾向ではない。
「明日晴れるかな」は、実はこのドラマの主題である「やり直す」ことに、ちょっと首を傾けて温かいまなざしを向けながらも首を振る歌詞内容。
エンディング、
結婚式で歌うように、上品なスーツを着た桑田さんがギターを抱えて登場、歌ってくれる。
穏やかで優しい歌。
歌詞は、まだ一部しかわからない。
聴き取れた範囲内で。
♪熱い涙や恋の叫びも 輝ける日はどこへ消えたの
一行目で、全ては「過去」の出来事であることを提示。
♪遠い過去よりまだ見ぬ人生は 夢ひとつ叶えるためにある
振り返るよりも、前にある未来に、まだまだやるべきこと、叶える夢があると歌っている。
ドラマの主旨に思いっきり逆の提言。
♪奇跡のドアを開けるのは誰 微笑をもう一度だけ
ここは2種類の解釈。
1、後悔している「こうだったらよかったのに」と思っている出来事が、うまく解決できて、
振られたはずの恋人がもう一度、自分に微笑みかけてくれる
2、後悔し、モヤモヤしている気持ちを晴らし、前向きに力強く生きていく力を得る、そのために重い扉を開くのは、他の誰でもなく君自身なんだ。
落ち込んでないで、もう一度微笑みを取り戻そう
以前のサザンの曲だったら、1の意味だった。
しかし、今、桑田さんが書く曲は2の意味のように思う。
♪君は気付くでしょうか その鍵はもう君の掌の上に
ね?2の意味でしょう?
過去をやり直したいと後悔ばかりしていても、解決に導けないし、前進もできない。
失敗した惨めな自分を受け入れ、認め、土台として
積み重ねていく時間の大切さ。
そんなふうに切り替えていくのは、自分自身の気持ちの問題。
自分のかっこ悪い面も全て受け入れ、等身大の自分を愛せばいい。
それができるのは・・・自分自身だけなんだ。
♪Oh baby. No, maybe. 愛、失くして 情も無い
♪嘆くような振り 残るのは後悔だけ
絶望してる様子の描写。
♪Oh baby. Smile baby. その命は永遠じゃない
このあたりが、前作サザンの「DIRTY OLD MAN ~さらば夏よ~」 からの大きな変化。
後悔し、嘆いてばかりなんて、人生、もったいないよ?と桑田さんは言う。
♪誰もがひとりひとり胸の中で そっと囁いているよ
♪明日晴れるかな 遥か空の下
明日に少しでも期待を寄せる気持ちが、あなたにもあるでしょう?
晴れるか、降るか・・・
誰にもわからないことだけど、
曇る日もあれば、晴れる日もあるのが人生なんだ。
そっと祈る。明日がきれいに晴れることを。
大きな空の下で。
自分のために・・・・愛する人の為に。そっとーー
・・・・ということで、つまりは
過去をやり直しに時を遡って・・・というドラマのコンセプトに真っ向から、「そうなの?」って挑戦状のように読み取れる・・・(私の個人的な読解、曲解ですが、、、)
しかし、曲を聞いたら、とってもきれいでエンディングにマッチ♪すんなり、いい気持ちで聴けます。
・・・・さすがです。
さらに深読みすれば・・・ドラマの展開、結末さえも歌いこんでいるような気もするけど・・・
これは、どうかな~
まぁ、楽しみに毎週見ましょう♪
※2007年04月26日日記、再UP
サザンの桑田佳祐さんのソロ新曲「明日晴れるかな」。
フルでじっくり聴いて・・・胸が痛かった。
ーーーーなぜだ?
音楽は一人一人の聞き手により十色に聴くことができる。
だから、私が感じたこの感想は・・・・もしかしたら偏ったものかもしれない。
私には、この曲、
サザンの名曲「TSUNAMI」のアンサーソング、あるいは続編のように聴こえる。
♪思い出はいつの日も・・・雨
PVでもCDのジャケット写真でも土砂降りの雨。
心の奥深く傷ついた気持ち、
誰にも見せない、自分の弱い部分を歌い、
それでも「きっと世は情け」とわずかな希望の光を夜明けに見、
今日も歩き出そうとしている。
だけど、やっぱり思い出すとつらいという気持ちが前面に出ている。
これが2000年発売の「TSUNAMI」の詩世界。
それから7年を経て、桑田さんの歌詞の世界は大きく変わったと思う。
「明日晴れるかな」は、
「TSUNAMI」の主人公へ、または「TSUNAMI」を聴いて共感する多くの人へ
そのつらさからの脱出の方法を、そっと教えている。
自分自身と静かに対峙し、語り合うことから始めよう。(♪耳を澄ませば心の声は・・・・)
つらい時は、涙をこぼして泣いていいんだよ。
♪季節は巡る 魔法のように
・・・この歌詞は、私には記念日症候群について書いているように感じられる。
♪愛なくして情も無い?
鬱になると、自分が価値のない人間のように思え、
生きているだけで無駄、死んだ方が世の中の為になる・・・と、そういう思考に辿り着く。
世の全ての人から見放され、
誰からも愛されず、優しく扱われることもない・・・
だけど、本当にそう?と桑田さんは、そっと問う。
「世は情け」って言ってたじゃん!
人の心の温かさを、心の奥でとてもとても願って、求めているでしょう?
あると信じているでしょう?
♪在りし日の己を愛する為に 想い出は美しくあるのさ
この一節は桑田さんの歌詞としては最も新しい感覚。
「TSUNAMI」では、思い出すとつらい、つらい、と歌っているが、
そういう状態から完全に抜け出し、
過去の傷ついた思い出さえも「美しい」としている。
「あの日に帰れたら」と幾度となく後悔を歌った「在りし日の己」も
今は愛しい存在。
逆に言えば、つらい気持ちから抜け出すには
後悔にまみれた過去の惨めな自分を、自分自身が愛することが必須。
他人から認められても、十分ではない。
自分自身が、自分を認め愛することが一番大事。
その作業は、他の誰にもできない。
自分にしかできないのだ。(♪その鍵はもう・・・)
♪愛なくして憎もない
この歌詞はすごいと思う。
自分でも嫌になるくらいの、激しい憎しみの醜い感情・・・
だけど、それも深い愛情の裏返し。
♪見て見ないようなフリ その身を護るため?
ここの部分に私はグサッときた。
10年前、ある特定の条件で、急に来るフラッシュバックに苦しんでいた。
唐突に溢れ出して来るごちゃ混ぜの感情に混乱し、
毎回、慌ててフタを閉めていた。
そう、見て見ないフリを続けていた。
正に、自分を護るために。
・・・だけど、そうしている限り、苦しみはずっと続いた。
フタを開けて、一つ一つを確認し、自分の心の傷を癒す作業は、実に面倒くさいし、根気がいる。
♪もう少しの勝負じゃない
こんなふうに励ましてくれるんだね。桑田さんは。
そうして、土砂降りの雨の思い出を
晴れに変えることは・・・できる。
私もできた。
桑田さんも、きっとできたのだと思う。
♪明日晴れるかな
これは純粋な、人としてとても素朴な感情としての「希望」の言葉。
子ども達のコーラスで表現したのも、そのためではないかと推察する。
ささやかな希望を胸に明日を生きていこう。
明日は、きっといいこともあるさ。
すごく自然に温かく包み込むように応援してくれる。
・・・・桑田さん、大人だなぁ~!
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