56話感想

この感想が読む人にとって不快になったり不安にさせてしまうと可能性が高いことは十分理解しています。個人的な感想、捉え方になりますのでこんな風に読んだんだな、ネガティヴだなーと思っていただければと思います。



初見で読み終えた時に動悸がひどく、ああ、やっぱりそうなるのか…と愕然とした。

矢代と百目鬼の身体のつながりをを見て、会話を読んで喜ぶ気ににはとてもなれなかった。
しかしXでは2人のSEXを喜ぶ声も多く、自身の気持ちが周りとかけ離れていることにショックもうけた。


少し話は逸れるが、言葉はや想いはどんなに伝えるのが上手い人でも相手に3割しか伝えることができないらしい。そして相手の言葉をどんなに聞き上手な人も相手の言いたいことの3割しか受け取ることができないらしい。
と、すると伝えるのが苦手な人、受け取り方が下手な人だと一体どの程度伝わることができるのだろうか。

私の主観だが、ここに相手への強い想いが乗るとさらにそこから最大3割位は伝わる力が目減りしてしまうことがある気がする。

56話を読んでショックを受けたのは矢代目線で読むからであって、百目鬼目線で読めば喜ばしいはずであるという意見もあった。

なので、では私が矢代目線で読んでいたとしてどのように感じたかを述べていこうと思う。ちなみに百目鬼に関しては彼の目線になりきれていないので、あまり大したことは書けていないことを先にお詫びしておきたい。


矢代は百目鬼のことを4年間忘れることなどできなかった、これは多くの人が同じ解釈であると思う。

ただし、四年前百目鬼を手放した理由は人それぞれ異なっている気がしている。私の場合は愛するが故に己のいるヤクザの世界から百目鬼を追放したかったのだと考えている。
矢代本人もヤクザの世界に好んで身を置いているとは考えていない。愛が故に突き放したと解釈している。

その上で、その愛が百目鬼に伝わっていなかった(足を洗っていなかった)ことにショックや怒りを感じた。ただ、そこに喜びがなかったかというと嘘になるとも思う。
愛する者に二度と会わないと突き放したのに、それを踏みにじって、越えてきた愛しい人間に溺れてしまう。矛盾に満ちていて、愚かで、とてもそれは狂おしいほどに甘美なものだろう。

しかし甘美であればあるほどに、己が愛に、相手に溺れるほどに苦しさも比例する。
快楽の後にやってくる絶望感。自己嫌悪。
相手の言葉、態度を反芻しては苦しくなる。

我々読者は俯瞰で話を見ているので互いに想い合っているのだ、と思うことができる。しかし目線を矢代にすると途端にそれは見えなくなってしまう。
相手の目が、態度が、身体が言葉とは裏腹にこんなにも素直に出ているのではないか!と思うかもしれない。

しかし、言葉や想いのほとんどは相手に伝わらない。それは私がとある人からの言葉を鵜呑みにしているからではなく、自身の経験としてそう感じている為だ。

百目鬼の想いがどこまで矢代に伝わったのかは私にはわからない。ただ、もし私が矢代であったなら、きっと気持ちのほとんどは伝わらず、ネガティブな要素ばかりを拾って自らを傷つけてしまうだろうと思った。

だから、もうやめてくれと思った。
これ以上のSEXは1人になった矢代を想うといたたまれなかった。

この先の話の展開を推測するのは野暮だと想うので多くは書かないが、私の感じた矢代の感情のまま話が抗争に向かうのは正直キツい、と思っている。


百目鬼に関しては、悪気があったなどとは思っていないし、愛ゆえの行動なのだとも思っている。

女性の影なども正直どっちでもいい。まあ、4年の間に女を抱いていたと知ったら矢代も読者もショックを受けると思うし、私だって矢代目線で読んでいるのでできればそうじゃないと良いなとは思う。でもそこは鍵ではないような気もしている。


私が気になるのはかなり無鉄砲になっていないか、リスクの高い行動に出ていないか?という点である。
愛する人を前に理性が飛んでしまう、何もかも見えなくなる…これもまた実にドラマチックだ。

しかしそれゆえに愛する者を危険に巻き込んでしまっている(矢代の場合自ら巻き込まれていったとも言えるが)ことに百目鬼は気づいているのだろうか?という不安がつきまとう。
百目鬼の行動が矢代をさらに危険な方へ向かわせているように見えている。愛ゆえに百目鬼を破滅の道から逃した矢代は、百目鬼の愛ゆえに破滅に進んでしまうのだろうか。

今の所そこの不安を拭いさる要素を私はお話から読み取れていない。


2人はおとぎ話のすずの兵隊さんのようになってしまうのではないか。
囀るにであった2023年の夏、最新話まで読んで私はそんな不安に襲われた。


しばらくの間はそんな不安もごくたまにしかやってこなかったのだが、今またその不安の火が勢いを増してきている。



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