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beir〜君が見た世界〜

【世界設定】
色んな種族が存在する世界。
今回の舞台はエルフの森。
エルフ族の幼馴染4人のほのぼのギャグあり感動ありの作品。

性別変更不可。人数変更不可。
中身の性別は問わない。

利用契約について https://note.com/merrow15/n/n6802d670f4df

【キャラクター設定】
《ソル》
 爽やか系青年。主人公。エルフの狩人。
 セリアが好き。

《セリア》
 お姉さん系の優しい母性あふれる女性。
 ヒロイン。エルフ族。
 ソルが好き。

《イリス》
 明るく元気で食いしん坊。
 セリアの妹。エルフ族。

《テト》
 ムードメイカー系男子。ちょっと馬鹿。
 いじられキャラだが、わりとツッコミ系。
 エルフ族の狩人。イリスが好き。

【本編】

テト:いやぁ、大猟、大猟!

ソル:上手く行ってよかったね、テト。

テト:俺とソルだぜ?うまく行かねぇことなんかあるかよ。

ソル:あはは、そうだね。

テト:だろだろ?

イリス:あら、すっごい自信ね。お帰り。

テト:イリス!(ぱっと嬉しそうな声)

イリス:それだけ自信満々なんなんだもの、さぞかし、素晴らしい収穫だったんでしょうね。

テト:そっ、そうだぞ!
 ほら、見てみろよ!すんげぇ大猟だったんだだ!さすがはエルフ族の英雄様だろ?!

イリス:ふふっ、なによそれ。自分で言ってちゃ台無しでしょ〜?
 …って、まって、ちょっ、これ、もしかしてもしかしなくても、イノシシ?

テト:え?ああ、そうだけど。

イリス:やったぁ!私、イノシシ大好きなんだよねぇ!

テト:そっ、そうだろ、そうだろ?

イリス:わーい、ありがとー!

テト:まっ、まぁ、知ってて獲ってきてやったんだけど、さっ。
 …だから、その、おっ、お礼に今度、二人きりで、とか…。

イリス:どうやって食べようかなぁ…。焼肉?煮物?いっそ、お鍋にしちゃう?

テト:え?

イリス:干し肉にもしたいよね。長持ちするし。

テト:あのぉ…?

イリス:あー、考えるだけでお腹すくぅ!

テト:イリス、さん?

イリス:え、なに?なんか言った?

テト:いえ、ナンデモナイデス。

イリス:そ?変なの。

テト:くぅ、俺の苦労…。いや、喜んでるし、まぁ、いいか?

セリア:あら、イリスにははっきり言わないと伝わらないわよ?

テト:うお!いたの!?

セリア:いたわよ。あなたは本当にイリスのことしか見えてないのね。

テト:てへへ。(テレテレ)

セリア:褒めてはないのだけど…。

テト:え?

ソル:セリア、ただいま。

セリア:ソル、お帰りなさい。お疲れ様。

ソル:村に変わったことはなかった?

セリア:ええ、大丈夫よ。
 あなたも、怪我とかしなかった?

ソル:うん。傷一つないよ。ありがとう。

セリア:うふふ、良かったわ。

テト:でたでた。帰ってそうそういちゃつきだしたよこいつら。

イリス:しょうがないよ。あっつあつの二人なんだもん。

テト:それなぁ。

セリア:ちょっと、二人してからかわないでよ。

ソル:普通の世間話だよ?

テト:普通ねぇ…。普通ってなんだろうねぇ。

イリス:二人の世界って感じだったよねー。

テト:ねー。

セリア:あら、それを言うなら貴方達だってそうじゃない。

テト:え?そう?(嬉しそう)

イリス:はぁ?やめてよお姉ちゃん。まじで笑えない。無理。

テト:えっ(泣きそう)

セリア:あの…なんだか、ごめんなさいね。

テト:謝られると余計辛いっ!

イリス:何よ、意味不明。

ソル:まぁまぁ。それよりこれ、早く食糧庫に運ばないと。

テト:それより…。

ソル:急がないとお肉がだめになっちゃうよ。

テト:それもそうなんだけどさー。

イリス:イノシシ!イノシシのお肉、ほしい!

テト:わかってる、わかってるって!
 ちゃんと持ってってやるからそんな興奮すんなよ。

イリス:やったー!

セリア:ねぇ、せっかくだし、お夕飯はうちに食べに来ない?
 イノシシのお鍋とかどうかしら。

イリス:おーなべー!いのししなべー!

テト:おっ、いいね!久々のセリアさんの手料理食べてぇ!

ソル:迷惑じゃない?

セリア:迷惑だったら誘ったりなんかしないわよ。

テト:そ~そ~。それに、俺らの仲じゃん。そんな遠慮、今更だって。

イリス:あんたは遠慮が足りなさすぎなのよ。

テト:フレンドリーと言ってくれ。

イリス:は?(怒った声)

テト:ひっ。

ソル:それじゃあ、イノシシ持ってお邪魔するね。

セリア:ええ。とびっきりおいしいとこ、お願いしたわよ。

イリス:あ、もしかしてそれが狙い?

セリア:うふふ。

イリス:さすがお姉ちゃん。策士ぃ〜。
 ま、それだけってわけじゃないんだろうけどねぇ〜。

テト:だよなぁ。

ソル:な、なんだよ。

テト:べっつにー。見てるだけー。
 ほら、早く運ぶんだろ?

ソル:あっ、ああ。

イリス:じゃ、待ってるねー!いのししー!

テト:はいはい。ったく。しゃーねーなぁ。

(場面転換、セリアとイリスの家)

イリス:ああー!
 美味しそう!超美味しそう!!お腹すいたぁ!
 早く食べようよー!

セリア:取皿配るからもう少し待ってね。

ソル:本当に美味しそうだ。さすがだね。

セリア:あら、ありがとう。

テト:いやぁ、こりゃソルが羨ましくなるよなぁ。

ソル:なんで?

テト:上手い飯が毎日食えるじゃん。

ソル:どうして僕?そこはイリスじゃないの?

テト:俺はどう頑張ってもイリスにはなれねぇじゃん。

イリス:どう頑張ってもソルにもなれないけどね!

テト:うっせぇ!なる気もねぇわ!

ソル:うーん…よくわからない…。

セリア:ソルのそういうところは、少しイリスに似てるわね。

ソル:僕とイリスが?

セリア:ええ。

ソル:…?

テト:確かになぁ。なんかわかるわぁ。

セリア:でしょう?

イリス:もぐもぐ…え?なんの話?(食べながら)

テト:いや、だからお前とソルが似てる…っていうか、もう肉くってやがる!!

イリス:いや、だって、美味しそうだなぁって見てたら、つい、我慢できなくて…へへへ。

セリア:もぉ、子供みたいなことして。
 お行儀が悪いわよ?

イリス:てっへへ、ごめんなさーい。(反省の色なし)

テト:ほんっと、お前って昔からそうだよなぁ。
 欲望に忠実っていうか、あほっていうか。なんていうか。

イリス:あ?今、私のことバカにした?

テト:大事な話は聞かねぇくせに、なんでそういう言葉ははっきり聞こえるんだよ!

イリス:まぁいいや。お肉早く食べよ!

テト:ーっ(頭を抱えている)

セリア:えっと…なんだか、ごめんなさいね。

テト:別にいいよ、惚れた方の負けだし。

イリス:ねー!早く食べようよー!

テト:お前それ絶対にわざとだろ!
 もういっそわざとだと言ってくれ!

イリス:え、なに急にキレてんのよ…キッモ。

テト:きー!

セリア:お待たせ。
 冷めちゃう前に頂きましょうか。

ソル:そうだね。

セリア:それじゃあ。

0:(以下同時)
イリス:いっただっきまーす!
テト:いただきます!
ソル:いただきます。
セリア:いただききます。

イリス:あむっ…(猪を食べる)
 んー!!うんまぁ!

テト:(猪を食べる)んー…臭みもなく、だしの旨味が…最高かよ。

ソル:うん、美味しいよ。

セリア:うふふ、よかったわ。

イリス:んー…やっぱお姉ちゃんのご飯は世界一だわ。

セリア:そんなに褒めてくれたって、デザートくらいしか出ないわよ?

イリス:デザートあるの!?やったー!

セリア:ご飯食べ終わってからね。

イリス:はーい!

テト:会話がもう、母と子なんだよなぁ…。

ソル:うん、そうだね。
 セリアはきっといいお母さんになれるね。

セリア:えっ。(照れた声)

ソル:ん?…あっ(照れる)

セリア:…ソルったら。もう…。

ソル:いや、その…つい。

セリア:…(照れている)
ソル:…(照れている)

イリス:…ぐふふふふ。

テト:あーあ、入っちまったよ、二人の世界に。

イリス:ちょっと、邪魔しちゃだめじゃない。

テト:あ、いっけね。

ソル:そんなつもりじゃ…。

テト:つまり、そんなつもりじゃなくても、そうやっていちゃつくんだなぁ…お前は。

ソル:…っ。テト!

テト:あはは!
 珍しいな、お前がそんな焦るなんて。

ソル:…僕だって、色々考えてはいるんだよ…。

セリア:えっ…かんがえて、くれているの?

ソル:あっ…それは…。
 …………。とりあえず!ご飯食べない?
 冷めちゃ勿体無いよ。

テト:おっ、話逸らしたか?

ソル:いいから!

イリス:それもそうね!
 ご飯は美味しいうちに食べないと!

テト:切り替えはやっ。

イリス:(猪を食べる)んー!おいしー!

セリア:ちょっとイリス。お野菜も食べなさい。

イリス:えー…。せっかくの猪鍋なのに猪以外を食べるなんて…。

ソル:猪の味が染みてて美味しいよ。

イリス:ふぁーい…。(しぶしぶ食べる)
 そういえばさ、森の中ってどんな感じなの?

テト:なんだ急に。

イリス:いや。猪って凶暴だけど美味しいじゃない?
 他にも美味しいものたくさんあんのかなーとか。そもそも、森の中なんて入って事ないからどんなんだろうなって。

テト:あ~。狩人以外の外出は認められてないもんなぁ。

ソル:危険だからね。

イリス:ほら、たまにくる旅人の人の話とかも、面白いじゃない?
 ここにはない美味しいものもたっくさんあるって聞いたし、一度世界を見てみたいなぁ…。

ソル:セリアも、見てみたい?

セリア:んー…そうねぇ。
 外の世界は、少し見てみたいと思うかしら。
 海や、建物、あと…音楽、というのも実は興味があるの。

ソル:なるほど…。

イリス:ま、現実的じゃないのはわかってるんだけどねぇ。
 何かしら理由があれば出られるんだろうけど。

セリア:そうね。
 私達は森に立ち入ることすらなかなかできないもの。

イリス:ねー。

テト:ま、夢は叶えるもんだからな!

イリス:それもそうだよね!

セリア:あなたたちはまた…。

テト:って、そうこうしてるうちに猪がぁ!!

イリス:えへへ。全部食べちった。

テト:俺まだ一個しか食ってないのにぃ!

イリス:ちんたら食べるあんたが悪いのよ。

セリア:もー、喧嘩しないの。
 テトも、まだ追加があるから安心して。

イリス:わーい!

セリア:イリス、あなたはお野菜を食べなさい。

イリス:えー!!!

(みんなが笑い合う声)

(場面転換。夜空を見上げるセリアの側にソルがやってくる)

セリア:…。(深呼吸)
 今日も美味しい空気、綺麗な星空。ほっとするわね。
 賑やかなのは楽しいけど…大きな子供が二人いるとちょっと大変だけれど。

ソル:セリア。
 急にいなくなるからびっくりした。

セリア:ああ、ごめんなさい。
 少し、涼みたくなって。

ソル:そっか。

セリア:…。
 二人は?

ソル:デザート争奪戦続行中。

セリア:くすくす。

ソル:分け合えばいいのに、なんで取り合うかなぁ。

セリア:イリスは独り占めしたいだけだろうけど、テトのほうはワザとでしょうね。

ソル:やっぱり?
 そういうアプローチは、逆効果だと思うけどなぁ…。

セリア:あら?案外、イリスに大してなら間違ってないと私は思うわよ。

ソル:そうなの?

セリア:ええ。

ソル:セリアが言うならそうなのかな。

セリア:私も、確信があるわけじゃないけれどね。

ソル:…。
 (そっとセリアを後ろから抱きしめる)

セリア:…?
 どうしたのソル。
 急に、抱きしめたりなんかして。

ソル:嫌?

セリア:ううん。嫌じゃ…ないわ。

ソル:そっか。よかった。

(少し間を開け)

ソル:…ねぇ、セリア。

セリア:なぁに?

ソル:…好きだよ。

セリア:!
 …どうしたの?急に。

ソル:ちゃんと口にしたこと、なかったから。

セリア:そう…。(嬉しそうに)
 …私も、ソルが好きよ。
 
ソル:…愛してる。

セリア:ええ。私も愛してる。

ソル:…結婚、してほしい。

セリア:…!
 …ええ、もちろんよ。

ソル:うん。ありがとう。

セリア:…ふふっ、ふふふっ。

ソル:セリア?

セリア:あら、ごめんなさい。
 つい、嬉しくて。

ソル:嬉しくて笑うのはわかるけど、今の笑い方は何か違う気がする。

セリア:ああ、違うの。
 夢が叶ったから。小さい頃の。

ソル:小さい頃?

セリア:ソルのお嫁さんになること。

ソル:え、小さい頃から?

セリア:そう。
 これ、覚えてる?

ソル:それ…猪の、牙?

セリア:ええ。
 あなたが始めて狩りに成功して、そのときの猪から作ったネックレスよ。

ソル:僕があげたやつ?
 …まだ、持っててくれたんだ。

セリア:当たり前じゃない。
 好きな人から貰ったものだもの。
 私にとっては、宝物なのよ。

ソル:そんな前から…?

セリア:何年…いいえ、何十年もずっと想い続けていた願いが、突然、叶っちゃったもんだから、なんだか不思議で、おかしくなっちゃったの。

ソル:そんなに待たせていたのか…。

セリア:あ、謝ったりしないでよ。

ソル:え?

セリア:貴方のことだから、罪悪感を感じて謝ろうとするだろうなって。

ソル:あっ…うん、ごめん。…あっ

セリア:ふふっ。

ソル:ごめっ…あー…。

セリア:ふふふっ。

ソル:うー…。

セリア:…私はね、この何十年も貴方に片想いしていて、それはそれで幸せだったのよ。

ソル:…幸せ?

セリア:そう。
 少しの事で嬉しくなったり、貴方に会えない日は目を閉じてあなたの笑顔を思い出してみたり、あなたとの未来を思い描いてみたりなんかして…ね。
 そういう全ての想いが、私にとっては宝物なのよ。

ソル:…。
 君の、そういう真っ直ぐなところに、僕は…惹かれたんだろうな。

セリア:うん。ありがとう。

ソル:こちらこそありがとう。
 絶対に、幸せにするよ。

セリア:うん。
 私も、ソルを幸せにするわ。

ソル:ああ。約束…。

0:軽くキスを交わす二人。

ソル:…。

セリア:…。

0:目が合い、軽く微笑み合う。

(場面転換。結婚式)

イリス:結婚おめでとー、お姉ちゃん、ソル!

テト:おめでとー!おいおいおい(号泣)

ソル:あはは、ありがとう。

セリア:ありがとう、二人とも。

イリス:お姉ちゃん、とっても綺麗だよ!

セリア:ありがとう!

テト:うおー!本当によかったよー!(号泣)

イリス:ちょっと、さっきから煩いんだけど!
 なんであんたが大泣きしてんのよ!

テト:だってぇー!うおー!(号泣)

イリス:もうっ、ほんと、あんたって…。

テト:うううう…(号泣)

イリス:ほら。(ハンカチをテトに渡す)

テト:…え?なに?

イリス:ハンカチ。
 顔グシャグシャなままで祝う気?

テト:あ…。

イリス:ほら、ちゃんと顔拭きなさいよ。
 そんで、笑顔で祝え。

テト:いっ、いいのか?汚れるぞ?

イリス:いいわよ。
 これくらい洗えばいいだけだし。

テト:お前、本当は俺のこと…。

イリス:それじゃ、気を取り直して!

テト:ええええ?

イリス:なによ、文句あんの?

テト:文句しかねぇよ!
 お前やっぱワザとだろ!

イリス:あーもー、きーきーきーきー煩いわね!
 わけわかんないことで時間取らないでよ!

テト:いでっ!
 殴ることねぇだろ!?

イリス:いい加減うるさいのよあんた。

テト:え…。

イリス:それよりさ!ソル!

テト:えっ?

イリス:…じゃないか。

ソル:ん?

イリス:…ごほん。(少し恥ずかしそう)
 お兄ちゃん、は、さ。

ソル:あっ…うん。(恥ずかしそう)

イリス:新婚旅行って、知ってる?

ソル:新婚旅行?

イリス:そう。
 これも外の話なんだけどさ。
 結婚したらまず、旅行に行く一族ってのもあるんだって。

ソル:へー…そんなものが。

イリス:そる…じゃなかった。
 オニイチャン、とお姉ちゃんも、行ってきたらどうかなー…って。

セリア:私達が?

イリス:うん。
 それなら、外出許可もとれるんじゃないかなって。
 お姉ちゃんも外の世界見たがってたんだし。

ソル:なるほど…。

セリア:素敵!それは名案ね!

ソル:許可を取るのに一苦労はありそうだけど、理由があればなんとかなりそうだね。

セリア:楽しみだわ、イリスと旅行に行ける日が来るなんて!

イリス:え?

ソル:テトも連れて、四人でどうかな?

セリア:ええ、もちろん!

イリス:ちょ、ちょちょちょちょ、ちょっと待って?

セリア:え?なぁに?

イリス:え?なぁに?じゃないの。
 え?なんでそこに私やテトの名前変が出てくんの?

セリア:え、だって…外の世界、行きたいでしょ?

イリス:行きたいよ?でも、新婚旅行なんだよ?

ソル:それがどうかしたの?

イリス:…だめだ。ぜんっぜん、わかってない!
 いい?新婚旅行っていうのは、夫婦だけで行くものなの。
 妹や友達は連れて行かないの!わかった!?

セリア:でも、それじゃあ、イリスは…。

イリス:私は私の新婚旅行で行くからいいの!
 楽しみに取っておくから、今回は二人で行ってきて。いい?

セリア:イリス、結婚する予定があるの?

イリス:それはっ…ないけど…いいの!
 今回はいいの!…わかった?

セリア:…イリスが、そこまで言うなら…。

ソル:…わかったよ。

イリス:よし!
 それじゃあ気を取り直して!
 祝いじゃあああ!!

(場面転換。後日。森の中)

ソル:…よし、今日の狩りはこんなものかな。
 そろそろ帰ろうか、テト。

テト:…(考え事をしている)

ソル:…テト?

テト:うーん…。

ソル:おーい、テトー?

テト:んー…。

ソル:テト。ねぇってば。テト。

テト:…ん?ああ、ごめん、ぼーっとしてた。

ソル:最近どうしたの。
 ここ一ヶ月くらい、心ここにあらずって感じだけど。

テト:いやさ。
 俺、イリスにプロポーズしようと思うんだよね。

ソル:え!?
 …えっと…急に、どうしたの?

テト:お前らの結婚式の時、イリスが俺に優しかったじゃん?

ソル:イリスは昔から優しい子だよ?

テト:きっと、イリスは俺のこと、男として見てくれてるって、そういうことだと思うんだ!

ソル:んん?

テト:それに、新婚旅行の話!!

ソル:ええ?

テト:あれはきっと、俺と結婚したいっていう遠回しのアピールだったに違いない!!

ソル:えええ…。

テト:なぁ、ソルもそう思うだろ?!

ソル:いや、僕はそうは…。

テト:イリスは俺のプロポーズを待っている!!!
 そうだよな!?

ソル:えっ。

テト:なっ!!!?

ソル:…えっと…。

テト:絶対そうだ、そうに違いない!

ソル:さすがに…こっぴどく振られるようなことはないとは思うけど…。

テト:よぉし!そうと決まれば、イノシシだ!

ソル:イノシシ?

テト:イノシシを獲って帰って、プロポーズする!

ソル:え?でも、荷物はこれ以上増やすと…。

テト:まぁまぁ、俺に任せとけって!
 あっ!ちょうどあそこにイノシシが!

ソル:ちょっ、テトっ、危ない!

テト:え?

(場面転換。村の治療所)

イリス:…はい、治療終わり。
 奥まで進んで崖から落ちるとか、どんだけ馬鹿なのよ、あんたは。

テト:うー…面目ない。

イリス:ソルがたった一人であんたと食料担いで帰るなんて、どれだけ大変だったと思ってんのよ。

テト:…うぅ。

イリス:またなんでそんな無理なんかしたわけ。いつもなら怪我一つなく、余裕な笑顔で帰ってくるじゃないの。

テト:それは、その…。

イリス:なに。

テト:イノシシ…。

イリス:イノシシ?

テト:イノシシが、いたんだ…。

イリス:イノシシが?
 あんた、そんなにイノシシ好きだったっけ?

テト:イリスが…。

イリス:私?

テト:喜ぶと、思って…。

イリス:…そりゃ、イノシシ好きだし、あったら嬉しいけど。
 二人が怪我なく帰ってくるほうが、私は嬉しいよ。

テト:イリス…。

イリス:…ああもう!
 そんなこと聞いたら、怒れなくなっちゃったじゃない!
 次は、怪我、しないでね。

テト:あ、ああ!怪我しない!しないさ!

イリス:まぁ、一ヶ月は安静だけどね。

テト:おう!

(数日後)

ソル:それじゃあ、行ってくる。

セリア:ええ、行ってらっしゃい…。

ソル:どうかした?

セリア:いえ、だって…。
 一人で狩りに行くなんて、今までなかったから、心配で…。

ソル:大丈夫だよ。無理はしない。
 狩りが終わればすぐに戻ってくる。約束するよ。

セリア:…うふふ。
 なんだか新婚みたいな会話ね。

ソル:みたい、なんじゃなくて新婚なんだけどね。

セリア:あ、そうだった。
 ソルと一緒にいるのが当たり前すぎて、つい。

ソル:お願いだから、そこは忘れないでよ。

セリア:うふふ、ごめんなさい。

ソル:それじゃあ、時間だから、いくね。

セリア:そうね…。
 あ!…これ、お守りとして持っていってちょうだい。

ソル:猪の牙?

セリア:ええ。
 私にとっては宝物なんだから、絶対返しにてよ?

ソル:…くすっ。
 うん、わかってる。行ってきます。

セリア:行ってらっしゃい。

0:森の中

ソル:さてと。こんなもんかなぁ。
 今日は一人だし、あまり深追いはしない方が…。

テト:はぁはぁ…ソル!ソルー!
 はぁっはぁっ…ソルっ、居たっ、ソル!

ソル:テト?君はまだ怪我がっ…。

テト:そんなこと今はどうだっていいんだよ!

ソル:え?

テト:村でっ…村がっ!

ソル:…え?

テト:子供の魔力暴走による事故があって、よくある話だけど、今回は…運が、悪かった。
 周りに、人がいる場所での暴走が…。

ソル:それってどういう…。

テト:いいから早く帰るぞ!

(場面転換。治療所)

ソル:ここは、重傷者が集められているのか…。

テト:…こっちだ。

イリス:っ!…ソル。

ソル:イリス!
 君は無事だったのか、よかった。

イリス:ソルっ、どうしよう、お姉ちゃんがっ…。

ソル:セリアが…どうしたの?

イリス:っ。…ついてきて。

(間)

セリア:そ、る?

ソル:セリア!…なんてことだ。

セリア:そ、る。よかっ、た。あ、えた…。

ソル:酷い怪我…。治療は、治癒魔法は?

イリス:(首を横に振る)
 詳細がわからないと使用することはできないって。

テト:下手に魔力を使えば、魔力同士がどう反応するかがわからんからな…。
 最悪、二次災害になる可能性もあるって、ずっとこのままなんだ。

ソル:そんなっ!

セリア:そる。
 しかた、ないわ。むかんけいな、ひと、まき、こむ、わけに、は…。

ソル:セリア…。

セリア:ふ、ふ。なんて、かお、してるの?
 わたし、こんな、げん、き、よ?

ソル:無理に喋らないで。
 体力を温存して、治癒魔法がかけられるようになったらすぐにでも治してもらおう。

セリア:ふ、ふ。わか、ってる、くせ、に。

ソル:セリア、お願いだからっ…!

セリア:そ、る。ね、え…そ、る。

ソル:ここにいる。僕はここにいるよ。

セリア:わた、しね。しあわせ、だっ、た…の、よ?

ソル:…何を、言いだすんだ。

セリア:あな、たと、であ、えて。とて…も。

ソル:セリア!お願いだっ。お願い、だからっ。

セリア:あなたの、つ、ま、に…なれ、て…しあ、わせ、で、し…た。

ソル:僕はっ…僕だって!君と出会って、恋に落ちてっ…夫婦になれて幸せだよ?
 でもっ、これからもっ!これからだって!…っ。(泣いている)

セリア:そ、る。

ソル:(泣いていて、返事ができない)

セリア:あい、して、る。だか、ら…しあ、わせ、に…なっ、て。

ソル:せ、りあっ。

セリア:おね、がい………ょ…。

ソル:セリア?…セリア?ねぇっ、セリア?セリアっ…おき、てっ。セリアっ…セリアぁ!
 誰かっ、誰かぁ!
イリス:お姉ちゃんっ、お姉ちゃんっ!

テト:救急隊は何をしてる!
 早く、こっちだ!早くしろ!早くしてくれ!

ソル:…セリアぁぁぁぁっ!

(1ヶ月後。セリアの墓標の前)

イリス:…お姉ちゃん、あれから、一ヶ月がたったよ。
 魔力の暴走による死者は、お姉ちゃんだけだったんだって。ほんと、運ないよね。
 …。
 暴走させた子供には罪はない。
 でも、あの子はお姉ちゃんのことを自分のせいだとずっと苦しんでる。
 …私、私ね、あの子の力になりたい。そう思ってるの。
 お姉ちゃんも、同じ気持ちだよね?
 …私ね、先生になろうと思うの。
 子供達に、魔力をコントロールできるように教える先生に。
 もう二度と、お姉ちゃんやあの子や、私や…彼のような被害者を生まないためにも。

テト:イリス。そろそろ帰ろう。
 風が冷たくなってきた。

イリス:…うん。そうだね。
 …ソルは最近どうしてる?

テト:さぁ。俺も最近会ってないな。

イリス:後で、会いに行こっか。一緒に。

テト:…だな。

(間を空け、入れ替わりにやってくるソル)

ソル:…セリア。久しぶりだね。
 こうして君に会いに来るには、まだ、受け入れられなくて…でも、このままじゃだめだって、そう、思ったんだ。
 …。
 僕は本当に君を愛してた。
 いいや、今も愛してるんだ。君を、心から。全てをかけて。
 …でもね、ここにはしばらく来ることはできなくなる。
 旅にね、出ることにしたんだ。
 森を抜けた向こう、そのまた向こうに、行ってみようと思う。
 君が見たがっていた海や、建物、音楽をたくさん見て…そして、また、ここに戻ってくる。
 今は、君がいない、この村にいても辛いだけだ。でも、下ばかり向いていたら、君に怒られてしまうだろうから。
 強くなって帰ってくる。
 だから…しばらく、お別れだ。
 このお守りだけは、貰って行くね。

セリア:ソル。

ソル:えっ?

セリア:愛しているわ。あなたを、永遠に。

ソル:…セリア?
 …いや、気のせいか。
 …。
 いや、きっと、そうだな。君らしい送り言葉だ。
 …行ってきます。

セリア:いってらっしゃい。
 …どうか、彼が素敵な出会いをしますように。

ーおわりー

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