見出し画像

●愛とLIAR

『あらすじ』
 山奥で1人暮らすハリーの前に現れた少年。
 少年は父親の仇としてハリーを殺しに来るが、いとも簡単に阻止されてしまう。
 ハリーはその少年を保護し、一緒に山で暮らし始めることに。

利用契約について https://note.com/merrow15/n/n6802d670f4df

性別変更不可。人数変更不可。

ーーー

『キャラ紹介』

《ハリー》♂
ガタイのいい男。
心も体も大きいが、頭も体も筋肉。
過去に暗いことがあった様子。

《ライ》♂(ミラと兼任)
ハリーの前に現れた少年。
言葉遣いは悪いが、1人称は僕。
父親の仇としてハリーを恨んでいるが、恨みきれない。

《ミラ》♀(ライと兼任)
ハリーの妻。
強くたくましいが、昔、怪我をしたためうまく動くことができない。

ーーーーー

(山奥、人影がない場所。
 ハリーとライは、見つめ合うように立っている)

ハリー
「よぉ、ガキんちょ。
 こんな山奥に一人でお使いか?偉いねぇ〜」

ライ
「やっと見つけた…父さんの、仇」

ハリー
「…なるどねぇ。
 その執念だけでここまで来れたことは褒めてやるよ。
 で?その手に持ったナイフで俺を殺す気か」

ライ
「そうだ…僕は…僕は、お前を、この手で…」

(手が震えるライ)

ハリー
「残念、時間切れだ」

(ハリー、素早くライの後ろを取り、手刀で気絶させる)

ライ
「うっ…」

(ライ、その場に倒れそうになるが、ハリーが片腕で受け止める)

ハリー
「悪いな。俺はお前に殺されるわけにはいかないんだよ。
 …にしても、軽いな」

(ハリー、ライを担いで洞窟へと消える)

ハリー
「ったく、ガキがこんな物騒なもんもつんじゃねーよ…」

(数時間後)

ライ
「んっ…ここは…?」

(目が覚めるライ。
 周りを見渡すが、そこは知らない景色。
 パチパチと焚火の音がする)

ライ
「温かい…。
 これ、毛布?」

ハリー
「よぉ、目が冷めたかガキンチョ」

ライ
「なっ…お前は…」

ハリー
「ほら、魚だ。食え」

(そういうと、焚火で焼いていた魚を一つライに渡す)

ライ
「えっ?あっ、あちっ」

(慌てて受け取るが、暑さで見を縮めるライ)

ハリー
「焼きたてだ。熱いから気をつけろよ…つっても、もう遅いか(笑う)」

ライ
「なっ、なんのつもりだよ…」

ハリー
「なんのって?(そう言いながら魚を食べる)
 あっち…(美味しそうに咀嚼)」

ライ
「食いもんよこしたり、毛布とかも…お前がやったんだろう?」

ハリー
「夜の山は冷えるからな。少しでも暖かくしろよ(はふはふと美味しそうに魚を食べながら話す)」

ライ
「僕は…お前を殺そうとしたんだぞ!?
 今だって…」

ハリー
「お前に俺は殺せねぇよ」

ライ
「殺す」

ハリー
「無理だって。
 そんなことより冷める前に魚を…」

ライ
「お前は、父さんの仇なんだ!
 僕の手で、絶対お前を…んぐっ」

(ハリーがライの口の魚を突っ込む)

ハリー
「ほらみろ、冷めちまったじゃねぇか」

ライ
「んっ、んぐ…(驚くも、少しづつ咀嚼していく)」

ハリー
「…どうだ?美味(うま)いだろ?」

ライ
「…(食べながらも首を縦に振る)」

ハリー
「だろぉ?
 この山でとれる魚はめちゃくちゃ美味(うま)いんだよ。
 他にも果物や木の実、山菜なんかもある。
 あ、でもキノコは気をつけろよ。毒があるのも結構あるからな。
 俺もこの間、食えるキノコにそっくりなやつ食っちまって、一日中腹下して大変だったんだ。
 キノコはいまいち見分けがつかねぇからなぁ。俺はきのこが好物なんだがなぁ…そこはもう、諦めて食べないほうがいい、覚えとけ」

ライ
「…ここに来て、長いのか?」

ハリー
「まぁな。
 ここは色々と都合がいい」

ライ
「…そうか」

ハリー
「食欲ねぇのか?
 でも、食わなきゃだめだぞ。
 体力なくなったら山では生きていけねぇからな」

ライ
「…なんで」

ハリー
「お?なんだ?なんか言ったか」

ライ
「なん、で、僕を助けるんだ。
 なんで僕に、優しくする…」

ハリー
「別に優しくした覚えはねぇぞ」

ライ
「僕は、お前を殺そうとしたんだぞ?!」

ハリー
「もう復讐はいいのか?」

ライ
「するに決まってるだろ!」

ハリー
「なんだ、過去形で言うからてっきりもう諦めたのかと思ったのによぉ」

ライ
「そんな細かいことはいいんだよ!」

ハリー
「あー、はいはい、そんなカリカリすんなって。カルシウム足りてないんじゃないか?
 骨までちゃんと食えよぉ〜?」

ライ
「…!!(キッとライを睨みつける)」

ハリー
「へいへい。
 …自分の目の前で、子供がのたれ死ぬ姿なんて誰も見たくねぇだろうよ」

ライ
「僕は子供じゃない」

ハリー
「ガキだろ」

ライ
「ガキじゃない!」

ハリー
「頑固だなぁ。
 …なんつーかさ。俺、実は子供がいるんだ」

ライ
「子供…?」

ハリー
「ああ。
 生きてたらちょうどお前くらいだったかな」

ライ
「生きてたら…?」

ハリー
「そう。…嫁さんの腹ん中にいた頃に、嫁さんごと殺されてな。
 …だから、お前が目の前で死ぬのは見たくないんだよ」

ライ
「そう、かよ…」

ハリー
「なんだ?絆(ほだ)されたか?」

ライ
「別に、そういうわけじゃ…」

ハリー
「殺したいほど憎んでいる相手に同情してるようじゃあ、殺しはできねぇぞぉ?」

ライ
「お前が言うなよ!」

ハリー
「ハハッ!それもそうだな!」

ライ
「っ…。
 調子狂うな…」

ハリー
「まぁ、今は取り敢えず食え。
 俺の事情がなんにせよ、俺を殺したいなら体力つけないと難しいぞ」

ライ
「…」

ハリー
「俺はおとなしく殺されてやれるほど落ちぶれてないからな。
 いっぱい食って強くなんねぇと殺せねぇぞぉ〜」

ライ
「…余計なお世話だよ」

(ライ、魚をばくばくと食べる)

ライ
「おかわり!!」

ハリー
「おう!そうこなくっちゃなぁ!
 おら、いっぱい食え!たらふく食え!!」

(次の日。
 朝早くから、ライに稽古をつけるハリー)

ライ
「やああ!!」

(ハリーに向かって行く)

ハリー
「甘い!!」

(さらりと避けるとライの腕を掴み、草の上にライを軽く叩きつける)

ライ
「ーっ!!」

ハリー
「おいおい、大丈夫か?」

ライ
「だい、じょうぶ…じゃねぇよ…」

ハリー
「受け身すらできないとは…。
 そんなのでよくここまで生きてこられたな」

ライ
「うるせぇ…」

ハリー
「ま、命あってなんぼだ。
 今まではこの程度でよかったとしても、これからはどうなるかわかんねぇ。
 強くなって困ることはねぇからな、もっと鍛えてやるよ」

ライ
「…はぁはぁ…。
 ………だから、なんで」

ハリー
「なんでって。
 強くなって困ることはないって今言ったろ。人の話は聴けよ?」

ライ
「そうじゃなくて!!っつーか、お前こそ僕の話し聞いてたか?僕はお前を殺そうとしてるって何度も言ってるだろ!!
 なのに、そんな僕を鍛えてどうする?
 僕を生かしたいにしても、そんな死に急ぐようなこと…お前、死にたいのか?」

ハリー
「…いや、俺は死なねぇよ。まだ、死ねない」

ライ
「じゃあ、なんでだよ!」

ハリー
「…すべてが終わったら、死んでもいいとは思っている」

ライ
「全てが、終わったら…?」

ハリー
「…ああ、そうだ」

ライ
「…もしかして、ふく、しゅう…?」

ハリー
「…俺とお前さんは似ているのかもしれねぇなぁ…。
 そういや、まだ名前を聞いていなかったな。
 俺はハリー。ハリー・トルース」

ライ
「…ライ。ライ…と、るーす…」

ハリー
「やっぱりな。
 父親は、ライアーだな?」

ライ
「…」

ハリー
「…そうか」

ライ
「…なんで、あんたは…父さんを。
 そんな、家族想いなのに。
 そんな、優しいのに…。
 自分の、弟を、殺したんだ…」

ハリー
「…どうして、か。
 ………。
 なぁ」

ライ
「…なんだよ」

ハリー
「腹減らないか?」

ライ
「…は?」

ハリー
「腹。俺はもう腹減って動けねぇわ!」

ライ
「なに…それは、我慢くらい…」

ハリー
「飯。作ってくれよ」

ライ
「…は、ぁ?」

ハリー
「飯。
 昨日は俺が作ってやったんだし?今日はお前が当番な!」

ライ
「なに、急に…」

ハリー
「飯を食わなきゃ頭もまわんねぇだろ?
 なんでもいいから作ってみな。
 これも修行の一環だ」

ライ
「…」

ハリー
「ほら、早く」

ライ
「…っ」

ハリー
「…。
 あー!腹減ってもう動けねー!
 動けねー、動けねー、むーりl!
 はーらへった、はーらへった、はらへりー!」

ライ
「わっ、わーかった!わかったよ!
 作りゃいいんだろ!?」

ハリー
「うぃ〜(楽しそうに)」

ライ
「なんなんだよ、大事なとこではぐらかしやがって…」

ハリー
「ほら早くしねぇとまた歌いだすぞ?」

ライ
「やめろ。(怒っている)
 すぐ作れるの作ってやるから」

ハリー
「おう、よろしく!」

(しばらくして。
 洞窟の外では大雨が振り始める)

ハリー
「ひぃ〜、すんげぇ雨だなぁ。
 通り雨だといいな。
 早めに飯にして正解だったぜ」

ライ
「ほら、これでいいかよ」 

ハリー
「おー!うまそうな匂い!
 なるほど、スープか!!」

ライ
「冷えてきたからな」

ハリー
「じゃあ、いただきまーす!」

ライ
「えっ、あっ、ちょっ…」

ハリー
「(スープを飲む)
 んっ…?これは…。
 うんめぇー!!(スープにがっつく)」

ライ
「…」

ハリー
「(夢中になってスープを食べている)」

ライ
「…(ため息をつき、自身もゆっくり座り、スープを飲み始める)」

ハリー
「ぷはー!
 お前、料理上手いのな!!」

ライ
「母さんが、教えてくれたんだ…。
 父さんが好きな、得意料理だって…」

ハリー
「…なるほどな」

ライ
「…毒が入ってるとは思わないのか?」

ハリー
「毒?…どうして」

ライ
「だから!…殺そうとして…」

ハリー
「お前は毒を入れるタイプじゃないだろ。
 その罪を、しっかりその手で感じて、それを受け止める…そういうタイプだ」

ライ
「なんでそんなこと…」

ハリー
「わかるさ。…顔に書いてある」

ライ
「ふざけるなよ…」

ハリー
「ふざけてなんかないさ。
 お前はなんでも顔に出るな」

ライ
「そんなことまで顔にでるわけないだろ」

ハリー
「わかるさ。
 …わかるんだよ、俺には」

ライ
「何をわけのわからないことを…。
 それに、これ、きのこだって入ってんのに…」

ハリー
「ああ!久々のキノコはやっぱうめぇな!」

ライ
「お前、自分言ったこと忘れてんのか?」

(ガラガラと音を立てて土砂が崩れだす)

ハリー
「!!?
 危ない!!」

(入り縁付近にいたライを守るため、ライに体当たりをする)

ライ
「ぐっ…」

(ハリーに突き飛ばされ、痛みに声を漏らす)

ライ
「…!?
 おっ、おい!大丈夫か!?」

(ハリーの側に駆け寄るライ)

ハリー
「だいっ、じょうぶ、だ、気に、するな…。
 あまり、近くには…」

ライ
「血だらけじゃねぇか…。
 こんなの、大丈夫じゃねぇだろ…」

ハリー
「大丈夫さ…これくら…くっ」

ライ
「あんまり喋んな!!
 …血がっ、血が止まんねぇ…。
 どこをっ、どこを止めたらいいんだよっ…くそっ…」

ハリー
「なに、たすけようと、しているんだ…。
 ころしたい、あいて…なん、だろ?」

ライ
「そんなのっ…そんなの…わかんねぇょ…。
 でも、今、お前を助けないと…僕は…きっと…後悔する。そう…思うんだっ…」

ハリー
「…やっぱ、なにか…通じるものが、あるのかもな…」

ライ
「これも全部、お前が悪いんだ!!
 僕を惑わすようなことばかり言って、変なことばかりして…っ…。
 …なぁ、お前、なんなんだよ。
 なんなだよ、なぁっ!?」

ハリー
「俺か…?…俺は…ただ…」

ライ
「おっ、おいっ…しっかりしろっ…おい!」

(回想)

ハリー
「なぁ、ミラ。俺、ちゃんと父親できるかな…」

ミラ
「うふふ、きっと大丈夫よ」

ハリー
「俺ってなんつーか、あんま父親っていうイメージわかねぇんだよなぁ…」

ミラ
「確かに。
 でも、兄弟みたいな親子もいるんだし、べつにいいんじゃない?」

ハリー
「兄弟、ねぇ…」

(別回想)

ハリー
「ミラ!!ミラ!!
 …あいつ…まさか、ミラを…!?」

(別回想)

ハリー
「ミラ!!!ミラはどこだ!!
 …ミラと、息子をどこへやった。
 俺の妻と、息子はどこだ!?ライアー!!」

(別回想)

ハリー
「ライアー、貴様だけは許さない…許さないっ…。
 うぁぁぁあああっ!」

(ハリー、ライアーを殺す)

(間を置き、ライの心)

ライ
「本当は…本当は、気づいていたのかもしれない。
 もっと昔、もっともっと前に。
 …。
 僕に優しく、父さんに冷たい母さん。
 母さんに優しく、僕に冷たい父さん。
 家から出ることも許されず、ずっと二人きりだった。
 それはとても異様で、おかしな光景だった。
 それでも僕は、縋るしかなかったんだ。
 だってそれは、僕にとっては全てで、唯一だったんだから…。
 でも…ああ、そうか。…母さん。僕は…ちゃんと、愛されていたんだね」

(数日後)

ライ
「おい!起きろ!!起きろねぼすけ!!」

(ハリーを蹴飛ばし起こす)

ハリー
「いってー!何しやがる、こっちは全身打撲の怪我人なんだぞ!?」

ライ
「自業自得だろ?」

ハリー
「なっ…そんな言い方ねぇだろ!?」

ライ
「あんまぎゃーぎゃー騒ぐと体に触るぞ」

ハリー
「じゃあまず蹴るのを止めろ!」

ライ
「飯、出来たから一緒に食べようぜ、父さん」

ハリー
「おう!さんきゅ!
 …………………え?」

ライ
「ん?どうした?」

ハリー
「今…俺のこと…」

ライ
「あっ…。
 なんでもねぇよ、ほら、飯食うぞ!」

ハリー
「なっ、なぁ!もう1回、もう1回言ってくれよ、なぁ!!」

ライ
「うるせぇ!
 父親らしいことできたら言ってやるよ、バカおやじ!!」

ハリー
「…!!
 最高だぜええ!!!」

ライ
「だからうるせぇって!!!」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?