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ソバニイルヨ

【あらすじ】
音信不通になってしまった彼女を心配し、彼女の自宅にオトズレル満。
しかし、そこにいたのは彼女の双子の弟だった。
「ストーカー」
そう言われドアを強く閉められる。
ストーカーなはずはないと焦る満は、再び彼女の家へ訪れる。
狂っているのは自分か、それとも彼か。

利用契約について https://note.com/merrow15/n/n6802d670f4df

性別不問不可。中身の性別は問いません。
過度なアドリブ不可。
人数変更不可。
優人と美優は必ず兼役です。

【キャラ設定】
《満》♂
みつる。社会人一年生。
大学時代から後輩の美優と付き合っている。
真面目でまっすぐ。ただ、少し思い込みが激しいところがある。

《優人》♂
ゆうと。大学3年生。
童顔で女の子っぽい顔をしている。
美優にそっくり。
割と無口で内気。陰キャ系。

《美優》♀
みゆう。大学3年生。
割と綺麗めな女性。
自衛のためか、八方美人なとこがある。
胸が小さいのが悩み。

ーーーーー
【本編】

(一軒家の前、一人の男。)

満:すみませーん!

優斗:はい。

(優斗、家のドアを開ける。)

満:あっ、お久しぶりです。

優斗:ああ、あんた、美優の…。

満:はい。お付き合いさせていただいてます、満です。
 最近、美優さんと連絡がとれなくなってしまいまして、心配になって会いに来ました。

優斗:…あんた、もしかして何度も電話した?

満:え?あっ、はい。しました。

優斗:…気持ち悪。

満:…え?

優斗:気持ち悪いって言ったんですよ。
 あんた、美優のストーカーでしょ。

満:えっ?…ちがっ。

優斗:毎日毎日、美優のこと怖がらせて泣かせて。

満:いや、だからっ。

優斗:全部知ってるんだからな。
 美優がどれほど苦しんで、どれほど追い詰められてるのか。

満:いやっ、だから、ちょっとまって!
 俺と美優は一年程前からお付き合いしていて、覚えてないのかもしれないけど、優斗くんに紹介してもらったこともあるんだよ。

優斗:付き合ってる?はっ。バカ言うなよ。
 美優は今まで誰とも付き合ったことないし、万が一にでも恋人ができたとしても、あんたみたいなストーカー野郎と付き合ったりなんか絶対にしない。

満:ほ、本当に、覚えてないの?

優斗:覚えてないも何も、あんたのことなんて知らないよ。
 いい加減、帰ってくんない?美優が怖がるだろ。

満:あのっ。

優斗:帰れっつってんだろ!!

満:ひっ!

優斗:二度とここにはこないでよ。

(勢い良くドアを閉める優斗)

満:っ…。
(体をびくっと強張らせる)

(間)

満:…なんでだ?
 付き合ってないとか、ストーカーとか…言っている意味がわからない。
 …俺は、美憂と付き合っていなかったのか?勝手に勘違いして、美優に付きまとっていたのか?
 …いや、そんなはずはない。
 あの温もり、思い出。全部、全部覚えてる。あれが全部嘘なんてこと、あるはずがない!
 …でも、じゃあ、なんで優斗くんは、あんな態度を?俺と美憂が付き合っていないなんて、そんなこと、あるはずないのに。
 美優の体の温もり、声も、唇の柔らかさだって、覚えてるのに。
 あれが全部妄想なわけがない。ああ、何かの間違いだ。そうだ、そうに決まっている。
 証拠…証拠さえ、あれば、優斗くんだって、きっと…。

(満、棚を色々探り始める。)

満:…あった。
 初めてデートした時に撮ったプリクラ。
 美優がくれた手紙。
 そして、美優と優斗くん、俺が一緒に写った写真。
 (安堵するように)
 …夢じゃない。夢なんかじゃない。
 俺と美優は、ちゃんと付き合っていた。やっぱり、俺はおかしくなんてない。

(少し間)

満:…美優。
 両親の離婚が決まってから連絡が取れなくなってしまった。きっと、今頃、泣いているに違いない。優斗くんもきっと、混乱しているんだ。
 …俺が、守ってやらなきゃ。

(後日。満、再び美優の家に来る。)

優斗:…またあんた?

満:こんにちは。

優斗:あんたしつこいんだけど。いい加減にしなよ。

満:今日はちゃんと話し合いがしたくて、証拠を持ってきたよ。

優斗:しょう…こ?

満:そう、これ。三人で撮った写真。

優斗:ーっ!
 …どうせ、合成かなんかだろ。

満:違う!よく見てくれ!

優斗:いい加減にしてくれよ!
 …昨日といい、今日といい…なんなんだよお前。邪魔すんなよ、関わってくんなよ!
 俺達の家を、荒らすんじゃねぇ!

満:おっ、落ち着けって!
 荒らすとか、そんなんじゃなくてさ。
 ほら、両親の離婚が決まって、心配で。

優斗:離婚なんかしねぇ!

満:…え?

優斗:なに?親が離婚?はっ、笑わせんなよ。
 そんなバレバレの嘘ついて、何がしたいんだよ。
 この家は、誰一人欠けたりしない。四人ずつとずっと、一緒なんだ。離婚なんかするもんか。
 それをお前は、平気な顔で嘘ついて土足でどかどかと家の事情に入り込もうとしやがって。
 …帰れ。…帰ってくれよ!

満:えっ?優斗くん?…優斗くん!

(勢い良くドアを閉める優斗。)

満:…なん、なんだ?あれ。
 昨日来たときは、いきなりのことで焦ってなにも考えれなかったけど、冷静になってみれば、明らかに優斗くんの様子がおかしい…。
 あんなに優しい子だったのに、今はまるで憎悪しか感じられない。
 …あの態度、もしかして何かを隠そうとしているのか?

(ドアの前から話しかける満。)

満:優斗くん、ねぇ、優斗くん!
 聞こえてるんでしょ?返事してよ!

(ドアをダンダンと叩く満)

満:…優斗くん、返事がないなら、警察呼ぶよ?

(ドアを開ける優斗)

優斗:…帰れって言っただろ。
 迷惑なんだよ、バカなのか?

満:じゃあ、警察呼びなよ。

優斗:は?なに幼稚なこといってんの?

満:いや、そうじゃなくてさ。
 俺のことストーカー呼ばわりするのに、なんで警察呼ばないのかなぁって。
 さっきも俺が警察呼ぼうとしたら、出てきてくれたでしょ?
 まるで、警察にこられて困るのは、優斗くんの方みたいっだなって。

優斗:…は?
 …なにが、言いたいんだよ。

満:いや。どうして警察を呼ばないのか知りたいだけだよ。

優斗:…あんたには関係のないことだろ?
 ほんと、早く帰ってよ。

満:どうして?
 ほら、ストーカーだっていうなら早く警察呼びなよ。
 …呼ばないの?
 それをしないのは、俺がストーカーじゃないって気づいているからなんじゃないの?

優斗:何言って…。

満:俺と美優は付き合っていた。これは紛れもない事実だ。
 優斗くんが見てくれなくても、証拠がここにある。
 じゃあ、なぜ、優斗くんは俺と美優が会うのを頑なに拒むのか。
 それは、会わせたくないからじゃなくて、会わせることができないからなんじゃないのか?

優斗:…妄想だろ、そんなの。

満:ちょっと焦ってるね。

優斗:そう思いたいだけだろ。
 …ほんと、邪魔しないでよ。

満:邪魔?なんの?

優斗:…うるせぇんだよ、さっきからさぁ!
 近所迷惑だから、相手してやっただけだよ。
 いい加減、諦めて帰れよ!帰れ!

満:…なんで、そんな泣きそうなの?

優斗:…泣いてなんか、ねぇよ。

満:優斗、くん?

優斗:…なぁ、帰ってくれよ。
 これ以上、俺達の仲を、かき乱さないでくれ…。

満:…優斗くん。
 俺、力になりたいんだ。
 俺は美優の事が大事だから、弟である優斗くんのこともほっとけないんだよ。
 出来ることなら、何でもするから、ね?
 こんなことやめてちゃんと話し合おう。

(少し間
満:…今日は帰るからさ。明日、また来るよ。

(次の日)

満:優斗くん、こんにち…は?

美優:おはよう、ございます。

満:み、ゆう?…美優!

(美優に抱きつく満)

美優:きゃっ!
 …せっ、先輩?急に抱きついてきて、どうしたんですか?

満:よかったっ…。

美優:えっと、あのっ…。
 とりあえず、家の中へ入ってください。

満:いいの?…じゃあ、お邪魔、します。

美優:はい、どうぞ。

(家に入っていく二人。)

満:…美優。無事、だったんだね。本当によかった…。

美優:心配、してたんですか?

満:当たり前だろう!
 この数日、連絡は取れないし、優斗くんには存在忘れられてしまうし。
 …そうだ!優斗くんになにかされなかった?怪我は?食事は?ちゃんと眠れてる?

美優:ふふっ。大丈夫ですよ。

満:そっか、よかった。

美優:…ねぇ、先輩。

満:ん?なぁに?

美優:嘘、だったんですね。

満:…え?なにが?

美優:優斗の力になりたいっていったくせに、優斗のこと、疑ってたんですね。見損ないました。そんな人だとは、思いませんでしたよ。

満:み、ゆう?

美優:先輩がそんな嘘つきで、薄情な人だって知っていたら、絶対、付き合ったりしなかったのに。

満:なに、いって…。

美優:別れてください。

満:…え?

美優:聞こえませんでした?わ、か、れ、て、く、だ、さ、い。

満:…。

美優:もう一度言いましょうか?
 わかってくれるまで、何度だって言いますよ。

満:うっ…うわああああああああ!
 うるさい、うるさい、うるさい!
 いい加減にしろよ?お前、優斗だろ?美優のふりして俺と別れさせようってか?
 お前、ほんと頭おかしいよ。俺と美優が別れたって、美優はお前のものになんないんだよ!

美優:美優の、ふり?

満:俺を騙せると思うなよ。
 俺はずっと、ずっと美優を見てきた。
 例え美優が俺と別れがってたとしても、そんな風に一方的に別れを切り出してくるような子じゃない。

美優:…ふっ、ふふっ。
(知ったかぶりをしている満がバカバカしくて笑っている)

満:なにがおかしい。

美優:なにいがって。これが笑わずにいられますか?

満:…は?

美優:ふふっ、ふふふ…。
 …ねぇ、先輩。自分が今、置かれている状況。ちゃんとわかってます?

満:状、況?…なんのことだ。

美優:ここ、うちの家ですよ?
 証拠隠滅するのなんて、とーっても、簡単なんですよ?

満:…なぁ、優斗。お前は、何がしたいんだ?
 何が目的で、こんなこと…。
 美優は、無事なんだろうな?

優斗:…おいおい。
 そんなに質問を一度に投げかけられたら、何に答えればいいのかわかんなくなるだろ?
 ほんと、お前はバカだよな。

満:…やっぱり、お前だったか。

優斗:いいさ、特別に教えてあげる。
 優斗と美優は生まれてからずっとずぅっと、一緒にいたんだ。
 双子っていう、特別な関係で生まれてきて、ずっと寄り添ってきた。
 それなのに、あの男と女は、両親っていうだけで、二人を引き離そうとした。
 だから、阻止したんだよ。
 僕達を、私達を邪魔する存在を、処分したの。

満:…処分?…まさか!…くっ、狂ってる。

優斗:狂ってるのは、この世界の方だ。

満:なぁ、そんなことしてなんになる、何が手に入る。
 失うばかりで、虚しさしか残らないだろ?お前は楽しそうに振る舞っているが、目は笑っていないし、泣いているように見える。
 …優斗。お願いだ。美優を、返してくれ。

優斗:…返して、くれ?
 いつから美優がお前のものになったんだよ、意味のわからないことを言うな。
 美優と優斗は一緒にいるのが自然…いいや、むしろ、二人は常に一緒にいなくちゃならない。
 二人で一つ。二人でやっと完成されるんだよ。

満:お前…。

優斗:…ああ、そうか。

満:…え?

優斗:お前も、邪魔、するのか。

満:ゆっ、優斗?…やめっ…。

優斗:邪魔を、する…お前は…。

満:だっ、誰かっ…!たすけっ…。

美優:…サヨナラ、先輩。

満:…え?
(そこにいたのは紛れもなく美優で、それが優斗なのか美優なのか、満にはもうわからない)

(間を開けて、台所)

優斗:あー、お腹空いたなぁ。
 運動したせいかな。なぁんてね。

美優:今日のご飯は、優斗が大好きなハンバーグを作るよ。

優斗:えー、美優に作れるの?

美優:失礼ね!ちゃんと作れるわよ!

優斗:あはは!だといいけどね!

満:笑い合う、二人の笑い声。

優斗:まだかな、まだかなぁ。

美優:もー、楽しみなのはわかるけど、火に近づきすぎると危ないよ?

優斗:はーい。

満:夕焼けに照らされ、伸びる一つの影。

美優:はい、完成!

優斗:わぁい、ハンバーグだぁ!

美優:ふふ、なんだか子供みたい。

優斗:別に良いでしょ?
 ここには、僕と君しかいないんだから。

満:その先に転がる複数の黒い袋…。

美優:そうね。ふふっ。
 私と優斗。二人きり。…もう、誰にも邪魔させない。

満:狂っていたのは、俺か、彼か。…それとも。

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