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SSMぽいの好き。序破

ポッカリと十日間ほど時間が出来たので旅に出た。何処か寂れた温泉地へと。今の日本に寂れてない温泉地なぞ無い。あっても行かない。

安いからなぁという理由で二千円払って新宿行きの深夜バスを取った。直接京都から僻地に飛ぶより、一度東京まで出たほうが断然安く済んだりするので。つまり私は掛け値無しの貧乏人である。バスに乗り込むと隣に人が座っていた。カーテンで仕切られていたがあまり好ましい隣人ではなかった。膝とか広げるタイプやったんでキモいなーって思ってた。オジサンの風評を下げる行為でもある。深夜バスの旅に愉しみなんて見い出せない、皆、寝るのみだ。新宿に着いて更に電車に乗り換えた。日光直通の東武特急線、『日光一号』。なんと言うか、ダサい名前だ。外観と内観はカワイイ雰囲気で。昭和の味付けがされてた。温泉前に東照大権現様を拝見に、日光東照宮へ。

現在、大猷院(徳川家光公墓所)が公開されていたり、軽い山登りになったり、折角来たんだからとたっぷり歩きまわった結果、腰痛か悪化した。古くから腰痛持ちだ。原因は腹筋が無いからだと思う。自力で一度も腹筋上体起こしを完遂したことがないほど。腹筋の代わりになにか別な器官が配置されてしまったんだろう。話は戻り、日光東照宮、巨大な杉が連立し蜩が山全体を覆うかの如く囁き合っていた。巨大な切り石で作られた壁や階段。その全てに苔が生している。各地の大名や朝廷から寄進された燈籠、大門、調度品、ズッシリと建ち並ぶ豪奢な社殿。私の耳には確かに声が聴こえていた。

『どうだ、すごいだろう。どうだ、すごぉいだろう。』

確かに凄かった。チケット代も凄かった。日光東照宮と宝物館、大猷院に三仏堂まで見学するとチケット代だけで3,500円を超え、1建物に付き一御朱印が用意されている。分厚い御朱印帳を携えたオバちゃまはかなりの頁を埋めるだろう。そして、財布の中身は減るだろう。おのれ徳川家康。個人的には大猷院がお気に入り。後水尾上皇の筆による扁額(へんがく)が配された二天門、その他にも仁王門や夜叉門、鍋島勝茂進呈の御水場など、赤と黒を基調に派手過ぎない印象。

買ったチケット代分は何とか見回り切って寄り道して酒神社まで足を延ばした結果、腰痛キマリ、一定値まで悪化。ここまでするとなかなか良くならない。忙しく一泊して帰りの電車に乗ったら、それこそ大変な事になりそう。とにかく私の腰は破壊された。二泊目を頭に過ぎらせながら鬼怒川の寂れた温泉旅館へ。会津若松行きの快速、AIZUマウントエクスプレス三号に乗った。少しモダンな車両。ベロアのシートに木目調の内壁だったかな。山から山へ。何も起こらない旅だけが続く。蝉の声が鳴り止む事はないだろう。

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