芽論総太

長崎在住。

芽論総太

長崎在住。

マガジン

  • 週日記 week diary

    1週間日記だけをまとめています。

最近の記事

夢日記11.6

 屋敷に人が集まっている。黒い服、礼服、知らない顔のおじさんとおばさんたち。真昼で外が明るい。/男が折檻されている。この家の因習に則って、逆らいもせずに髪を抜かれたり酷いことをされている。包帯ぐるぐる。赤い肌。私は怖くて耳と目を塞いでいた。/時間は遡る。/縁側にある紫色の荷物。布。着物か、風呂敷かわからない。ビニールに覆われていた。障子で隠れていて気づかなかったので踏んでしまう。足跡が残った。私は縁側には残らず即座に踵を返す。/時間は戻る。/折檻のせいで変な匂いがするらしい。

    • 【ZINE BLOOM 〜めくるめくZINEの世界〜】

      ・開催期間:11/22〜12/1 ※最終日は17:00迄 ・場所:みらい長崎ココウォーク5階イベントスペース  へ、参加させていただくことになりました。  これまでとは変わった形のお披露目会は多少なりともわくわくします。  今回は2作品の予定です。  文学フリマ福岡10に合わせて製作した創作短編小説『幽霊花/朱墨』、 今年2月のイベント【UNI×MAKI×ZINE2024】の時期に編集、製本、そして加筆修正した第2刷 『ちょっと長めのショートショート メロンソーダとぼ

      • 散文6 それでも人は

         鬱蒼と生い茂る暗澹を掻き分けて、漸く這い出して見えたものは諦観と気楽さだった。何事も、欲を捨てれば身軽になる。無欲な生活が楽しいかと問われればそれまでだけれど、藻掻き苦しむより遥かにマシだ。幸があるから不幸がある。何事も、何も無い平穏から少しマイナスくらいがちょうど良いのだと思う。ほんのりと孤独を纏って、寂しさに包まるその飢餓感があるから文章が書ける。  満足してはならないのだと思う。  満腹が胃腸の不具合を齎すようなものだ。  ただ、「ほんの少しのマイナス」というのが難し

        • 散文5 結論、死ぬ時は死ぬ。

           言葉の捉え方とは世界の捉え方のことだ。悪いように受け止めれば悪く思うし、良いように受け止めれば良く思う。同じ物事でも視点は複数あるということだ。私は社会人になって以来五年、この「視点」を増やすことに執着している。  世界は自分中心で回っているのではないということ。  他人の気持ちを決めつけるのは傲慢だということ。  基準は人それぞれであるということ。  そして、私は愚か者であるということ。  愚か者が勉学を怠ると目も当てられぬ。  だから私は日夜読書に勤しむ。  世界は変

        夢日記11.6

        マガジン

        • 週日記 week diary
          4本

        記事

          week diary 2024.09.29〜10.05

          09.29.日 しとどに降る雨  頭痛で欠勤。ロキソニンじゃないと効かないけど、飲みすぎは良くないと聞いたからアダムA錠を飲む。効かなくて悶絶する。 09.30.月 曇天、降雨  頭痛。しばらく雨続きの模様。 10.01.火 曇天、降雨 『絡新婦の理』を読み終わる。京極堂でさえどうにも出来ない事件。榎木津さんが出てきてくれたら大丈夫だ、と思っていたのに、終幕がまた次の展開への幕開けになる事件とは相性が悪かったようだ。私の榎木津さんへの信頼は久遠寺翁くらいあるかもしれない。

          week diary 2024.09.29〜10.05

          week diary 2024.09.22〜28

          09.22.日  09.23.月 晴天、秋が来る  今日はグループ展のミーティングで、朝から南山手へ向かった。バスと電車を使って乗り換えを二回する。ちょっとした小旅行気分。南山手美術館はグラバー通りの上にあって、螺旋階段をぐるぐる上っていると高さに目眩がした。高所は昔から苦手だ。幕末珈琲、という名前のコーヒーを注文すると、ご主人が焼き物を持ってきて説明してくださった。百五十年前のです、今飲まれてるのも百五十年前のマグカップです。手元に力が入る。こんな貴重なものを客に提供して

          week diary 2024.09.22〜28

          幕間、自死を謳う先生

          「これ以上さらに恥の上塗りをする心算かい? 生きるということは、そういうことだ。まあ、きみは生きる理由が無いと言うが、死ぬ価値も無い。生きるも死ぬも同等に無価値なのだから、きみの好きにしたまえよ。しかし」  死ぬ意義はある。  と、外套を纏った男は言った。死人のような白い肌、黒い蓬髪、黒い外套。生白い肌と下駄の鼻緒の赤が闇に浮かんでいる。男の双眸は天を仰ぎ、この闇に恍惚と酔いしれているようだった。天を見上げたまま、男は唇を不気味に歪める。 「死ねば全ての苦しみ、悩み、辛さ

          幕間、自死を謳う先生

          week diary 2024.09.15〜21

          09.15.日 晴天なり  家族とか結婚とか、そういうものを一瞬だけ考えて見なかったことにする。 09.16.月 晴天、突然の大雨  ウニスカへ。一睡もできなくて眠かったけれど、眠れないまま電車とバスを乗り継ぐ。ほんのり、しんどさを纏う。新刊の『酒場の君』と、しばらく悩んでから、みのわようすけさんのZINEと、鼠の王国製作所さんのハンコを買った。 「文学フリマに出るんですよ」 と、店主が、来店した他のお客さんに私のことを宣伝してくれた。そのお客さんとは私も以前会ったことがあ

          week diary 2024.09.15〜21

          酒場の君

           武塙さんの本『酒場の君』を読むと、お腹が空いて仕方が無かった。私はずっと、居酒屋は恐ろしい場所で、取って食われてもおかしくないと思っていたので「居酒屋に行ってみたい」と思った自分に驚いている。居酒屋の前を通る度に、ここは常連さんが通う秘密基地で、一見さんはすべからくお断りなのだと思っていた。  それよりもお腹が空いていた。武塙さんの文章から居酒屋の匂いが漂っているのだ。セリのおひたし、カニクリームコロッケ、串カツ、おでん、その他諸々。  ダメ元で何か食べるものが無いか探した

          SS作品/夜から鬼が出てきて、それで

           眠れないので天井を眺めていると、薄ぼんやりと何か人の形をしたものが動いた。それは少しずつ輪郭がはっきりしてきて、ああ、鬼だと気がついた頃には目が合って数秒が経っていた。鬼だと思ったのは額に角が二本生えていたからだ。角があれば鬼、教科書にも載っている。  先に折れたのは鬼の方で、恐る恐る視線を動かしてはまた俺と目を合わせるという奇行を繰り返していた。それから、おい人間、と気まずそうに呟いた。 「見えてるのか見えてないのかハッキリしろ」 「見えてるよ」 「うわっ、しゃべった!」

          SS作品/夜から鬼が出てきて、それで

          SS作品/街に溺れる

           友人は黒いジャージに金髪の出で立ちで、耳には猫の形をした金のピアスが刺さっていた。友人は黒い軽自動車で迎えに来ており、その運転席の窓から俺の名前を大声で呼んだ。 「ライト!」 「おう、シン。待たせたな」  俺も右手を上げて応える。シンは親指を立てて後ろに二回倒した。どうやら助手席には先客がいるらしい。シンに促されるまま後部座席に乗ると、もわっと酒気が漂ってきた。カンナだった。 「遅せぇなぁライトこの野郎」  カンナが赤い顔で無邪気に笑う。カンナは珍しく髪を整えて化粧までして

          SS作品/街に溺れる

          week diary 2024.09.01-07

          09.01.日 晴天なり  フレンチトーストを作っているが、食パンが分厚すぎるせいでなかなか火が通らず、かれこれ1時間ほど格闘している。フレンチトーストの作り方は小学生の頃に妹に教えてもらったから、はたしてこれが正解なのか否かも分からぬ。ネット検索は意地でもしない。/昨夜、愛して止まない友人から「とにかくお前に会いたいからどっか行こうぜ」と連絡が来た。海など、山など。未だこの夏、この友人と自然散策をしていないから「近いうちに必ず」と返信をする。/ブラックのコーヒー缶。一万四千

          week diary 2024.09.01-07

          SS作品/体温2

           他人の人生なんて、興味も無いし自分に関係が無い。と、ずっと思っていた。興味が無いのは「自分より良い暮らしをしている人間」に対してであって、人伝に聞く彼の道行きには苦労と危うさが滲み出ており、だからこそ私は彼を忘れずにいられたのだと思う。  ふとした拍子に、同級生だった彼のことを思い出した。不登校で、ぶっきらぼうで、何にも興味が無いふうで、明らかに周りと違う目をしていた。自分の人生に興味が無いというよりも、不安しかない人生に立ち向かおうとする意味の無さを誰よりも理解している風

          SS作品/体温2

          SS作品/体温

           俺の友人は眠るのがヘタクソで、いびきがデケェしウルセェし、かと思ったら耳を澄まさないといけないほど浅い息も吐くし、時と場合によってはひどく苦しそうな顔をして、唸る。 「たいよう、おい、たい、はるひ」  うなされている友人の背に手を回して名前を呼んで、声が届けば小さなため息が聞こえてくる。  6畳、ワンルーム。  俺の王室、一人暮らし。  そこに大陽がやってきて、もう一年が経とうとしている。  大陽とは小学校からの付き合いだ。とは言うものの顔見知り程度だったし、高校からの進路

          SS作品/体温

          SS作品/豚骨ラーメンを葱大盛りで

           壊れた祠にはヤバいものが祀られている、なんてのは妖怪モノによくある導入で、大抵は封印を解いた少年少女が主人公になって物語が進んでいく。主人公は昔から目に見えないものが見えていて、自分の生まれていない過去に大きな約束事が成されていたり、祖父母の代から受け継がれる何かしたらを使って問題を解決していく。  ぼくは少年少女じゃないし、霊感は無いし、自分の家系が陰陽師だったり霊媒師だったり神主だったりしたわけでも無い。ただの普通の会社員、ただ、普通に、二十連勤を迎えた上に終電も逃した

          SS作品/豚骨ラーメンを葱大盛りで

          無題

           書けない。  何も書けなかった。  時間は無駄に過ぎていく一方で、締め切りは既に目の前で、けれど、やっぱり、何も書けないのである。  この世から逃げ出せないのが私にとっては相当のストレスで、永遠に現実を生きていくのに常に正気でいられるわけが無い。それとも。  星が流れた。

          ¥100