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猫のきもち。

ここ二週間ほど、猫が体調を崩してしまいとても大変だった。去年とはまた少し違う大変さである。とはいえ、もうやること出来ることすることが決まり、あとはもうそれをなんとかするための消化状態なので悩みの渦中にいた時よりはまだ精神的に締めている部分がすくない。

そんななか思うことがあった。

猫にはやはり、人間のような情緒や感情があるのだと思ったのだ。

以前たまたま出先で鍵を忘れてしまい、家に一晩帰れなかったことがあった。その時は漫画喫茶で一晩明かし、その次の日に仕事をして帰宅をしたのだが、どうも玄関の様子が変だった。

いつもなら迎えにくる猫がいないのだ。
どうしたのだろうとおもったら、いつもの二倍先ぐらいの距離からこっちを睨みつけてぎゃー!っと喚くのである。声をかけても声を上げるだけでまったくこっちに寄ってこない。こんなことはいままでなかった。
最初面食らったが思案して納得した。

「なぜ何も言わずに帰ってこなかったのだ」

そういいたかったのだ。猫は。

別に外泊をすること自体に文句があるのではない。
きちんと、今日は泊まってくるからね、いいこで留守番をしているんだよ、と声をかけて撫でてから出かけるときこんな反応はなかった。

なぜ、ちゃんと、泊まってくるよ、とひとことかけずに無断で外泊をしたのだ。とそう言いたかったのだろう。

平謝りしながら、自分から歩み寄って撫でたら溜飲は下がったようでゴロゴロ言い出したが、彼なりの如何ともし難い怒りの表現だったのだろう。

それとおなじことが起きた。

一晩入院した猫に会いに行った。気のいいやつで、強く、大きく、今回の入院も青天の霹靂のようであったが危機的な状況を見事に脱し、それでも点滴治療をしなければいけなかったので入院をした。
弟と妹がいるのでそれの毛玉をわざわざつくり、きっとこれを嗅いで喜んでくれるだろうなどと思っていたが、そうは行かなかった。

扉を開けてもらって、よしよしなどと声をかけようとした瞬間
にゃーん!!!と怒声をもらった。うー、や、しゃー!などではなかったが明らかに怒声だった。正直面食らった。
必殺の妹の毛玉も全く嗅ぐことなく、怒り心頭のようであった。
そこではじめて気がついた。

お前は入院だから、今日はわたしは帰るからね、ごめんね

と伝えてなかったのだ。なぜお前は俺を一人にしたのだ、と言いたかったのであろう。そこからまた平謝りをした。目をぱちぱちとつぶってみたが全く返してくれないあたり、だいぶお怒りだったのだろう。
それでもしばらく話しかけ、謝罪をし、しこたま撫でたら最後の方はちょっと機嫌を直したようだった。
この懐のふかそうな男ですら、ちょっと言葉が足りないとこの有様とは。猫とは恐ろしいと改めて感じると同時に、もっと向き合わねばならないとおもった。

現在、同じくその猫の弟が週末から体調を崩し、原因を根治するために手術と入院をしている。
昨日一旦の手術が終わり、今日見舞いに行ってきたが食欲の権化のような男が食事に口をつけていないらしいと聞かされた。
よしよしと撫でて上げたら可愛いそれでいて大変困った顔をしていた。

昨日病院に連れて行ったとき、なし崩しで手術に至ったのだがまた私は彼に、ちょっとがんばってね、わたしは一旦帰るけどちゃんとまた来るからいいこにしているんだよ、も言ってなかった。

さぞや心細かったろう。ケージの端っこでずっと動かず困った顔をしていましたと病院の先生に言われた。

また今日も平謝りをして、たくさん話しかけ、あたまをうりうりとなでてやったらくるくると喉を鳴らしてくれた。手渡ししたごはんもぺろりとなめてくれた。困った可愛い顔をしていた。

一人で暮らしているゆえに、話し相手は猫しかいないので自分はとても猫に話しかけるせいもあるのだろうか?
いや、でもこの世の飼い猫はきっと文豪の語彙力と感情をもっていると思っている。あまりに複雑な愛憎。人間のほうがよっぽど単純なのではないだろうか。

このちいさなプレデター達の感情レベルに驚かされてばかりだ。

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