乃木坂46 山下美月卒業コンサート 2024年5月12日




僕は正直なところ山下美月さんを推してはいなかった。


僕が乃木坂を好きになったのは2019年末ごろ、その時には山下美月は乃木坂を代表するメンバーで推す余地すらなかった。
学生時代部活で控えとして生きて来た自分の境遇を重ねやすいからか、もともとアンダーや研究生などこれから頑張ってもらいたい人を応援したい気質。
そんな自分にとって押しも押されもせぬ山下美月は遠い存在だった。



僕は山下美月が少し苦手だった。


ちょっと適当で緩いキャラを装っているけれど隠しきれないプロの姿勢と熱量。
あまりにもストイックで完璧なアイドル。多方面に活躍しながら後輩やグループへの愛に溢れ、多忙な中でも他のメンバーが出演するライブや舞台に足を運ぶ。
こんなパーフェクトな人間を見て自分のいい加減さが照らし出されてしまう感覚があった。




それでも僕は山下美月を心の底から尊敬していた。

世代交代した乃木坂46の核として自分の立場と責任を受け入れて覚悟持って取り組んでいる姿はあまりにも鮮やかだった。
僕なんかが感じるアンダーを応援したくなる共感心とは別の次元で、チームを担う人にしかわからない重圧や孤独を踏み越えて強く輝く山下美月はアイドルを絵に描いたような人だった。


幸いなことに現地東京ドームで見送ることのできたライブは、そんなアイドル山下美月を体現した場所であった。

メンバー全員にスポットライトが当たるようなライブ構成も、
特に絆を感じるメンバーとの楽曲披露も、
幅広く取り入れた選曲も、
あらゆることから山下さんの愛が伝わって来た。

1・2・3で理々杏ちゃんが出てきたところ、言霊砲での久保ちゃんのメッセージでの涙、無口なライオンでセンターステージに1人立つかっきー
畳み掛けられてこの日最初の落涙。

弓木奈於ちゃん推しとして初恋ドアのメンバー選びに胸が熱くなり、5月12日に心にもないことを選ぶことや図書室の君へを披露する優しさに胸を打たれた。

なんて愛と気遣いの人なんだろうか



歳を取ると涙もろくなるのは本当のようだ。

卒業スピーチは今まであまり出してこなかったであろうアイドルでなく素の山下美月を垣間見るような内容だった。
でもだからこそ、1人の女の子がアイドルとして輝こうと努力していたからこそこれだけ多くの人を惹きつけ多くの人に希望や夢を与え、それが引き継がれていったんだと改めて認識されられた。
このスピーチで感謝と尊敬の念が増したあとの夏桜は歌詞がとてもストレートに印象的に入ってきて急激に寂しさが溢れ出す。

未来の答えはしばらくはこの日を思い出して寂しさが込み上げてきてしまいそうなのでしばらく自分では聴けないかもしれない。


そしてもらい泣きが止まらない。
アンコールでのメンバーからのメッセージ、美空ちゃんの時点で既に鼻水が止まらずかっきーの後悔があるという切り出しで涙腺が決壊。
山下さんの優しさもそうだがかっきーもなんて素直で真っ直ぐでいい子なんだろうか。
山下さんへの罪悪感のようなものを抱えながらこのシングル期間を過ごして来たのだろう、そのことを想像するだけでも涙が溢れる。
それに対して最後問いかけで終わりかっきーに笑顔で返答させ前に進む力を与える山下美月、なんて懐の深さ。
感動しながらもその人間力と機転に純粋にすごいと思わされた瞬間だった。

極め付けは理々杏の手紙。
あれだけ泣きじゃくる人を見たことがないし、それでもなんとか読み進める姿が胸に来る。
席の周りは鼻すする音が響くくらいにみんなが理々杏の手紙と絆、山下美月のプロ意識に感動させられていた。
僕も鼻水止まらないし涙は落ちるし人前でこんな泣くことあるかと思うくらいにもらい泣きしてしまった。



なんだか今回のライブではこれまで配信で観てきた卒業コンサートと違い、どのメンバーのコメントからもアイドルと1人の人としての姿を感じたような気がした。

プロとして弱いところ、大変そうなところを見せない完璧な姿勢(写真集撮影のスケジュール聞いた時は唖然とした)な山下美月の1人の女の子としての苦悩を吐露したスピーチも、「アイドルというお仕事」という言葉も、
一ノ瀬美空の「こういうキャラだから出せないけど、もうダメだなってときに声をかけてくれる」
賀喜遥香の「アイドルになってくださって」
伊藤理々杏の「倒れた時にアイドルとしての美月は好きだけど仕事を休めて安心した、グループを辞めたいと言い出しても引き止められないと思った」
といったスピーチも印象的だった。

僕の中で山下美月のプロ意識を感じているから敏感になっているのかもしれないが、
多くの人から「常にアイドルであること」を無意識に望まれている存在の乃木坂46がアイドルでない部分に踏み込んだ言葉を伝えたことから、いかに努力して意識的にアイドルをやり遂げてきたのかと感じてしまった。

本当にすごい人だ。
そんな人の最後の瞬間に立ち会えたことに改めて最大の感謝を。


今は1人の人間の山下美月に戻って月でゆっくりと過ごしてほしい。
そしてこれからもメンバーを、同期を、後輩を、その優しさで見守っていてほしい。


お疲れ様でした。

美月にやみつき

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