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2020年のプロ野球が外国人選手に与える影響を考察し、セ・リーグの外国人選手事情を占う。 2020.06/12

 お世話になります。マーメイド侍(@Fan526Hawks)です。

 さて、実質1回目の投稿ですが、早速野球ネタいきます。

 今回は、2020年シーズンの外国人選手について考えていきたいと思います。先日、ひとまず7月途中までの公式戦の日程が発表されましたね。

 ご覧のように、セ・リーグは3連戦×2での6連戦、パ・リーグは同一チームとの6連戦という内容。限られた期間でおよそ120試合の開催を目指すというハードスケジュールのため、連戦続きです。これは選手にとって例年以上にタフなシーズンになりそう。

 それに応じて、NPBは1軍への登録枠を従来の29人→31人(ベンチ入りは26人まで)に拡大することを決定しました。

 そんな中、注目が集まるのは外国人枠についてです。例年は、「4人まで1軍登録可能(投・野=1・3or3・1or2・2)」というルールですが、この枠をそれぞれプラス1した「5人まで1軍登録可能、試合に出場できるのは4人まで」という案が出されているようです。現時点では、まだ導入に至っていませんが、おそらく取り入れられるのではないでしょうか。

 さて、もしそのようになった場合、得をするのはどこ? あるいは不利になってしまうチームは? また、この開幕延期という事態が外国人選手に与える影響は非常に大きいのではないかと考えます。

 特に、来日1年目の選手は本当に大変。

 異国の地・ニッポンに降り立ち、チームを救うために来日した直後に、全世界を巻き込むパンデミックが起こるなんて。日本でのプレーはもちろん、日常生活にも慣れていなかったであろう彼らにとっては、ショックは大きかったことでしょう。そして、このような未曾有の事態に、祖国で生活することができないというのは複雑な心境だと思います。単身で日本にやってきているため、家族と離れて暮らしている選手も数多くいるはずです。


 こちらはカープでドミニカンの通訳を務めているヘンディ・クレート氏についての記事です。母国・ドミニカ共和国に家族を残し、単身で日本にとどまることになった話が書かれています。本当にハードな状況ですよね。記事には、「フランスア、メヒアらドミニカン選手たちのサポートを行う」と書いてありますが、たしかに外国人同士で寄り添える環境があるかというところは、彼らの精神面でのダメージを緩和させてくれるという意味で重要なポイントかもしれません。

 さて、ここで開幕延期により外国人選手に考えられるメリット・デメリットをまとめてみます。

1. メリット

相手チームの対策が遅れる
→練習試合は11~12試合。例年以上に事前のデータがない状況で開幕できるため、調子が良い選手はそのままの状態を維持し続けられる可能性が高い。例年見られる「オープン戦~春先までは調子よかったのに弱点露呈で成績急降下」のパターンは少なくなる?
②外国人選手は気温が高くなってからの方が得意
→まあ個人差はありますがね。気温が高くなってきてから猛打を爆発させる選手は多いイメージ(特に中南米の選手でしょうか)。投手も、気温が高くなってからの方が肩があったまってくると聞きますね。実際オープン戦の時より球速が上がっている選手が多い印象です。
③無観客ならではの球場音への馴染みやすさ
→まあこれはどうなんでしょうね(笑)。日本特有の鳴り物応援、BGMがないのは寂しい一面、野球の音がよく聞こえます。これって海外と雰囲気似てたりするのかも。だとしたら特に来日1年目の選手たちにはプラス…? いや、選手たちはプレーに集中していて気にしていなかったり、やっぱりお客さんがいる方がプラスなのかもしれません。
④外国人枠の増加(仮)
→先述の通り、まだ未定ですがね。5枠(出場は4人まで)になり最も恩恵を受けるのは先発投手ではないでしょうか。4枠の際は、登板後他の選手との兼ね合いで、翌日に1回登録抹消して、また10日後に登録して翌日抹消・・・という流れになりがちでしたが、中5~6日できっちりローテーションに入れるようになります。

2. デメリット

①適応への時間がない
→メリット①の逆パターン。逆に調子が悪かったり、日本の攻め方に慣れていなかったりした場合、実戦経験が積めないのはなかなかの痛手。生きた球を見る経験という意味では日本人選手にも通じますね。またクイックやランナーケア、守備連携などにも適応できるかというところ。
もちろん、野球面に限らず生活面も、慣れない環境です。同郷のチームメイト、スタッフや、日本でのプレー歴の長い選手からサポートを受けられるような環境があれば、非常に心強いかと思います。
②調整の難しさ
→これは日本人選手にも当てはまりますね。
本来は、2月にキャンプインしてオープン戦で状態を上げつつ、3月20日の開幕にある程度のピークを持ってくる計算だったかと思いますが、それが崩れ、自粛期間を過ごすことに。いつ開幕が決まるのか不透明な状況の中、どのような調整を行ってきたのか、その是非は非常に難しいのですが、答えがわかるのはシーズン中になりそう。
③精神面のコントロール
→1年ごとの成績が来季の契約に直結する外国人選手にとっては、日本人選手以上にナーバスな問題かと思います。例年以上に短い準備期間で素早く結果を出さなければならないというプレッシャーがあります。ひとたび開幕ダッシュでつまずいてしまった場合、それが焦りや空回りにつながる可能性は例年以上かと。また、それにより引き起こされるケガやスランプによるモチベーションの低下も懸念材料です。

 思いあたるのはざっとこんな感じでしょうか。それでは、この観点を踏まえつつ、各チームを分析してみましょう。なお、外国人枠は5人に増えたものとします。

 今回はセ・リーグ編です。

**3.各球団の外国人選手事情 セ・リーグ編

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カッコ内の数字はNPBでの通算年数。青字が1年目の選手。下線が開幕1軍濃厚。斜体は他の選手との兼ね合い、調子次第。
※ごめんなさい。巨人・ディプラン投手を育成のままカウントしてしまいました。正しくは支配下7名+育成2名です。

 まず注目してほしいのは、ヤクルトです。合計で5人という少数精鋭の布陣。しかもそのうち3人が来日1年目の選手ですね。

 現時点では、2年目のマクガフは勝ちパターンのリリーバーとして内定。スアレスも開幕ローテーションに入るのではないでしょうか。そしてイノーアが4戦目の先発、エスコバーがレギュラーの遊撃手という立ち位置で、クックは3月に上半身のコンディション不良という知らせがあって以降行方不明です。
 つまり、現状稼働できるのは4人のみ。これもし枠が増えたら余らせちゃうんですよね・・・(笑)
 不安材料は他にもあって、外国人野手がエスコバーただひとり。しかも彼はバッティングというよりはディフェンスを期待されている選手ですね。これってどうなのかなあ。チームの戦力的にも彼の精神状態的にもなかなかハードかと思います。ここまで打率は.130(6月10日現在)。直近は捉えている打球も出始めましたし、何より彼は陽気なキャラクターなのでそこは少し安心ですが、個人的にはあと何名か補強する必要があるのではと感じてしまいます。

 巨人もメンバーは固まっていますね。

 4年目のメルセデスが順当にローテに入り、2年目のデラロサが抑えでしょう。また新加入組サンチェスは徐々に状態を上げてきている印象ですし、野手では実績あるパーラがどこまでやれるか楽しみ。ビエイラは安定感に欠けますが、まだ若く、徐々に内容も良くなってきているため、枠が増えれば当初は起用されるかもしれません。
 興味深いのは、ビエイラ、パーラを除く7名(育成2名含む)がドミニカ共和国出身というところ。これは新加入のサンチェスやディプランにとっては心強いのでは。

 出身国でいえば、中日も興味深い。5名のドミニカ共和国組と4名のキューバ組で成り立っています。

 その中で、キューバ勢では5年目のビシエド4年目のR.マルティネスドミニカ勢では4年目のアルモンテ新加入コンビゴンサレスシエラサポートできる体制が整っていると言えそうです。
 育成でも、A.マルティネス(キューバ出身・3年目)という今や珍しい外国人捕手が攻守両面でアピールを続けており、順調にいけば支配下登録を勝ち取れそうです。バラエティーにも富んだバランスの良い布陣かと思います。

 争いが激しそうなのが、阪神と広島ですね。

 阪神は、12球団で最多の4人が来日1年目。全員がアメリカ出身の選手たちなんですね。
 まず投手は先発ローテーションを勝ち取った通算3年目のガルシアとアピールを続けるスアレスが内定でしょうか。スアレスは新加入ですが、ソフトバンクで4年のプレー経験があることは心強い。また、メリット②のように、肩があたたまってきたのか、最近の登板ではストレートに威力が感じられます。適正と言えるリリーバーに専念すれば、今季は活躍が期待できそうです。
 野手では、まずボーアが確定でしょうか。春先は詰まった打球が目立ちましたが、自粛がプラスに働いたか、3試合連続HRを放つなど、少しずつその片鱗を見せ始めました。これはメリットの①あるいは②のパターンになるかも。2年目のマルテも濃厚。打撃は昨年の実績もありますし、思った以上に三塁守備もこなせそうですね。
 最後の1枠はサンズを試すでしょうか。まだまだ適応という面では課題がありそうですが、一発長打は魅力的。3~5番を外国人トリオで固める開幕となりそうで、わくわく感はありますね。
 これに続くのが来日1年目の投手コンビ。エドワーズはセットアップとして期待されますが、まだ不安定な投球が続く印象。ガンケルは動くボールが武器のグラウンドボーラーですが、シーズン中は外国人枠との兼ね合いになりそうで、それこそ枠増加の恩恵を受ける投手の1人でしょう。
 新加入の多さは未知数ですが、外国人選手同士でプラスの相乗効果が生まれるといいですね。

 広島は、K.ジョンソン練習試合7イニングを無失点と順調そう。さすがは来日6年目、広島に慣れ親しんだ男と言えます。野手では、5年目を迎えるメヒアが猛アピール中ですね。ここまで、練習試合でHR5本(6月11日時点)を放ち、開幕サードのポジションを見事つかみました。日本経験の長さがいい調整につながったと思われます。1年目のピレラもバッティング、走塁ではアグレッシブな姿を見せていますね。当初考えられていた三塁手としては守備面が心もとないですが、左翼手、あるいは一塁手として起用されそう。

 さて、残り2枠のブルペン陣が悩ましいところです。

 ここまで結果でアピールしているのはスコットですね。南アフリカ共和国出身という異色の経歴の持ち主で、当初はスペアとして考えられていたかと思いますが、鋭く変化するスライダーを軸とする投球スタイルでオープン戦6試合で防御率3.00、練習試合ではここまで3試合無失点と好成績。クローザーの最有力候補として残りそうです。
 実績で抜けているのは3年目のフランスア。キャンプ~オープン戦の時点ではストレートが140km/h台前半しか出ず、かなり心配されましたが、最近の登板ではひとまず140km/代後半~150km/hをマークする球も見られ、自粛期間で少しリフレッシュできたかな。まだまだ本来の調子ではなさそうですが、5人枠なら開幕当初はセットアップを任されそう。
 DJ.ジョンソンも状態を上げてきている印象です。オープン戦は失点するシーンが目立ちましたが、練習試合はここまで4試合を無失点。150km/を超える直球と特徴的なカーブで奪三振能力は高そうです。6連戦で中継ぎ陣への負担は高くなるため、柔軟な起用をしたいところ。

 現時点で最も良い状態と言えるのがDeNAではないでしょうか。

 なんといっても、オースティンですね。当初はロペス・ソトのスペア的存在かともみなされていましたが、蓋を開けてみればオープン戦から絶好調(打率.343 4HR 出塁率.439 OPS.1296)。自粛期間を終えた後の練習試合でも猛打は止まらず、ご覧の成績です。

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(データはスポナビの一球速報を参考にしています。)

 実際、映像を見てみても大きな弱点は見受けられず、選球眼も良さそうですね・・・このオースティンの躍動っぷり、もちろん、本人の適応能力が素晴らしいのは間違いないのでしょうが、ここではそれを支える環境にも注目したいのです。

 DeNAには、セ・リーグでは最長の来日8年目を迎えるロペス、また3年目のソトといった日本での経験値を携えた助っ人たちが多いんですよね。投手陣もピープルズを除き、来日4年目のエスコバー・パットンが主力です。(実は、ピープルズも同じくアメリカ出身。年齢も29歳同士と共通点がある。)その中でも特に、ロペスの存在感は大きいのではないでしょうか。勝負強いバッティングはもちろん、ショートバウンドの処理や、嫌な雰囲気になりそうなときにマウンドへ間を取りに行くなど、数字に表れない部分での貢献度が非常に高いプレーヤーかと思います。野球面に限らず、あらゆる面で彼らからサポートを受けられる体制が整っていると言えましょう。

 さらに忘れてはならないのが、ラミレス監督、そう、12球団唯一の外国人監督の存在です。2001年にヤクルトに入団し、今季で来日20年目を迎えるラミレス監督は、以前から外国人選手の扱い(メンタルケアやモチベーション維持)に定評がありました。オースティンに対しても、たとえばこれ。

 夫人の見送りのために、1日休暇を許され、翌日見事にHRを放っています。これは、精神面でのサポート、まさにデメリットの③をうまく回避していると言えるでしょう。このような充実のサポート体制こそが、ここまでオースティンを本来の、あるいは能力以上のパフォーマンスを見せていることに大きく影響しているのではないでしょうか。


 長くなってしまったので、パ・リーグ編は後日載せます。


 それでは、また。


2020.06/12「2020年のプロ野球が外国人選手に与える影響を考察し、
セ・リーグの外国人選手事情を占う。」

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