メールの宛名を連名で書くとき、それも「だれかひとり+もう数人のグループ」に呼びかけるとき、次のように書くことが多い。
 
○○さん みなさま
 
 「○○さん」とはそこそこ親しいから敬称は「さん」である。それ以外のメンバーとも、個別にやりとりするときの敬称としては「さん」を使う間柄である。それなのに、そのメンバー全員(数人)のグループには、なぜか「みなさま」と書いてしまう。
 最初が「さん」なのだから、並列の原則に従えば、次も「さん」がふつうであるはず。ところが「○○さん みなさん」ではニュアンスが変わってきてしまう気がする。だから「○○さん」の次に「みなさま」とつなげてしまう。
 なぜだろう。「みなさん」だと、なんとなく広い範囲を指す気がするのだ。国語辞典、類語辞典を数種類ずつ見てみたが、そんな記述はどこにもない。 
 考えたあげく、少納言(KOTONOHA「現代日本語書き言葉均衡コーパス」)を当たってみた。「みなさん」の用例は、Yahoo!ブログとYahoo!知恵袋を除いて1948件ある。「皆さん」は4998件。合計6946件となる。少納言は書き言葉コーパスなので印刷物から採集した用例が並んでいるのだが、50例ばかり見てみたところ、つまりは読み手全員への呼びかけというニュアンスが多い。だが「会員のみなさん」「多くの皆さん」「市民の皆さん」というように、限定した修飾がついていることもある。  
 よって今度は「のみなさん」「の皆さん」で検索してみる。552+2205=2757件。全体に占める「~のみな(皆)さん」の比率は2757÷4998×100≒55.2%。 
 今度は「みなさま」「皆さま」を検索する。169+276=465件。「のみなさま」「の皆さま」は68+151=219件。全体に占める「~のみな(皆)さま」の比率は219÷465×100≒47.1%。「~のみな(皆)さん」と「~のみな(皆)さま」の使われ方に有意な差があるとはいえない。 
 今度は、具体的にどんな修飾語がついているか見てみた。「みな(皆)さん」には「農家のみなさん」「会員のみなさん」「利用者の皆さん」「多くの皆さん」「市民の皆さん」「地域の皆さん」といった語が並ぶ。 
 「みな(皆)さま」は、「保護者のみなさま」「観光客のみなさま」「指導者の皆さま」といった感じ。たしかに、「みなさん」より狭く限定している雰囲気はあるのだが、「市民のみなさま」「地域の皆さま」といったように、「みなさん」と同じ使い方もある。 
 というわけでまだ道半ば。「みなさん」より「みなさま」のほうが狭い範囲を指すという感覚は、自分だけなのかもしれない。情報や材料を見つけたら続編を書くつもり。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?