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昨日は放送大学「新しい美術鑑賞入門」2日目の面接(対面)授業だった。使ったのはアートカード。学校の美術授業向けの教材で、有名な絵画・彫刻・工芸品の写真が載っているが、作品名は書いていない。これを使っていろいろなゲームをしながら美術に親しもうというカードだ。
 4~5人ずつグループを作った後、カードを使って自己紹介をした。71枚のカードから今の自分を表すカードを選び、ひとことずつ言う。
 わたしは岸田劉生「道路と土手と塀」を選んだ。
 自分はちょうど10年前まで翻訳会社の社員だった。業界の将来が明るいとはお世辞にも言えなかったけれど、このまま定年まで働いていくつもりでいた。
 けれども入院・手術し、仕事復帰に失敗して病気退職せざるを得なかった。
 退職時は自分の道がまったく見えていなかったが、数か月後に契約社員として採用してくれた編プロがあった。1年半後に同プロダクションとクライアントとの契約が終了。また無職になったが、別の縁があってフリーランスの身分で出版社に常駐することができた。しかし昨年同社が遠方に移転し、通うことができなくなってやめた。
 それとともに、初めて名実ともにフリーランスとなった。これからは複数の客先を自力で探していかなければならない。コロナに罹ったこともあり、この先どうやって生計を立てていくか見当もつかなかった。「フリーランスの道」というのをきちんと考えたことがなかったのだ。
 それでも紹介などで発注先が1社、また1社と増えていき、いまは「社会人になってから最も心身と生活が安定」して、毎日働いている。収入もなんとか生活できるレベルになった。
 ここでアートカードに戻る。すなわち、これまでは急な坂道だけを見てただただ歩いてきた。これからの見通しも途中までは見えている。空は晴れていて、困難は見えない。その先はもっと登ってみないと、何が待っているかわからない。

 ということで岸田劉生「道路と土手と堀」のカードを選んだ。2年前、秋田麻早子のセミナー「絵を見る技術~名画の構造を読み解く https://www.udemy.com/course/art_akita1/ 」を受講したときに、この絵が出てきて馴染みもあった。
 こうやって「絵のカード」を使って自己紹介をすることで、これまでの自分を振り返り、これからの自分が「やっていけるかなぁ、大丈夫かなぁ」「でも、きっとわたしはまた坂道を歩いて行ける」と思うことができた。
フリーランスの行く手などまったくわからない。でも、ここまできちんと地に足をつけて、一歩ずつ坂道を登ってきたのだ。これからも登っていける。このカードを見ていてそんな気分になった。

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