セロファンに包まれた、定番のイチゴショートケーキ。クリームがちょっとセロファンについている。上に載っているイチゴは1つではなくて半分に切ったもの。絞り出した生クリームに埋もれてるくらいの小ささに「そうそう」と頷いてしまう。2層になった真ん中にはクリームが塗られ、その上に薄いイチゴのスライスが2枚。イチゴの下側のクリームは、少しイチゴのピンク色に染まっている。側面の生クリームはスパチュラでさっとなぞったのだろう、薄く塗られている。そしてプレート、いや皿と言ったほうがよい。白い皿の上に白い生クリームのショートケーキ。民芸調で、ちょっとぽってりした陶器の質感だ。ふちに少し切り込みが入っているのも珍しい。竹のような葉っぱが2枚置かれていて、その1枚の上にケーキの角が位置している。
 こんなケーキ、昔食べたなぁ……。いまのお洒落なカフェにあるのは、写真映えするイチゴショートだから、上にはイチゴが一粒丸ごと載っているし、一切れがもっと大きい。プレートは磁器でヨーロッパブランドだ。
 でも、いま一番食べたいのはこのイチゴショート。セロファンをそうっと剥がし、添えられたフォークでまず、ケーキのかどっこをちょっとすくうんだ。クリームとケーキの味をそっと確かめてから2層の間のイチゴスライスへと進むんだ。ああ、早く食べたい。
 しかしこのイチゴショートは食べることができない。絵はがきに描かれたケーキだからである。さらに、オリジナルの姿は本物のショートケーキでも写真でもなく「絵」なのだ。なんて惜しいんだろう。これが本当のケーキだったら「どこのケーキ屋さんのものですか」と尋ねることができるのに。そうしてお店を訪ねて、少なくても同じ種類のものを買うことはできるのに。元が「絵画」ではそれもできない……。
 ああ、残念。12月、伊藤ゲンさんの東京展覧会になんとしても行くんだった。自宅から会場は遠いし、スケジュールを知ったのが遅くてもう日程を空けることがかなわず、諦めてしまったのだ。2月に展覧会がある大阪の人はいいなぁ~なんて思っていたら、3月にはまた東京で展覧感が開かれるという。うわあ、やったー!! よし、手帳に記入したぞっと。

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