Spotifyプレイリスト:ちょっと変わったカバー集(洋楽編)

 「この曲がこんなことになるのか」「この人がこれをカバーしているのか」どういうわけか実在する、あの名曲の変わったカバーのプレイリストをSpotifyで制作。80〜90年代の原曲を中心に集めた。

 以下、短い解説。

Pleasure Beach / Smells Like Teen Spirit

 アシッド・ジャズというか、ハモンドが唸るモッド系のカヴァー。ギターの入れ方やドラムの跳ね方は明らかにグランジ以降のもので、意外とありそうでない演奏だと思う。

Relient K / Manic Monday
 パンク系のバンドが1980年代の名曲をカバーしたコンピレーションより。キーボードの音色、サビの処理の仕方など、調理が上手という感想。

Nature Living / Material Girl
 これまたアップテンポなカバー。ちょっとエモ系っぽくもあり、原曲の明るいノリを、もう少しヒリヒリさせた雰囲気。後半のキーボードの入れ方にも工夫が見られる、ていねいな作り。

Erasure / Video Killed the Radio Star
 誰がどう聴いてもこのバンドっぽい、ピコピコしたキュートなカバー。あえてチープなアレンジにしたのもさすが。この曲のカバーはどうもアップテンポになりがち(あと「アーワアーワ」を男声にしがち)なので、エレポップ要素を強調したものは存外にない。

Squarepusher / Love Will Tear Us Apart
 この人がこれをカバーするのか、という驚きもあるものの、原曲が強すぎたのか、愛があったのか、ドラムンベース風にするも崩しきらず、ジリジリと焦燥感のある妙なアレンジに。好きだったんでしょうね。

New Music / All You Need Is Love

 エレポップ界の名プロデューサー、Tony Mansfieldがもっともシンセサイザーいじりに没頭していた頃の音源。あの超有名な原曲がスッカスカのエレポップになってしまった。終盤に「Greensleeves」が入ってくるのも不可解。ちなみにアルバムだと、自作の同名異曲と並べるというまぎらわしさ。

Frankie Goes To Hollywood / Born To Run
 原曲も超有名ならバンドも超有名、しかしなんでこの取り合わせなんだろう、と思わせる謎の選択。非常に真っ当なカバーで、それゆえに「どうして?」感がより強くなる。

Pet Shop Boys / Where the Streets Have No Name

 カバーで名曲をバキバキに自己流にしてしまう彼らの代表作。U2の遠くから切々と叫んで訴えるような原曲をダンストラックにした挙句、「Can't Take My Eyes Off You」とメドレー形式にするという悪魔のようなアイディア。ボノは怒ったそうです。

Revolver / Since Yesterday

 非常に地味なのだけれど、原曲の「ネオ・アコースティック感」を極限まで高めたような、忘れえぬ名カバー。正攻法で挑んで成功した、文句のつけようがない傑作。

Paul Anka / Jump
 この人がこれを歌う時点で反則。スウィング調の演奏にのせて気持ちよく歌い上げている。本作が収録されたアルバムは他にも「Eye Of the Tiger」「Wonderwall」など、よう歌わせたな……というものが多い。余裕しゃくしゃく。

デューク・エイセス / Careless Whisper

 完全にムード歌謡の雰囲気になりつつも、あくまで端正に歌うデューク・エイセスのおかげで、下品になっていないのがおもしろい。日本人だけが聴いて楽しめるカバーかもしれない。YouTubeに動画なし。

Let Down / Easy Star All-Strars
 レゲエでカバーする企画物で、Radiohead『OK Computer』を全曲レゲエにしたもの。イントロからばっちりハマっていて、アレンジの巧みさにうなる。元から音響に気を配った曲なので、ダブっぽい処理も違和感なし。

西村雅彦 / 21st Century Schizoid Man
 聴いた瞬間に忘れたくなる、日本がほこる、世界のどこに出しても恥ずかしい一品。酔った年配の男性がうろ覚えで歌うとこんな感じになります。YouTubeに動画なし。そりゃそうだ。

Angelique Kinjo / Once in a Lifetime
 アフリカの要素を借りて知的に再構築した『Ramain In Light』を、本場の人たちが全力でアルバムごとカバーした、すさまじくエネルギッシュな解釈。西欧社会のトラウマ的な歌詞も、アフリカの神話みたいな世界に。

Gregorian / Scarborough Fair
 グレゴリオ聖歌風にカバーした企画物。とはいえ、合唱だけだと間がもたないのか、伴奏もしっかり入っているので、つかみどころがない奇妙なものに。EnigmaのMichael Cretuが仕掛け人だそう。節操ないな。

The Cardigans / Mr. Crowley
 渋谷系の影響で日本でも売れまくったこのバンドが、よりによってこの曲をカバーしたのも大概なのだけれど、なんとアカペラ。どうしてこれをやろうと思ったのか?

Stina Nordensam / Purple Rain
 あの誰もが知る有名曲が、北欧の海岸に流れ着いた流木みたいなボロボロの芯だけになったような、解体されきったアレンジ。Princeのカバーなんて星の数ほどあろうけれど、まさにこれは極北。

Vitamin String Quartet / There Is a Light That Never Goes Out
 原曲が原曲なので、弦楽四重奏にしてもおかしいということはない。安っぽいドラマのBGMみたいになってしまっているけれど。ちなみに『The Indie Wedding String Collection』というアルバムで、他にもRadiohead「Exit Music」などが収録されており、“Wedding”というのは悪ノリでしょうね。

The Bikini Beach Band / Sweet Child O’ Mine
 どんな曲でもエレキインスト風にしてしまう頭の悪いプロジェクトで、わりと原曲に忠実にカバーしているあたりがかえって悪意を感じさせるという珍品。


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