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774inc.は一つの「箱」になれるか?・歌謡祭などGWで起こった事

「774inc.」という名前は、VTuberファンであっても聞き慣れない方がいるかもしれません。所属VTuberのYouTubeチャンネル登録者数が100万人を超えるという、かなりの規模であるにも関わらず。

774全員

「あにまーれ」や「ハニーストラップ」の所属事務所と言えばわかるでしょう。他に「ブイアパ」「シュガーリリック」も運営しています。そもそも当初は774inc.という呼び方はなくて、事務所としての「箱」全体を指す言葉が存在しなかったので、知名度が低くても無理はありません。774inc.全体としての企画なども少なかったですし。

そんな、箱としてのまとまりが希薄だった774inc.ですが、このGWで大きな変化があったように思えて、それについて書くというのがこの記事の趣旨です。

774inc.の歴史

前述のように、当初は774inc.の所属タレント全体を表す名前がありませんでした。774 inc.という名前が使われ始めたのは、2019年の7月頃だったと思います。つまり当初は全体として1つの箱という意識は無くて、個別のグループの集まりだったと言えるでしょう。以下にざっと年表を書いてみました。

2018年6月 あにまーれがデビュー。当初メンバーは5名(うち2名引退)
2018年7月 ハニーストラップがデビュー。当初メンバーは5名(うち1名引退)
2019年2月 ブイアパとして1名デビューし、徐々に増員して現在4名
2020年2月 あにまーれに新メンバーが2名参加
2020年3月 シュガーリリックが3名のグループとしてデビュー
2020年4月 あにまーれに新メンバーが3名参加

現在(2020年5月6日)19名のVTuberが所属していますが、2020年2月からの動きが明らかに活発で、2ヵ月間に8名がデビューしています。また、あにまーれとハニストはupd8に所属していましたが、そこから脱退するという発表が4月30日にありました。十分大きくなったから独り立ちできるということでしょうけれど、かなり急に拡大する中で、今後774inc.としてどうしていくのかなという疑問はありました。

そんな中、このGWにいくつか、今後の774inc.について重要な配信がありました。以下に1つづつ紹介していきます。

774inc.対談リレー

1つ目はこれです。因幡はねる(以下敬称略で失礼します)のチャンネルで、774inc.のあにまーれ以外のグループから4人を呼んで、個別にじっくり対談するという企画でした。

いろんな話をしていましたが、中でも印象的だったのは、それぞれの人と「一緒に何かやろう」という話をしていたことです。花奏かのんと龍ヶ崎リンとは音楽を作りたいという話をして、島村シャルロットと杏戸ゆげとは、774inc.全体でやれるゲーム(マイクラかARKか)をやりたいという話をしていました。この4人はまさに、そういうことを相談するのにうってつけの人材です。774inc.で音楽を作れるといえば前者の二人だし(パトラちゃんは別枠)、マイクラならシャルちゃん、ハードコアゲーマーといえばゆげちゃんなので。相談を受けたほうは、ぜひやりたいとノリノリの様子でした。

この相談をあえて公開の場でやった理由は、774inc.としてグループを横断した企画を今後はどんどんやっていくと、リスナーに宣言するためでもあったでしょう。また774.incのメンバーに対しても、グループの垣根を越えてどんどんやっていいんだよ、と範を示したのではと想像します。

因幡はねると周防パトラの歴史的「和解」

そしてもう一つは、周防パトラのチャンネルで行われた、因幡はねるとの対談です。

ハニーストラップがデビューしたとき、因幡はねるは「公式アンチ」だと宣言し、敵対していました。特に周防パトラとは1対1でのコラボもせず、しばらくTwitterフォローもしていなかったくらいでした。最近は緩んではいましたが、この対談ではもはや対立する空気は完全に無くなって、「プロレス」を打ち合わせてやっていたことを暴露して、プロレスが完全に終わったことを印象付けました。

もうプロレスしないのか、とちょっと淋しい気もしましたが、話を聞いていて、今の二人の立場ではもうプロレスはできないなとわかりました。大所帯になった774inc.を引っ張る立場だからです。対談では、774inc.を今後どう盛り上げて行くかという話をしていました。また、後輩たちからよく相談を受けるという話をしていました。

774inc.にはいろんなタイプのVTuberがいますが、主に企画物や実況などエンターテイメント系に強いタイプと、音楽や動画などクリエイト系に強いタイプがいて、因幡はねるは前者の、周防パトラは後者のトップでしょう。この二人がツートップとして774inc.を引っ張っていくということを、印象づけた対談でした。

774inc.歌謡祭

そして何といっても重要な放送は、もちろんこれですね。龍ヶ崎リン主催による、774inc.歌謡祭です。

見ての通り、774inc.の全グループから多くのVTuberが参加し、5時間半にわたって行うという大きなイベントでした。これを、デビューして1ヵ月ちょっとの龍ヶ崎リン(シュガーリリック)が企画進行したというのが凄いところです。

彼女が終了後に個人配信で裏話をしていましたが、デビュー以来、いろいろ悩んでいたそうなんですね、自分はこのやり方でいいのかと。周防パトラや因幡はねるに相談していたけれど、自分が楽しんでやれて、さらに774inc.のためになることをやりたいと思い、この企画について相談したら、「やろう」と秒で返事が来たという話をしていました。

全体にみんな、企画に協力して気合の入った配信をしていましたが、特に周防パトラの協力が印象的でしたね。カラオケだけでなく、ギター弾き語りを2曲披露して、そのうちの1曲は初出の「ハニストメドレー」でした。そもそも弾き語りは自身の配信でも珍しく、記念配信などでたまにやるくらいなので、練習とか大変なのでしょう。そして新作のハニストメドレーはとっておきだったはずで、それをここで出すというのはすごい協力だなぁと。

因幡はねるは、オーディオ系の設定をなにかミスっていて、途中まで音量バランスが少しおかしかったのですが、それを悔やんで蕁麻疹がとまらないとツイートしていて、この企画はちょっと手伝うとかでなく、真剣だったのだなと思いました。自身のGW企画もたくさんある中で大変だったと思いますが。

全体に、それぞれの人が個性(強み)を発揮してすごく良かったですね。人もたくさん来ていたし、評判も上々で、Twitterトレンドも2位まで行ったそうで、大成功だったのではないでしょうか。

これまでも774inc.コラボ的なものが少しはありました。VakaTuber凸待ち企画で、どちらも因幡はねるの主催です。今回が違うのは、大勢が協力して作り上げたということと、若手が主催してそれを先輩たちがバックアップしたということです。774inc.のチームとしてのまとまりが初めて発揮されたと言って良いでしょう。これが成功したのは大きいと思えます。

あとここまで大規模では無いですが、島村シャルロット主催の「774inc.ドラフト会議」もあり、これもすごく面白い企画でした。774inc.の各グループやメンバーの紹介の意義もありました。こういう軽めのノリ(この企画の準備自体は大変そうでしたが)のグループ横断企画もいいなと思えます。

チームであることの意味

前述の対談など見ていて、もうひとつ印象的だったことがあって、「自分は他の人に比べて弱みが多い」と悩みを抱えている人が多いことですね。因幡はねると周防パトラは、後輩からよくそういう相談を受けるようです。またその二人でさえそうで、お互いに、相手の才能が羨ましい、引け目を感じるという話をしていました。

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企業でもそうですが、大勢が集まったチームの良さというのは、個々の弱みを補えることなんですね。少し前に流行った、マネージメント論のピーター・ドラッカーは、「人が何かを成し遂げるのは”強み”によってのみであって、弱みはいくら強化しても平凡になることさえ疑しい」と言ってます。弱みがあるなら、それを自分で何とかするより、他の人が補えるなら補ったほうがずっと効率的です。価値を生み出すのはあくまで"強み"であって、そっちにフォーカスするのが大事。一般論ではありますが。

また、「”強み”というのは、その人が当然できることなので案外気づかない」と。当たり前にできるからこそ強みなのです。リーダーシップについてもドラッカーはいろいろ言っていますが、要はメンバーの強みに気づいてあげて、全体の方向性を示すのがリーダーの仕事で、あとは個々のメンバーが考えて動くのが、よいチームということです。

774inc.はこれまでは、あまりまとまりが無かったけれど、今後よいチーム、よい箱になりそうだと、見ていた人はみんな思ったのではないでしょうか。エンターテイメント系からクリエイト系まで、幅広い強みを持ったメンバーがいるという774inc.の強みも生かせるでしょうし、これから楽しみですね。

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