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Vおうちフェス2と、VTuber音楽のこれから

5月8日に、花奏かのんちゃんのYouTubeチャンネルで「Vおうちフェス2」が開催されました。おうちにいながら音楽で繋がろうというコンセプトで、Vtuber約70組のオリジナル曲のMVを一挙に紹介するというものです。昨年の第1回もちらちら見てはいたのですが、今年はさらに素晴らしいMVが多くて、5時間以上の番組ですが釘付けになってしまいました。

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今どきのVTuber音楽すごいな!と感銘を受けたので、まずは特にスキな曲(MV)をいくつか紹介し、最後にVの音楽について思うところを書いてみます。かなり厳選しており、もっと山ほど良い曲はありますが、これは私が実際にヘビロテしているもので、個人的な趣味であり今の気分に合っているものと言えます。曲タイトルのリンクはVおうちフェス2へのリンク(タイムスタンプ付き)で、埋め込み動画は各VTuberのチャンネルの動画です。


幾つもの明日 / 叶 秘蜜 (Himitsu Kano) 

新人VTuber部門で紹介されました。まず声がとても良いですね。VTuberは可愛い声の人は多いですが、芯があって力強く、かつ女性らしいツヤのある歌声は貴重だと思えます。ロック系に合うでしょう。

曲は作曲VTuberのミディさんによるもの。VTuberに曲を提供する作家のハシリと言える方で、さすがに良い曲です。新人なのにミディさんに作ってもらうの凄いなと思いましたが、調べたらREALITYの楽曲提供イベントで1位を獲ったのですね。MVもハイクオリティで、やはりVTuberが実際に振り付けたり演技するタイプのMVは良いです。作るのは大変だと思いますが。

TOKI NICE DAY! / 越後屋ときな

第1部(2020年デビュー)で紹介されたMV。去年の7月デビューだそうですね。まずMVに目を引かれました。ガンガン踊っていて、指先まできれいに動いています。演出もポップでとてもよい。

かわいい系の歌声ですが、耳にひっかかるところもあってクセになります。「TOKI NICE DAY!」って歌うところの感じとか好きですね。楽曲は EasyPop/BETTI さんによるもの。ボカロPでもありハッピーシンセサイザーが有名ですね。シンプルなメロディーですが不思議と耳に残ります。

I forget / pomme

ここから第2部(2019年デビューの方)です。これはクオリティで殴りに来ていますね。楽曲は殿堂入りボカロPでありプロミュージシャンでもあるゆよゆっぺさん提供。映像もプロのイラストレーターとグラフィックデザイナーによるもの。

ボーカルも品が良いというか、クオリティが高い感じがします。アンニュイな感じを出していますが丁寧な歌い方で。これらがあいまって完成された世界を作っています。

コスチューム / ユプシロン

なんていい曲なんだ!というのが第一印象。作曲はカッパナッツさんという方で、新人ボカロPさんのようです。作詞はユプシロンさん本人によるもの。追い立てられるような疾走感のある曲で、「このままでいいのか?」と問いかけてくるような歌詞と相まって心が動かされます。

歌も凄くて、いろんな表現を駆使して魂を込めて歌っている感じがします。演奏やMIXも生っぽい感じで良い。MVも雰囲気がある。素晴らしい作品ですね。

サディスティック・フライデー / らびあんろーず

声が好きですねー。ちょっと鼻にかかった甘い声と、多用するファルセット(裏声)に独特な味があって。音程がややゆるいところがあり、補正もできるはずだけど敢えて味として残してるのでしょう。実際クセになる歌い方です。

作曲は作曲家でDJのEmoCosineさん、作詞はご本人によるもの。かわいくて少しアンニュイな、声にぴったり合った良い曲です。

ヒノコ / 焔魔るり【Music Video】

バトルものアニメの主題歌のようなかっこいい曲。作曲はVTuberでもあるぼっちぼろまるさんで、Vおうちフェス2にも参加されてトリを飾っていました。作詞はご本人によるものです。

こういうドラマチックな曲は声に力が無いと負けてしまいますが、素晴らしい歌声ですよね。高音まで綺麗に伸びて細くならない。このまま劇場アニメとかの主題歌に使われてもクオリティ的に何の問題もないと思えます。映像も歌の世界観を表現していて、イラストがよいですね。

Sweet Bubble / 式部めぐり

ここから「昨年の新人部門」です。今回紹介した曲は基本的にVおうちフェス2のおかげで出会えた曲なのですが、式部めぐりさんについては前からよく知っています。でもひいき目なしに良いMVですね。作曲はDJ・トラックメイカーであるTEMPLIMEさん、作詞はTEMPLIMEさんと式部めぐりさん。AVメーカーのラディウスとのタイアップで、そのせいかシングル曲って感じのキャッチーな曲です。よく聞くと細かい音がたくさん現れてはバブルのようにはじけます。

式部めぐりさんはいろんな歌い方ができるのですが、ここでは甘いボイスを生かして可愛い感じですね。けっこう音域の広い曲だと思うのですが声の音域も広いので軽々と歌っています。歌だけではなくVTuberとしていろんな活動をされており、以前に記事を書いたのでご興味があればどうぞ。

Sifar(シファル) / Naked

ライブで盛り上がること間違い無しな曲で、ライブ風のMVがぴったりでしょう。曲はトラックメイカーのKOHDさんの提供。ギターがかっこいいし、全体に音がとても良いですね。

このツイートによると、生バンドと同じステージに上がってライブなんてこともされているようで。バンドに負けない声で、生でもMVと遜色なくてすごいです。ライブに行きたいな!と思えますね。

だいあるのーと / 七草くりむ

第3部(2018年以前デビュー)で紹介されました。歌詞にあまり意味はなく、スキャットになるんですかね。重なり合う囁き声とチップチューンの電子音があいまって、脳に変な反応を引き起こします。

ここまで曲は提供された方が多かったですが、この方はトラックメイクから動画作成、さらにイラストまでほぼ自分でされているようです。クリエイター系VTuberですね。チャンネルを見ると「ASMR House」とされたシリーズがあり、チップチューン(昔のゲーム機風のサウンド)だけでなくいろんな音がありますね。ジャズっぽかったりラテンっぽかったり。トラックメイカーとしても才能豊かな方です。

VTuber音楽のこれから

私はVTuberリスナー歴はそこそこ長いですが、主に生配信を見ていて音楽系Vの方は横目で見るくらいだったので、以下に書くことはにわかっぽい意見かもしれないと先にお断りしておきます。

VTuberが最初にブームになったのは2018年前半ですが、この頃はまだオリジナル曲を歌うVTuberは少なかったと思えます。月ノ美兎さんが5月にclusterで"Moon!!"を歌いましたが、これはそもそもファンが作ったキャラソンでそれを本人が採用したものでした。VTuberがオリジナルソングをライブで歌った最初期のものかもしれません。その後、7月からキズナアイちゃんがオリジナル曲を9週連続でリリースしたり、10月に富士葵さんがメジャーデビューなど、VTuberがオリジナルを歌うことが珍しくなくなってきました。ただまだこのころは、比較的大手の方がやっていた印象です。

個人的に空気が変わったなと思ったのは花譜さんからですね。本格的にオリジナル曲を歌い始めたのは2019年の夏からですが、ボカロPがVTuberをプロデュースする初期のものではないでしょうか。もっと早い方もいたとは思いますが、花譜さんは多いに話題になりました。そのあたりから、ボカロPやトラックメイカーがVTuberに曲を提供したり、歌手活動をしたい方が歌い手ではなくVTuberデビューを選択したり、ということが盛んになった気がします。

今回私が選んだ「スキな曲」は2019年以降デビューの方がほとんどですし、配信全体としても第2部(2019年デビュー)のボリュームが一番多かったのですが、やはりそのあたりから、ガチで音楽をやるためにVを始めた個人の方が増えたのかな?と思えます。そしてその方々が今まさに脂がのった時期にあると。

でも「このMVすごいな」と思ってチャンネルを見に行くと、チャンネル登録者数が数千人だったりして「なんで?」と思うことが多いのですね。今回紹介した方はいずれも凄いですが、登録者が数千人から1万人台くらいの方が多いです。オリジナル曲中心だとはやり伸びにくいのでしょうか? ニコニコ動画のような、ジャンルでおすすめする仕組みもYouTubeには無いですし。もちろん個人で登録者1万人は凄いことではありますが、内容的にもっと多くの人に見られてもいいんじゃないかなと。

本格化して2年くらいと思えば、まだまだこれからなのでしょう。VTuberも当初は一部のオタク向けでしたが、ホロライブなどが一般向けにブレイクしたのはデビュー2年後くらいからです。VTuber音楽はこんなに素晴らしいので、一般に見つかるのは時間の問題ではないでしょうか。そうなったらいいなと。だから良い音楽は応援していきたいし、今回のVおうちフェスのような企画は素晴らしいと思います。

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