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個展タイトルの意味と、個展開催に向けて思うこと。

2022/4/7-10の期間、吉祥寺にあるギャラリーイロさんにて個展を開催いたします。

タイトルは"elämää."(エラマー)。

elämä(エラマ)とはフィンランド語で”生活、人生”という意味です。最後の”ä”は文法の話になるのですが、分格(ぶんかく)といって”~の一部分、動作が継続していること”を意味します。なので、タイトルの"elämää."は”生活の一部、人生の一部”という意味です。多くの人がわかる日本語でのタイトルにすることも考えたのですが、フィンランド語に10年間触れていて私にとってなくてはならない存在となっているフィンランド語から付けたいなぁ、という思いと、このelämäという単語以上に今の私の心境にしっくりくる言葉は見当たりませんでした。

なぜ、elämäという単語が今の私にしっくりくるかといいますと、前回イロさんにて1日限定の個展を2020年7月に開催以降、特に2022年に入ってからの様々な心の葛藤や経験を込められるからです。

まず、2020年7月の個展を振り返ります。

この個展は人生初めての個展でした。織りを本格的に始めてから作りためていたものと、我が家の保護犬めりちゃんを描いたグッズを持っていきました。当時は、まだ、織ってみたいと思う作品、ジャンルの一部にしか取り組めていませんでした。また、展示やイベント参加の経験がなかったので他にどういったタイプの作品が必要なのか、ということがまだ見えていませんでした。2020年7月の個展を通して、もっともっと機織りとして成長したいと思うとともに、次に個展を開催するときには私自身が表現したいもの、日本に伝えたいフィンランドの文化、そして織りの楽しさをさらに伝えられるように精一杯がんばろう、と思いました。

私がフィンランドに3カ月留学したときに、”これを織りたい!この文化を日本に伝えたい!”と思ったものがあります。それは"räsymatto"(ラシュマット)という裂き織りラグです。

フィンランドに行ったことのある方はどこかで見かけているかもしれません。私はフィンランド滞在時にはアパートを借ります。その際に、どこの家庭でもräsymattoを見かけました。廊下やリビング、寝室など数枚使用している家庭も多かったです。もちろん、私の留学していた学校にもありました。räsymattoには古布を使うことが多く、学校では使わなくなったシーツや家庭に眠っていた布を使用しました。リサイクルヤーンを用いることもあります。綿素材なことが多く、年間を通じて使えること、また、使わなくなった布を素材にすることで物を無駄にしない、という点に魅力を感じました。そこで初めての個展開催後、räsymattoを織り始めました。

ラグを含めて生成り色の糸以外は基本的にフィンランドの糸会社さんから輸入しています。留学から帰国後、自分自身の使いたい色、使いたい素材がなかなか日本国内では見つかりませんでした。なので表現したい色合い、肌触り、空間のためにフィンランドやノルウェーの素材を使用しています。

2021年になってから、柄のラグ”kuviomatto"(クビオマット)を色違いで織ったらかわいいだろうなぁ、と思うようになりました。ただ、kuviomattoは柄のラグなので織り組織がräsymattoより難しく、体力気力ともに必要とします。1枚を織りあげるのに時間もräsymattoよりかかるので挑戦することに少しためらう部分もありました。私にできるかなぁ、と。

↓フィンランドで滞在したアパートにあったラグ。

リーサのラグ②

そこで留学前にお世話になっていた織りの先生にメールやzoomで何度かやりとりをして、教えてもらいながら試行錯誤して私が織りたい柄に適した素材を選んでいきました。適した素材に出会うまで1カ月ほどかかりました。織ってみては、なんか違う・・・、柄がきれいに出ない、など様々な課題がありました。

räsymattoは平織といってすごくシンプルな織りなので頑張れば1週間、長くて2週間あれば完成できます。ただ、kuviomattoは少し組織が複雑なのと柄がきちんと出ているか確認をしながら織り進めるので時間がかかりますし、正直精神的・体力的な疲労もあります。なので私の場合、1枚仕上げるのに1カ月はかかります。個展のためにkuviomattoをある程度本数を作りたいと思うと・・・頑張らねば!と思いました。

↓räsymatto(平織)

平織組織図

↓kuviomatto

kuviomatto組織図

そこに問題が発生しました。

もともと人混みが苦手でスポーツジムやライブ以外ほとんど外出しない私なのですが、コロナ禍でさらに人混みが苦手になっていました。ジムも時短営業になり、以前は混まなかった時間帯に人が集中してしまったりする中で少しずつ自分に違和感を感じるようになりなした。大好きだったライブに行っても人の中にいることが不安で落ち着かず、半泣きで帰宅したこともありました。そして外出することへの不安感が強くなり、日常生活に支障が出てきて、織りにも思うように取り組めなくなっていました。そんな自分が悔しくてたまりませんでした。

以前から人混みの中にいると、心臓がトクトクしてしまったり、居ても立っても居られなくなったりすることがありました。自分に違和感を感じること数か月。ある日、ジムでその症状がひどく出てしまい苦しく、泣きながら帰宅しました。”あぁ、何かよくわからないけど病院行かないとダメになる・・・”と。数日後、定期的に通院している病院で診察を受け治療を開始しました。結論からいうと、社会不安障害、いわゆる対人恐怖症でした。

個展を開催したい。その目標を持って日々制作していた(体調によっては思うように取り組めない日もありましたが)ので、どうしよう、と不安になりました。社会不安の症状が強く出ている状況の中で、人前に出る、在廊ということは到底考えられませんでした。でも、個展の目標は諦めたくなかったのでまずは、出ている症状を落ち着かせ、日常生活ができるところまで持っていくことを目標としました。

ただ、そうすぐに解決するものでもなく一進一退、あるいは一進四退ぐらいするときもあり、もどかしい日々でした。個展の時期を決めたいなぁ、でもなぁ・・・、まだ無理そうだなぁ・・・、と悶々としていました。

そんなとき、イロさんで気になる展示、好きなものを描いていただける企画がありました。それが、もちがわさんの個展でした。このときの私はまだ初対面の方とお会いするのは心臓バクバクで気が重い部分がかなりあったのですが、もちがわさんのイラストはとてもあたたかみがあって、めりちゃんを描いてほしいなぁ、という思いが勝って重い腰をあげて久しぶりにイロに向かいました。

私のめりちゃんについてのお話をしながら絵を描いていただきました。私のめりちゃんへの溢れる思いをたっぷりお話しさせていただきました。それを穏やかに聞きながら、めりちゃんを描いてくれるもちがわさんに癒された時間でした。ギャラリーの空間がとても素敵で落ち着くもので、そろそろ一歩踏み出さないと、と思うきっかけになった日でした。まだ自分自身の状態に不安は多くありましたが、数日後、個展の時期を決めてオーナーの方に申し込みのメールを送りました。

そういった一連の出来事があり、良いときも辛いときも、織りは私の生活の一部だし、人生の一部であり、これからも続けていきたいことであると強く実感しました。そして想いを込めて作った作品が誰かの生活の一部となって暮らしに寄り添い、彩るものになってほしい、という意味を込めて"elämää."というタイトルをつけました。

↓人生の相棒である、TOIKA社の織り機。

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つらい経験も人生の一部で、これからの私の人生の一部になっていくもので、その中での人との出会いが救いとなり前へ進む力となると実感した日々でした。特にイロを通して出会った作家仲間、私が作家活動を始めてから出会った作家の方々との出会いは刺激をもらったり元気をもらったりと日々の制作活動を支えてもらっているなぁ、と思っています。

今回の個展では手織りラグの他に手織りの綿麻製品、シルクスクリーン作品、保護犬めりちゃんの絵本、めりちゃんのイラストを用いたグッズを持っていく予定です。

4日間の個展はドキドキですが、この機会・会場を与えてくださったギャラリーオーナーの前田さん、作家友達、友人、家族、応援してくださっている方々、そしてめりちゃんに感謝の心を持って良き個展にできるよう、頑張ります!

緊張するだろうなぁ~(;´・ω・)💦💦舌が回らなかったり、テンパったりいろいろあるかもですが。。ずっとあたためていた作品を発表できる嬉しさと、在廊のドキドキと共にお待ちしています!ギャラリーに入ることって、ちょっと緊張するものですが、ゆるっとお待ちしていますのでふらっとお気軽にお入りください!

テキスタイルを学べる大学が減りつつある現状ですが、少しでもテキスタイル、織り、シルクスクリーンに興味を持っていただけるきっかけになれば嬉しいです。

↓愛しの、保護犬めりちゃん。

めったん

https://1-6.jp/elamaa


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