パリ24時間(7)異端審問者の午後
急に風が冷たくなったような気がした。時間はそれでも午後4時をまわったばかりだ。
ルチアが去ったル・ドルシェステルのテラスで、オルガは書類鞄の底から四つに折られた一枚の紙を引き摺り出した。それは、今年の工芸学校(アールゼメチエ)の奨学金候補者のリストだった。2週間前、審査員のオルガにも通達されたのだが、オルガは候補者をざっと眺めて、そのまま放置していたのだった。審査などないことはわかっていた。今年の合格者はエコールノルマル・サン・クルー校出身のイザベル・ラトゥールになるはず