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美しく深い森

いつものように目を覚ますと何処かの川の真ん中に立っていた。
辺りを見渡すと生い茂る深い森。
私のすぐそばには生命力溢れる大きく白い石が転がっている。
透き通る美しい水が私の足の上を流れて行く。
木漏れ日の様子から見て、今は朝のようだ。
具体的に何時なのかはわからない。
身に付けている洋服は古代の人々が着ていたようなクリーム色のワンピース。
自分はなぜここにいるのか考えようとしても、
見たことがない程に美しい木漏れ日が思考を止めてくる。
しばらくその木漏れ日を見つめていると、
木漏れ日から三日月と星が入り込んできた。そのまま夜が世界を覆う。
気温は急激に下り、川の水温も足を浸けていられないほど冷たくなった。
状況が掴めないまま寒さに震えていると、森の奥で横たわる1匹のウサギが見えた。
普段の世界では見たことがない色をしていた。
いや、私の頭の中から何色かの記憶が消えているという可能性もありうる。
よくわからない場面で妙に冷静に考えてしまっている自分に気づいて
我に返り、私はウサギに恐る恐る近づき、様子を伺った。
近づいても動く様子はないので、眠っているか、もう死んでしまっているのかどちらかだろう。

それにしても、こんな深い森であるにも関わらず、
生き物が自分とこの目の前に横たわるウサギしか見当たらない。
そして改めて、目が覚めてから今までのこの状況を不思議に思っていると、
ふと息苦しさを感じた。考えすぎと慣れない状況で呼吸が浅くなっていたのかと思い、息を吸い込んでみたが違った。明らかに急激な速度で酸素が薄くなっていっている。気付けば座り込んでしまっていた。
なぜか自分の心配よりも、あのウサギはどうなったのか気になり、
朦朧とする意識の中でウサギが横たわっていた場所に目をやった。

そのウサギは横たわっているどころか、人間のように二本の足で立っていた。
何かを伝えたそうな表情で、どこかで見たことがある瞳でこちらを見つめていた。
その瞳の持ち主が誰なのか気付いた瞬間、私は意識を失った。

目が覚めると、私はどこかの病院にいた。
意識が徐々にはっきりしてくると同時に頭の鈍い痛みに気付いた。
包帯が巻かれている。あれは夢だったのだろうか。
足は問題なく動くようだったので顔を洗おうと洗面所に向かった。

水で顔を洗い、顔を拭き鏡に目をやると、
あのウサギと同じ瞳をした人物が映っていた。



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