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お金を払ってでも子供が欲しい、顕微授精の挑戦

先日、「お金払ってでも子供生みたくない」というはてな匿名ダイアリーを読んだ。

投稿主の言ってることは、今でこそ同意することはないが、共感することは多かった。なぜなら、かつて自分自身も子どもいらないと思っていたから。


「子供ができたら2人の時間少なくなるし、それなら2人っきりで色んなところに行ったり、過ごしたりしたい。」
「自分の持病が子供に遺伝したり、その良くない遺伝子によって先天性疾患があれば親として向き合えるか分からない。」

と、以前は友人や家族に何度も伝えていた。
子供を嫌いなわけではないのだけれど、自分が親になる覚悟はもちろん、親になるつもりもさらさらなかった。1年くらい前まではそういうふうにずっと思い続けていた。

けれども、今はお金を払ってでも子供を授かろうとしている。2020年7月26日(日)、私たちは初めて顕微授精した胚盤胞移植にチャレンジした。


相手を通して子供を考える

「〇〇(自分)は彼女のことが大好きなんでしょ?幸せにしたいと思っているんだよね?それなら〇〇は子供いらないかもしれないけど、彼女を通して一度考えてみたら?」

子供を授かりたい(親になる)ことを考え始めたのは、この一言がきっかけだった。

それまでは妻を通して子供について考えたことがなかった。なぜか自分個人の問題として捉えていたのだった。

実際、妻を通して子供を考えるようになると、子供を授かることへの考え方は徐々に変わっていった。
何よりも、そんな自分を見てか、妻が今後の家族や子供について真剣に議論してくれるようになった。テレビのニュースやネットの話題について「それがもし自分たちの子供に起きたとしたら?」という話題も増え、妻の考えや気持ちを知る機会も増えた。それは自分の考えや気持ちを整理するのにもすごく役立った。

これまで個人的な問題/考えとして捉えていたものが、”私たち“2人の考えとして子供と向き合ってみると、全然違う視点や将来像が見えるようになった。というか、妻と夢や将来について語り合うことが増えたようにも思う。

そして、何度もコミュニケーションを何度も重ねた上で、私たちは子供を授かることに決めた。最後の最後まで悩んだが、

「女として産まれたからには、子供を産み育てるには責務だとずっと思っていたから後悔したくない。」

という妻の一言が決め手だった。そうして私たちは妊活を始めることになった。


望んでも叶わないかもしれない

当然ながら子供は授かりたくても授かれるものではないので、まずはタイミングから取り始めることになった。妊活は本当の意味で夫婦初めての共同作業と言えるかもしれない、とこのとき思った。

約1年弱、タイミングを取り続けたが、子供を授かれる気配は微塵もなかった。
そこでAIH(人工授精)にステップアップすることに決めた。

だが、最初のAIHで判明したのは自分の種が一匹も存在していないことだった。後で再検査をすると全く0というわけではなかったので安心したが、量が少なく質の悪い種なので自然妊娠は難しいだろうということだった。

「俺めっちゃアホやん、、、」と思った。
だって子供が必要かそうでないか考える以前の問題で、そもそも自分に生殖能力がなかったんだから。

同時に妻に対してめちゃくちゃ申し訳ないと思った。1年を無駄に使ってしまったから。

「子供が欲しいか欲しくないか言う前に、そもそもお前にその能力はあるのか知ってからその話をしろよ」
「妊娠のメカニズムさえ知らないやつが、いる/いらないとか吠えてんじゃねーよ」と過去の自分に1万回言ってやりたい。


不妊治療は妻の頑張り99.999%

夫婦で相談した結果、AIHからIVF(体外受精)にステップアップすることにした。専門のレディースクリニックを受診したら「顕微授精」を行うことになった。ちなみに体外受精には大きく分けて「ふりかけ法」と「顕微授精」がある。

「顕微授精」は簡単にいうと採精/採卵後に手作業で受精卵を作って冷凍保存し、排卵周期に合わせて着床をアシストする手法なのだが、実際はそんなに簡単なものではないことを、妻に起きた2ヶ月間で知ることになった。

・数日おきの注射
・毎日の投薬
・定期的な通院
・職場の勤務時間等の調整
・採卵時の全身麻酔

仕事の課題やストレスも抱えながらの治療は明らかに大変だった。
費用も2ヶ月弱で100万円を超えるものだったし、心身ともに過大なストレスがかかっていたと思う。

夫である自分に100%原因があるのに、不妊治療は全て妻が負担することになる。このことを知っていたら、さんざん待たせた挙げ句に子供ほしいとか気安く言えたもんじゃないなと思った。

自分ができることは家事とか、家庭を明るくするよう努めるとか、せめて自分の種の品質が向上するようにサプリメントを摂取したり、規則正しい生活を送るとか限られる。

妊娠や出産となれば、女性にとって言葉どおり命がけになる。夫婦の共同作業と言ったけれど、負担もリスクも男女で全くと言っていいほど釣り合わない。
しかも歳を重ねれば重ねるほど、その負担やリスクは大きくなる。

子供を授かりたい、子供はいなくてもいい、いろんな価値観はあっていいと思うけど、せめて妊娠、出産のことをもっと理解してから考えを確立させるべきだと痛感した。特に男性は。


今は妻の喜ぶ顔が見たい、それだけ

正直、どんなにお金を払っても子供を授かれるかどうかは分からない。でも、こんなにも頑張ってる妻を目の当たりにすると、どうにかこうにか新しい命が生まれて欲しいと願う。

苦労が報われて、妻の喜ぶ顔を見られるなら、何でも向き合える愛おしいに違いない。

自分の病気が遺伝したらとか、2人っきりの時間がなくなっちゃうとか、育児は大変そうとか、そんなことは心身削ってる妻と比べたらどうでも良くて、そうなったときにちゃんと向き合う覚悟だけしておこうと思う。

今はただただ、妻の頑張りが報われることを祈っている。

子授け祈祷を水天宮にて。

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