わたしが美容院を苦手な9つの理由

わたしは、美容院が苦手だ。

ここ数年は同じ美容師さんに担当してもらっているおかげで、段々と苦手意識が薄れていたが、最近その方が産休・育休に入られたため、やむなく美容院ジプシーとなり、避けていた美容院のあれやこれやと向き合わざるを得なくなった。

わたしが美容院を苦手な理由も、美容師の方にしたら「何をそんなことで」「こちらも理由があってそうしているんだ」と怒られそうなことばかりだが、「こんな人間もいるんだな」という温かい目で見ていただきたい。

1.誰を指名すればいいか分からない

初めての美容院を予約するとき、ホットペッパーやらお店のWebサイトやらをくまなく確認し、気さくそうな人なのか、雰囲気が自分に近いかチェックしているのだが、往々にしてネット上と直接会った時とで印象が異なる。
優しそうな人だな、と思って予約し、当日会ってみたら同じ美容院の同僚の悪口をこれでもかと聞かされ、げんなりしたトラウマから来ている。

2.何を着ていけばいいか分からない

美容院とかいう、おしゃれな人がおしゃれしてる空間に、何を着ていけば浮かないで済むのか分からない。
「しっくりくるヘアスタイルが分かりやすいように、普段着でお越しください!」と丁寧に案内している美容院もあるが、声を大にして言いたい、普段着がパジャマかユニクロの2択しかない人間はどうすればいいんですか!!!
蛇足だが、美容院と同じくらいわたしは服屋に行くのも苦手だ。

3.何分前に到着すればいいか分からない

あまりにも早く到着しては前のお客さんにも美容師さんにも迷惑だろうとは思いながら、重役出勤よろしく遅刻していくこともできず、結局何分前に到着すればよいのか分からず美容院の周りをウロウロ散歩して数十秒単位で調整しながら、予約時間ぴったりに入店している。
以前、美容院のそばのコインパーキングの隅でTwitterを見ながら時間を潰しているのを、たまたま飲み物を買いに出かけた美容師さんに目撃され、憤死するかと思った。

4.何の雑誌を出されるかで、どんな人間と思われているのか分かってしまうのが怖い

10代のころ、初めて行った美容院でoggiとオレンジページを出された。どんな美容師さんだったか、どんな会話をしたのかも思い出せないけれど、恥ずかしさで今すぐ帰ってしまいたかった記憶だけは、いまだに忘れられない(もちろん、oggiやオレンジページには何も罪はなくて、ただ明らかに当時のわたしはそれらのターゲット層ではなかった)。
歳をとってから、ファッション誌以外にもさまざな情報誌を読むようになり、どんな雑誌を出されてもある程度順応できるようになったけれど、FUDGEやOZマガジンがあるとホッとする。

5.ヘアスタイルのオーダーの仕方が分からない

一応、ホットペッパーやらインスタやらを事前に確認し、頭の中で仕上がりをイメージしていくのだが、モデルさんの写真を見せるのが気恥ずかしく、結局しどろもどろになりながら自分の言葉で説明しては仕上がりがイメージと違う、ということを何度も経験した。
今はおずおずとモデルさんの写真を見せつつ、「こんな感じで…」ともじもじオーダーしているが、髪質やら毛量やら、条件から無理難題言って困らせてはいないかと心配になってしまう。

6.ケープが暑い

普段から汗っかきなのに加え、美容院に対する緊張相まって、冬場でも汗をかいてしまう。施術の際に着用するケープや首元のタオルで、ケープの中は熱気がこもるし、迷惑になってはいけないと思えば思うほど、汗をかいてしまう悪循環。

7.シャンプーで正直にオーダーを伝えられない

人にやってもらうシャンプーは贅沢だと思うが、往々にして力が控えめでむず痒くなってしまう。
力加減いかがですか?と聞かれても、「頭皮が剥けるんじゃないかってくらい、強くシャンプーしてください!!!」ということもできず、水はね防止のためかけられたガーゼの下で「ちょうどいいです〜」と曖昧に微笑むことしかできない。
お湯加減を聞かれ、正直に「火傷ぎりぎりぐらい熱くしてください!!!」ということもできず、文字通りぬるま湯で妥協しては、今日もオーダーできなかった…と後悔。
先日行った美容院は、お湯加減を尋ねることなく、火傷と快楽のちょうど間、絶妙な温度だった。野暮な質問に頼らず、自分の手のひらの感覚を信じるプロの姿勢(?)に思わず心の中で拍手を贈った。

8.ドライヤー中の会話が苦手

正確にいうと、ドライヤーの最中の会話が苦手、である。耳元で鳴り響くドライヤーの音で、会話の4割くらいは聞こえないので、曖昧な微笑みと想像力で美容師の方とコミュニケーションをとることになるが、その心地悪さにいつまでたっても慣れない。いっそスマホに集中してますんで〜という態度を貫けばよいのだが、シャンプー終わりには新しいヘアカラーの出来について何かコメントしなくてはいけないような気がして、そこから会話が始まってしまい、ドライヤー中も会話せざるを得なくなる。

9.退店時のお見送りがこそばゆい

大抵の美容院は、施術後、退店を見送ってくれるが、途中で振り返って会釈の1つでもした方がいいのか、それとも颯爽と去るのがよいのか分からない。振り返ってまだ美容師さんが立っていたら気まずいし、でも何もしないで立ち去るのも印象が悪いのでは…と気になって、おずおず振り返る瞬間の心地悪さと言ったらない。


こうやって書き起こすことで、自分の中にある苦手意識と向き合ってみたけれど、おそらくその原因は単に美容院やそこでのコミュニケーションが苦手というだけでなく、美容院に行くことによって明らかになる自尊心の低さに由来するものだと思う。
美容院に行くことは産後の貴重なリフレッシュだったし、新しい自分に出会えた瞬間には勇気を出して出かけてよかったと思う。

立ち仕事は体力を使うだろうし、美容師に求められる他人の頭の中にあるイメージを形にする力、トレンドをキャッチする情報収集力も、自分にはまったくないものであるから、美容師の方には尊敬の念しかない。

どうか美容師の皆さん、わたしのような人間が美容院に行くこと、お許しください。
「そんなに美容院が苦手なら、家でバリカン使ってセルフ散髪でもしてろ!」と言わず、笑顔でわたしのしどろもどろなオーダーを聞いてくれる、美容師の皆さん、いつもありがとうございます。
いつか堂々と「美容院に行くのが好き!」と言える日が来ることを願って。

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