二階から目薬

深夜になると、右隣の部屋から水滴が水面に落ちるような「ポチャン、ポチャン」という音が聞こえるようになる。

その音は毎日大体1時間くらい続いて、いつも最後には何か叫んでいるような声がしておわるのだ。

確か隣の部屋の住人はかなりおとなしそう、というか悪く言えば引きこもりのような感じの人で一体何をしているのか疑問に思いつつも、眠れないほどの騒音ではないので特に何か苦情を伝えたりはしないまま過ごしていた。

ある日僕がゴミ出しにアパートの裏に出ると、たまに見かける愛想の良い清潔感のある男性がゴミ出しをしていて、「こんにちは」と挨拶をしてきた。

「こんにちは」と挨拶を返して、彼の出したゴミ袋を何気なくみる。

すると半透明の大きな袋に小さな目薬のカラがみっちりと詰まっていた。

つい驚いた表情をしていると、彼は少し照れくさそうに「あ、僕が使ってるわけではなくて…つ、ついゴミ出し忘れてたまってしまってですね…」と何か言い訳のようなようくわからないことを言ってそそくさと僕の部屋の右斜め上の部屋に帰って行った。

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