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才能の活かし方を考える【感想】ダークサイドミステリー「侵入率100%!ひとりで世界に挑んだ男 〜伝説の天才ハッカー・アイスマン〜」

侵入率100%を誇る伝説のハッカー「アイスマン」(本名はマックス・バトラー)の物語だ。彼は、クレジットカードの個人情報を売買する闇サイトの世界で「帝王」となった。しかし、2007年にFBIに逮捕され13年の実刑に服役中だ(来年出所予定)。

彼は若きころは、FBIと共に悪のハッカーからウェブサイトを守る職務を遂行していた。そんな彼が、なぜダークサイドに堕ち「アイスマン」になったのか。そして、なぜ逮捕されたのか?特殊な才能を持つ人は、その才能ゆえに身を亡ぼすかもしれないと感じさせられた。

自分の能力を試したいという飽くなき欲求

マックス・バトラーは1972年生まれ。コンピュータ店を経営する家庭で生まれ、すでに8歳でプログラミングをマスター。10代の頃には多くのサイトへのハッキングの面白さに目覚めていた。ハッキングは、簡単に言うと侵入したいサーバーのセキュリティ上のミスを見つけて、そこをひたすら攻撃するということだ。しかし、普通の人にはこれはできない。

マックスは20時間以上もキーボードを打ち続け、いくつもの文字列を打ち込んでは脆弱性を探し続けるのだ。この仕事中、マックスはほとんど疲れない。まるでゾーンに入ったように集中力がマシ、好奇心の塊になったかのように、難題に挑み続けるのだ。守りが固ければ固いほどマックスは燃える。

この才能を見抜いたFBIは、20代のマックスをスカウトし、クラッカー(悪意のあるハッカー)からウェブサイトを守る特殊な職務に就かせた。一時期はマックスも自分の才能を正しく使えることに満足していた。しかし、ある事件をきっかけに、世界で最も侵入難易度の高いサーバー(軍・政府)へのハッキングを自ら行って逮捕されることになる。

FBIに認められてハッキングのスキルを活かせること、並のハッカーであれば十分に承認欲求が満たされるだろう。しかし、マックスは、それよりも、自分しかできない難易度の高いサーバーにハッキングする冒険を選んだ。自分の能力を試したいという欲求は、FBIに認められる欲求よりも強力なものだったのだ。そして、出所後も、彼のこの欲求は収まることを知らなかった。

闇サイト界の帝王になる

生活のために彼は闇の世界に身を転じることになる。クレジットカードの個人情報を盗み、それを悪用するカード詐欺師をターゲットにハッキングを繰り返すようになった。詐欺師であれば被害を受けても警察には駆け込めないからだ。やがて、その情報を元手に荒稼ぎするようになる。
やがて、クレジットカード売買の闇サイトを立ち上げ「アイスマン」と名乗るようになる。マックスはお金にはほとんど関心を持たなかったが、ネット世界の中で第一のハッカーであり続けることには異様な執着心があった。

ネットの書き込みで「アイスマンはスキルがない」と書かれているのを見た彼は、同業者の闇サイトをハッキングして、そのサイト群をつぶすという荒業で、自分のハッカーとしての才能を証明した。マックスはわずか2日間で、同業者でライバルだった闇サイトから顧客データを抜き去って、サイトを消滅させた。闇の社会での出来事とはいえ、それは新聞で報道されるような大事件になった。

やがて「アイスマン」は「闇の帝王」と呼ばれるようになった。

しかし、そんな彼も、やがてFBIのおとり捜査官や、当局者の仕掛け人たちの罠にはまり逮捕されることになる。ひたすらに、彼は自分の能力を世に知らしめようとし続けたのだった。マックスを突き動かすものが金銭的な欲求のみだったら、どこかでストップしていたかもしれない。しかし、自分の能力を試したいという欲求は、マックスにとって、どんな法律よりも優先されるものだったのだ。

自分の才能を何のために使うのか

この人、ある種、求道者的な特性もあるけど、完全に使い方を誤っている。まさにダークサイドに堕ちた天才だ。マックスにとって、難易度の高いサーバーに挑んで侵入したいという欲求は、他の何よりも優先されていた。それが自分の力を示すことだからだ。

多かれ少なかれ、天才と呼ばれる人たちは、常人をはるかに超える集中力と好奇心・止まることがない熱意で偉大な成果を残してきた。しかし、その「動機」は、とても大切だ。自分のために、自分の才能を使うことは、人を幸せにしない。自分も満足することはないだろう。いくら素晴らしい成果をあげても、それは誰一人笑顔にすることができないからだ。

自分の持つ才能は、資産のようなものだ。それを何かと交換して初めて意味がある。マックスが、自分の才能を世に証明し続けて、得たのは「アイスマン」「闇の帝王」という誇り高き?名だけだ。(もしかしたらそれで満足かもしれないけど)。

もし、彼が、その才能を、誰かの「笑顔」と交換する道を選んだらどうだっただろう。本当に大切な人の「笑顔」を見るために、その才能を使ったとしたら・・・彼の人生は180度変わっていただろうと考えた。

マックスに限らず、人は自分の才能を「どのように」使うかだけではなく「誰のために」使うかが、とっても大事なことだと感じる今日この頃。私にはマックスのような才能はないけれど、自分の貴重な時間やエネルギーを、いったい何のために、誰のために使っているのだろうかと、日々問いかけるようにしている。

かっこよく言えばね。

そんなことを感じさせられるマックスの半生だった。出所後の彼が、本当に大事なものに気づいていることを願いたい。(なんとなく復讐に燃えている気もするけど・・・)

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大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq