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できていること(ブライト・スポット)を認め、確実に変化をもたらす方法。

問題を数え上げれば、キリがない。自分自身の生活だって問題の塊のようなものだ。ひとつひとつの問題は、別の問題と複雑に絡み合っていて、それを解きほぐすのは至難の業だ。「問題に取り組む」のは、言うほど簡単なことではない。そこで、発想の転換が必要だ。

「できていないこと」、つまり「問題」を見るのではなく、そのなかでも「できていること」に注目することで、自分に、世界に働きかけて変化をもたらしていくことは可能だ。チップ&ダン・ハースの「スイッチ」から、とても印象的な事例を紹介し、応用する方法を探ってみたい。

ブライト・スポットを見つける

どれほど複雑な問題を前にした場合でも、基本的なことに立ち返れば、必ず解決できる。それは「できていること」に注目することだ。それをブライト・スポットという。
印象的な事例は、ベトナムの貧困家庭の子供たちの栄養事情を解決するために遣わされたジェリー・スターニンの経験だ。彼は、十分な予算もなく、半年間という限られた期間で、圧倒されるようなプロジェクトを任されたのだ。問題なら数えきれないほどあった。公衆衛生、貧困、洗浄水がないこと、栄養への無知。社会構造に根差したいくつもの問題があり、スターニンにはどうしようもないことは明らかだった。

そこで、彼が目指したのは、ブライト・スポットを探すことだった。つまり、同じような環境でも、比較的健康な子供を育てている家族を探したのだ。成功例・成功モデルを探したのだ。そして、興味深い事実を突き止めた。貧困家庭なのに、栄養的に健康な子供を持つ家庭の食事パターンには一定の共通点があった。

・周囲の人は1日2回の食事を与えていたが、成功モデルの家庭は1日4回の食事を与えていた。
・周囲の人は子供が大皿から自分で食事をとるようにしていたが、成功モデルの家庭では親が積極的に取り分けて、確実に食べさせていた。
・成功モデルの家庭では、子供の米にエビ・カニ(田んぼでとれる)や、さつまいもの葉などを混ぜていた。

スターニンは、ベトナムの貧困家庭の母たちに「自分もできる」というポジティブな感情を持たせることができた。この発見をもとに、国家的なレベルでベトナムの栄養事情は解決に導かれたのだ。

「変化が必要な場面では、分析のしすぎは悪影響を及ぼしかねない。・・困難な状況に直面すると・・多くの場合は「分析麻痺」に襲われてしまう。」

「変えようとしている村そのもののなかにブライト・スポットを探すことで、スターニンはその土地に合った解決策を生み出そうとした。彼が別の村のアイデアを持ち込もうとしていたら、旅ははるかに困難になっていただろう。地元の母親は「あっちとは事情がちがう。私たちの問題はもっと複雑なの。こっちではうまくいかないわ。」と文句を言ったに違いない。

スイッチ! ──「変われない」を変える方法 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫) チップ ハース (著), ダン ハース (著), 千葉 敏生 (翻訳)

多くの場合、分析は「できていないこと」を考えることに費やされて、延々と問題は解決しないことになる。大事なのは、問題の中でも「できていること」(ブライト・スポット)を見極めることだ。

解決志向短期療法(ブリーフセラピー)

このスターニンの成果「ブライト・スポットを探す」は、個人の生活を変化させるためにも応用できる。心理学の一流派に解決志向短期療法がある。これは、精神分析のように過去にさかのぼって、その人の心の問題を解決しようとはしない。いくら物事の「原因」を見つけることができても、それは「解決」に結びつかないからだ。

解決志向短期療法では、患者に興味深い二つの質問をする。

(1)「夜寝ている間に、いま、相談している問題が、すっかり解決したとしたら、朝起きた時に「問題がなくなった」と感じる最初のサインは何だろうか」

これは「奇跡の質問」と呼ばれる。これは、今、抱えている問題を解決した時に本人が感じ取れる明確な進歩のサインになる。最初は、考えられもしないが、セラピストの巧みな誘導で、患者は変化について具体的に考えるようになる。その後に「本丸」の質問が投げかけられる。

(2)「最後にほんのわずかでも、その奇跡が見えたのはいつですか」

これは「例外の質問」と呼ばれる。アルコール依存症の患者であれば「ほんのわずかでもお酒を飲まないで済んだ時のこと」を、子供をしかりつけてしまう親であれば「子供に穏やかに対応できた時のこと」を思い出させる。つまり、問題を抱える人は、自分自身の生活の中に「ブライト・スポット」を持っているのだ。

「すでに何がうまくいっているか」「どうすれば、それを広げられるか」を考えることだ。

「できていること」を認める

人は基本的にネガティブなものだ。ADHDならなおさらだろう。多くの問題にまとわれ、生活は「できていないこと」で覆われている。しかし、その中でも確実に「できていること」があることを忘れないようにしたい。それがブライト・スポットになるからだ。

実は「できたことノート」は、シンプルだけど、ブライト・スポットに注目し、成功を拡大するための優れた方法だった。

毎日の日記と、振り返りが大事だ。誰かのノウハウではなく、自分自身の成功例であれば、確実にうまくいくことが保証されているんだから。

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大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq