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天才の作り方【感想】BS世界のドキュメンタリー「イツァーク~天才バイオリニストの歩み~」

小児麻痺で下半身が不自由ながら、世界的なバイオリニストとなったイツァークの半生を追うドキュメンタリーだ。彼の出身はイスラエル、彼はユダヤ人だが、彼の才能を伸ばそうとした両親のおかげで、13歳でアメリカに移り住んだ。13歳の時に、エド・サリバンショーに出演した映像が残っている。当時から天才的な技巧を持っていたことが分かる映像だ。

下半身の麻痺という障害ゆえに、音楽家としての道が閉ざされそうになったこともあるが、彼の才能は着実に見いだされ、ジュリアード音楽院で学ぶことになる。私は音楽に疎く、ほとんどイツァークを知らずにこの番組を見たが、最初から最後までお見事なバイオリンの演奏が聴けて満足した。

天才の奏でる音楽

イツァークの奏でるバイオリンは幼少期から飛びぬけていた。バイオリニストは、なぜ、人の心を震わせる演奏ができるのか。イツァークによると「頭の中のコンセプトが音色になる」のだ。つまり、演奏家は音符を忠実に弾くのではなく、その音楽に関する自分の理解や感性を音として伝えようとしているのだ。だから、優れた音楽家は内面の感性が豊かでなければならない。内面が空っぽだと、人の心を動かすものは出てこないからだ。

イツァークがアメリカに渡ってから師事した師は、彼の人間性や内面を深めること、可能性を伸ばすことに取り組んでくれた。単に技巧を磨くのではなく、少年だった彼に「このG#、あなたはどう考える?」と問いかけ続けた。そのころのイツァークは「言われたとおりに弾くから、そんなこと聞かれても分からないよ」という気持ちだったらしい。でも、この教え方が良かったのだ。

イツァークの人生を振り返ると、本当に良い人との出会いに恵まれてきたことが分かる。

天才を支える人たち

彼の成功を語るうえで欠かせないのは、妻の存在だ。妻は音楽家ではないが、幼いころから週2回カーネギーホールに通い、様々な音楽家の演奏を聴き続けてきた「耳」を持っている。そして、その耳で、イツァークの演奏を聴いて、ひとめぼれ?して結婚を自ら申し込んだ。イスラエルでは、イツァークは他の音楽家の演奏を聴く機会など、ほとんどなかったが、妻によって他の演奏家の優れた演奏をたくさん聞く機会を作ってもらったのだ。

幼い時から才能を発揮している演奏家の中には、10代が最高潮という人もいる。しかし、イツァークはそうではない。妻は、彼にこれからの「伸びしろ」を感じ取った。この妻の存在なくしては、世界的バイオリニストは存在していないだろう。また、彼の才能を伸ばすため、英語も話せないのにイスラエルから必死で渡米してきた両親の存在。たとえ本人が天才でも、その才能を伸ばすことを、決意している人の中でしか、その種は育っていかないだろう。

ちょうど、今、見ている朝ドラ「エール」の裕一の周囲の人たちと被った。そうそう、天才の背後には、天才を開花させた多くの人たちの存在があるんだよなぁって思いながら見たね。そういう意味で言えば、天才として、世界に知られるようになる人は、恵まれた一部の人だともいえるかもしれない。

#BS世界のドキュメンタリー   #イツァーク #天才バイオリニストの歩み #NHK

大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq