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メイガスの逆転人生【感想】「超絶マジシャン どん底からの逆転イリュージョン」

2018年、2019年と水森かおりさんと共に紅白に出場した大物イリュージョニスト(マジシャン)メイガスの逆転人生だ。華々しい現在の成功とは裏腹に、メイガスさんが、マジシャンとして(再)デビューしたのは44歳の時。現在は51歳。24歳でマジシャンを挫折してから、十数年もマジック界から離れていたとは思えない現在の姿、その背後にどんなストーリーがあるのか気になった。

ブランクがあったからこそ成し遂げられたことや、自分の強みをどのようにして活かしていくのかという学びにあふれていた。ちなみに、番組の中で、何個もイリュージョンのコーナーがあり、1粒で何度も美味しい回だった。

思いの強いやつが勝つ

メイガスさんが、十数年の時を経て、再びマジックに関わりだしたのは、ある芸能事務所からのオファーがきっかけだった。プリマベーラというアイドル(マジック・イリュージョンを強みにしたアイドルグループ)に手品を教えるトレーナーとして雇われたのだった。最初は本気を出していなかったメイガスさんだが、アイドル達が必死で練習を重ね、成功するために努力を重ねる姿に心を打たれるようになる。

芸能事務所社長の「最後は、思いの強いやつが勝つんだ!」という叱咤の声に、まるで自分が怒られているかのように感じた。メイガスさんは19歳でマジシャンとしてデビューしたが、24歳で引退している。凝ったイリュージョンを作る技術があったものの、思うように集客できず行き詰ってしまい、パートナーとも別れることになったのだ。その時は、しょうがなかったと思ったかもしれない。

しかし、本当に、この世界でやっていくという「覚悟」があったのだろうか。そもそも、メイガスさんは、マジシャンの師匠がいない。芸能界で仕事を取るには、どれほどの努力が必要か、ここで初めて目の当たりにしたのだ。必死で頑張るプリマベーラを指導するメイガスさんも本気になる。

そんな中、彼女たちのために、開発したマジックがある。仕掛けの無い?筒を用いて、次から次へとワインボトルを増殖するマジックだ。

ちなみに、メイガスさんの世界的な成功は、このネタを作り上げたことがきっかけなのだ。芽が出るのはずいぶん後になるんだけど。ほんと、人生、何が転機になるか分からないものだ。人生はいつも予想外だ。(参考:人生は思ったようにいかないもの【書評】トランジション ―人生の転機を活かすために ウィリアム・ブリッジズ

さて、こんなメイガスさんの姿を見ていた芸能事務所の社長が、メイガスさんも再度マジシャンとしてステージに立たないかと誘う。44歳の再デビューは、なかなか聞く話ではない。しかし、メイガスさんは、自分の心にともった火が、もう消せないことに気づいていた。自分に嘘はつけなかったのだ。

古典マジックのリメイク

44歳でマジシャンとして再デビューしたメイガスさん。決して順風満帆ではなかった。特徴のあるマジックを見せることができず、客席は盛り上がらなかった。その時点では、鳴かず飛ばすの中年マジシャンになっていく未来も見えただろう。

このままではダメだと悩んだメイガスさんは、今までのレパートリーを捨て、自分しかできないマジックを作ることを決心する。オリジナリティを見つけなければ、生きていけないのは、どの業界も同じだ。誰もやっていないこと、自分しかできないことは何か・・。(参考:妥協しない人のための仕事術【書評】オリジナリティ 本田 直之

再起のために、自分に課したのが2つの挑戦だ。

1:自分だけのトレードマークとなるようなマジック
2:イリュージョンに再挑戦すること

そして、作り上げられたマジックが「オレンジの木」。原作は170年前のロベールのマジックだ。その当時は相当のセンセーショナルなマジックだったが、今はすっかり廃れている。しかし、この独特で美しい世界観をリメイクしたらどうなるだろうか。メイガスさんは、自らネタ(ギミック)作りができる強みを活かし、見事に古典マジックのリメイクに成功する。

イリュージョン用の道具(ネタ)を自前で作れるマジシャンは、なかなかいない。メイガスさんは、自分で演じ、自分でイリュージョンネタを作り、新たなシナリオを描きなおすことができる稀有なマジシャンなのだ。

やがて、先述のボトルマジックを、海外のマジシャンがテレビ番組で披露し、そこからネタ製作者としてのメイガスさんにスポットライトが当たるようになった。メイガスさんの端正な容姿や、確かなマジックの腕前が世界に認められるようになるまで時間はかからなかった。そこからの快進撃は、私たちが知る通りだ。この期間、わずか5~6年なのだ。

古典に学ぶ大切さ

さて、私はマジシャンではない(当たり前)。しかし、実は学生の頃にマジックにハマり、相当数のネタを持っていたのだ。数百人の前で披露したこともある(闇歴史だ)。だから、近代奇術の父と呼ばれたロベールの名前ももちろん知っている。1800年代の人だ。私はメイガスさんのすごいところは、マジックの古典を読み解き、今の時代によみがえらせたことだと思う。

自分だけにしかできないマジック。新奇な方法をいくら開発しても、それが本当にオーディエンスにウケるかどうかは未知数だ。しかし、古典のマジック書に載っているネタであれば、過去に大ウケしたことはわかっている。それを現代風にアレンジすればウケること間違いないのだ。古典は、今に至るまで生き残ってきたから古典なのだ。

私も仕事ではオリジナリティを発揮する必要がある。同じようなことを生業にしている人は、ゴマンといる。自分の頭だけに頼って、アイデアを出し続けるんじゃ、すぐにネタ切れになってしまうだろう。

やっぱ古典だ。すでに廃れているけれど、確実に一世風靡したネタの宝庫である古典を現代風にリメイクできれば・・。そう考えると、多くの映画やドラマもその手法だ。

改めて古典のすごさと、古典を活かす才能の価値を感じたメイガスさんの復活劇なのだった。

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大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq