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イチゴショートとマカロニサラダ

昨日はみちこ(母)の誕生日であった。
今年で85歳になる。
前にも書いたが、病気のデパートのような人なので
息子的には

「ここまで長生きするとは」
 
というのが正直な感想。

でも正直嬉しい。
ていうか「めでたい」と思う。

なので何かお祝いを 

そう思っていたのだが
それはほれ、昭和生まれの男の子

親の誕生日なぞ祝ったことがない

わけだ。
多分全然ないわけではなかろうが

ほぼ覚えていない程度

なので、そんなにちゃんとやってないと思う。
特にここ数年は一緒に暮らしていないので

まったくもってノータッチだ。

とはいえ今は同居の身。
なんとかせねばならぬと思っていたが

「奥が何か考えているに違いない」

そういうことになった(笑)
そう。奥はこういうイベントごとを大事にする子だ。
なので今日も絶対企画しておるはず。

そう思っていた矢先、奥からメールが入った。

「今日はみちこさんのお誕生日なので、
 リクエストのマカロニサラダをします」


え?マカロニサラダ????

意外過ぎで言葉を失った。
誕生日だぞ?
もっと違うのあるだろ?
肉とか寿司とかさー。

なのにマカロニサラダ???
家族全員でおかんに

「誕生日おめでとう!!」

と言いながらマカロニサラダを食す。
そんなお誕生日会は聞いたことがない。
子どもだったらギャン泣きしているところだ。

ちなみに後て奥に聞いたところ
マカロニサラダ以外のリクエストも
ちょっとどうなの?という感じだったらしく
一番マシなマカロニサラダになったそうな。
それ以外にケーキを買ってくると書いてあった。

そしてお誕生日会(夕ご飯)が始まった。
目の前に大皿に盛りつけられたマカロニサラダがある。
いや~久しぶりに見たな。こんな大量のマカロニサラダ。
幸いにも他におかずがあった。よかった。

テーブルに着く前にみちこに声をかけた。

「誕生日おめでとう」

見事にスルーしやがった(怒)
まあいい。耳遠いもんな。

家族全員がテーブルについた。
再度みちこに声をかける。

「誕生日おめでとう」

なんか半笑いされた。
でもまあ伝わっただろう。ヨシとしよう。
続けてこう言ってやった。

「長生きできたなあ」

これに対してはまんざらではなさそうだ。
しかしここでとしはるが口をはさむ。

「ここにおいてもらってるから長生きするわ」

いや、あんたの出番ではない。
ていうか、年取ってから「媚びる」を覚えたな。
まあ言われて悪い気はしないのでヨシとしよう。

和気あいあいと食事は進んだ。
マカロニサラダもどんどんなくなる。
ちなみに8割以上、私たち夫婦が食べた。
これでは誰のためのものかわからんな。

食事が終わり満を持して
奥がこう言った。

「お義母さん、ケーキあるから選んで!」

そういって冷蔵庫から箱を取り出した。
蓋をあけて中身を見せる。
そして説明。

「これがイチゴショート、これがチーズケーキ。
 そしてこれがナッツのケーキ。
 それでもってこれがプリン。旦那用。」

なんか知らんうちに私はプリンになっていた。
ちょっと釈然としないものを感じたが
主役はみちこである。
ここはおとなしくしておくことにした。

みちこが指をさして聞いた。

「これは何?」

奥が答える。

「ん。それはチーズケーキ」

「私これでええわ」

みちこ、一番見た目が地味なのを選ぶ。
てっきりイチゴショートを選ぶと思っていた。
いや、もしかしたら奥のために
イチゴショートを残してくれたのかもしれん。
いいぞ、みちこ。

ここまではよかった。
問題はこの後だ。
奥がとしはるに聞いた。

「お義父さんはどれがいい?」

としはる迷うことなく指をさす。

「これ」

イチゴショートだ。
まったくもってケーキに縁がないというか
ケーキが似合わないというか
そもそも主役やないやろというか。

親父がイチゴショートを食べるイメージが
まったくなかったためちょっと頭がバグる。

まあ取り合いにならなかったのでいいか。
みちこも楽しそうだし。

奥が続けてみちこに聞いた。

「お義母さん、今から食べる?
 ご飯食べたばっかりやけどどう?」

みちこは答えた。

「うん、私は大丈夫。食べられるよ」

やっぱりお誕生日会にケーキはつきものだ。
食後のデザートにケーキを食べる。
それはもはや儀式であろう。

だがここであの空気を読めない男が
こう言い放った。

「俺はもう腹いっぱいやから」

主役誰!!!!!!!!!
もうほんとどうかと思う感じだったが
みちこは優しくこう言ったのだ。

「明日の朝、よばれよか」

朝ご飯代わりに食べるらしい。

みちこは嬉しかったのかな。
終始にこにこしておだやかだった。
としはるは相変わらずだったけど
家族4人で誕生日を祝うことができた。
あと何年できるかわからないけど
今年こうして過ごせたことを
今は感謝したいと思う。

追伸
昼間としはるは奥と一緒に病院に行っていた。
そのとき病院の売店でとしはるが
あんぱん(小さいのが4つくらい入ったやつ)を
買っていたそうだ。
「母ちゃんが誕生日やから」だったらしい。
なんかほほえましいな。