好きな人は既婚者です②-3 もっと壊れて

天井を見上げながら
「久しぶりにあったのに」と呟いた。
それは、何か、願いが叶わなかったとでも言うかのように。私は彼が期待し、想像するよりも冷たい対応だったのだろうか。冷静な口調に感じたのだろうか。この呟きは「私に会いたかった」と言い換えているようだ。素直じゃない子供のようで愛おしく感じた。

「僕らずっと不倫関係じゃん。不倫はいや?」
「いやじゃないよ」
いやと言ったら、結婚してくれるのか。そういえば、昨年結婚したばかりだ。結婚の報告を会社関係の人にしたその日から私と寝たことを思い出した。不倫が嫌かどうか聞いてくると言うことは、どこかに罪悪感なるものを感じてはいるのか。私の好意が純粋なものだと感じてくれているのか。彼からの思いがけない言葉に私の胸は膨らんだ。

彼の手が私の胸に伸びた。
「裸になって」
めんどくさいと思ったが、嫌な顔をされるのも癪にさわるので、ぬいだ。
「パンツだけは着ていてもいい?」
「いや、ぬいで、めんどくさい?」
「うん」
このあとのことを想像したが、睡魔で感情が湧き出ることさえなかった。ただ、この瞬間を覚えておきたいとしか思わなかった。
彼は私の顎に手を添え、顔に近づけた。
唇を離そうとすると追いかけてくる。
首筋、鎖骨、背中、やさしく、吸い付くように唇が触れる。
触れられるたびに、微かな愛情を感じる。
こんなふうに触れてくれるのは初めてだ。
私を求めているのが伝わった。嬉しくて、安心して、脳内がとろけるような、懐かしいような感覚に陥った。
体がつながる。心も確かに、繋がっていた。
「ねえ、いって、いっているところみたい」
「ふふ、今日はいけないみたい」

「いつも寝苦しい中で寝てるから」
彼はソファーに寝転び、寝息を立てた。

朝になった。
彼が私のベットにきた。私は彼を抱きしめ、彼も私を抱きしめた。
深くキスをした。
彼が夜中してくれたように、丁寧に首筋からそっと触れた。
「君の口は本当に気持ちいからね」
こうしていつも褒めてくれる。
「私のこと愛してる?」なんて、重いと思われるような質問がよぎった。

「もっと変態になって。もっと色々な男に抱かれて。もっと壊れて。新大久保でお金で男とやる女みたいに。壊れて、、、」
「もうそういう意味では、壊れているよ」
「乱行したの?」
「うふふ」
鼻歌を歌う時と同じ高さの声で、微笑んだ。
「乱行じゃ壊れないよ」
「どう壊れたの?ねえ、教えて」
「うふふ」
「教えて」
「教えない。」
「〇〇(名前)の中に出したい。〇〇ピル飲んでないからな。中出しするにはピル飲ませないといけないな」
「うふふ」
「教えないと中出しするよ」
「うふふ」

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