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龍が如く7を叫びながらプレイする人の話

この記事は『龍が如く7 光と闇の行方』のネタバレを含みます。

このゲームのおかげで沢城丈のオタクになってしまった。オタクって運営にすぐに金を送りたがるけど、とりあえず「沢城丈役に堤真一を起用」した感謝として7億を送りたいと思う。

オタクってもんは推しの話をしたいのさ

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沢城丈(以下、沢城)は八代目近江連合若頭補佐直参荒川組若頭として本作に登場する。

「義理人情を重んじる荒川組長に対し、シノギを重視する若頭。シノギが上げられない春日一番に容赦なく鉄拳制裁を浴びせるこも日常茶飯事。荒川組内における『ムチ』の面を一手に引き受けている。」(作中2000年当時)

「東城会時代より荒川真澄に仕える武闘派極道。春日一番を毛嫌いしており、18年の歳月が流れても、その嫌悪感は変わらない。荒川が近江連合の若頭代行となってからは、近江連合直参幹部クラスと同等の権力を持つ。」(作中2019年現在)

とあるように、主人公・春日一番の敵として度々行く手を阻んでくる。作中2回沢城と戦うことになるのだが、それぞれの戦いについては後述するとして、その戦闘スタイルはまさに「武闘派」で素手だろうが刀や杖なんでも自在に操ることができる男。ジャストガードしないと追加ダメージあるそんな厄介な敵、沢城ぐらいだよと初見で嘆いたものだ。

沢城の台詞の中で狂おしいほど好きなものがある。

「お前らみたいな抗争の一つも仕掛けられないクチだけのヤクザが大っ嫌いなんだよ。御託並べてもなぁヤクザなんてもんは結局は暴力…強ぇヤツに弱ぇヤツが従う世界だ。四の五の言わねェでテメェらはコッチの言うこと聞いてりゃいんだ。」

このシーン前後も最高に沢城丈節をかましているのだが、この男を分かりやすく表現している部分は間違いなくここだ。「極道の端くれにもならねぇ片田舎のカス」が、この台詞の後目を抉られてうわぁジャッジアイズよろしくじゃねぇかと心の中の羽村がチラチラ見てきた気がする。

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不器用の代名詞「沢城丈」

沢城と2回戦うことになると述べたが、それぞれ戦いの意味が違ってくる。

1戦目「止める」戦い

ムショから出た直後、荒川真澄が近江に寝返ったことを信じきれない春日は足立と共に荒川に会うため平安樓へ向かう。近江の兵隊を蹴散らし突き進み、荒川と扉1枚を挟んだ所で、沢城丈は待ち構えていた。

ーこの扉を開けてしまえば、もう二度と引き返すことは出来ない。

目先の事だけを追って行動してしまう春日に、拳で覚悟を問うのだった。

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2戦目「止めて欲しかった」戦い

荒川真澄が近江の何者かに殺され、近江へそれぞれの復讐心を抱いていた春日と沢城。
親父殺しは、東京都知事・青木遼が近江の幹部に命じたものであった。青木は沢城の実の息子だが、その事実を知っているのは沢城だけであった。「息子を守るのが俺の生きる道」とどんな命令も忠実にこなしてきたが、親父殺しだけはできなかった。

「若の命令に逆らったのは後にも先にもあれっきりだ…俺に荒川真澄は殺せねえ。もうとっくに人でなしの俺にもただひとつその命令だけは飲めなかった。飲めるわけがねえ…」

極道は渡世の親を殺せないと言うが、沢城の理由は違っていた。息子の傍にいる為に親父と盃を交わした沢城にとって荒川は息子の「父親」であり、事実を知らなくとも息子の傍にいる機会を持たせてくれた「恩人」であるからだ。

そんな沢城に青木は横浜星龍会会長・星野龍平を殺すよう命じる。青木にとって沢城は親父殺しを断った要らない存在であったため、三下の鉄砲玉のような扱いをするのにちょうどよかった。
青木の命令に全てを悟った沢城は、コミジュルという組織に星野殺害の情報を密かに流した。沢城は、若の手の上で踊らされる自分を春日に止めて欲しかったのだ。

しかし春日は間に合わなかった。星野の抜け殻の前で、沢城は自身の全てを春日にぶつける。

「遅えよ…イチ。お前はいつだって遅せえんだ。使いに行かせてもシノギに行かせても…」

真っ当に罪を償う為沢城は警視庁に連行された。終身刑になった今、何を想うのだろうか。

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まあつまり推しは最高ってこと

この記事を書くために改めてストーリーを振り返って感じたことは、確かに沢城丈はクズだ。検索画面にも「沢城丈 クズ」という候補が出るぐらいに彼の生き方は、汚れ仕事を全て他人に押し付ける利益しか考えない冷酷非道そのものだった。

沢城丈役で出演した堤真一さんの演技力も沢城のクズさを引き立てた。堤さんだからこの沢城は成り立った。沢城の一挙手一投足が堤さんの声によってスッと入り込んでくる感覚。NHKで放送される「もふもふモフモフ」や短編アニメ「おこしやす、ちとせちゃん」のような可愛らしい堤さんのナレーションを聞いてきたものだから、声の温度差に驚いたものだ。

沢城は自分の信念を曲げなかった。大切な息子を守るため何だってしてきた。それは簡単なはずが無く、彼が「中途半端」だと吐き捨てたものには彼自身の「半端」な気持ちも含まれていただろう。春日が大事にしている人と人との繋がり、絆に力を見出す本来の人間の姿も心の奥底に捨ててしまった。息子のそばにいるためにすべき選択をした沢城は人でなしにこそなってしまったが、親父としてあるべき一途な姿を垣間見た気がした。

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