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リニューアルあれこれ

年も明けまして 2023 年、西暦の数字が新しくなりました。
言わば西暦リニューアル……ではないかもしれませんが、そんな感じの雑談。

バナナ今昔

スーパーやコンビニで、お菓子のパッケージが目に入ったときなど、 "あれ、今こんなデザインなんだ" と驚くことがあります。パッケージのある加工食品は、見た目に分かりやすいですが、そうではない果物なんかも、もしかしたらいつの間にか、リニューアルされているかもしれません。

例えば独特な風味と食感の、甘くておいしい果物、バナナ。実は今と昔では流通している品種が異なるそうです。

かつて、市場で支配的であったのは "グロスミッチェル種" という品種。しかし 1960 年代に入ると "キャベンディッシュ種" にその座を奪われます。一体何があったのかといえば、その頃世界中で流行した "パナマ病" という病害によって、"グロスミッチェル種" が絶滅しかけたのだといいます。

一方、生産はされていたものの、あまりメジャーではなかったキャベンディッシュ。この種はパナマ病の影響を免れており、滅びゆくグロスミッチェルに代わり、生産・流通が活発になったのだそうです。諸行無常を感じますね。

メジャーな存在ではなくなったグロスミッチェル種、味や風味はとても良いらしく、現在でも少量、生産されているそうです。どうやらちょっと高級路線で売られている様子で、伝説のバナナとして箔がついたみたいですね。

よりよく継ぎ接ぎ

品種がそっくり入れ替わる、大幅リニューアルを遂げたバナナ。もう少し規模の小さいリニューアルであれば、身近でもよく起こるように思います。個人でも、物が壊れてしまったとき、修理ついでにちょっと飾りをつけてあげよう、なんてことがありますね。

そんな小規模リニューアル、日本には伝統的な技法があります。
それがこちら

ただの綺麗な模様ではなく…

器に入った味のある模様。しかしこれは、元から器にあしらわれていたものでなく、割れてしまった破片を継いだ跡なのだそう。この技法は "金継ぎ" と呼ばれていて、割れた破片を漆で接着し、金粉を縫って模様にしてしまうというもの。

一つの物を長く使う上では、どうしても損壊というものが起こってしまいますが、それすらも前向きに、その物の歴史の一つとして組み込んでいく、そんな文化だと受け取っているのですが、何とも粋だなぁと感じます。

修理された船

修理によるリニューアル。しかし "新装" という形ではなく、そのもの自体をそのまま直したい、という場面も多くあります。一般的に "修理" というと、そちらのイメージかもしれませんね。しかしその行為は、本当に物を元通りにできているのでしょうか?

テセウスの船という話があります。例えば木製の船があったとして、それが長い年月保存されていく中で、朽ちた部分を取り換えるなどの修理が繰り返されたとします。すると最終的に、元の船を構成していた木材や部品はすべて何処かへ行ってしまい、歴史ある船はピカピカの素材たちから成る物に。はたしてそれは元の船と同じものといえるのか、というお話。

つまりは、何をもってその物とするか、を問う問題ですね。これに対して、かの有名なアリストテレスが論じた、 "物が存在する" ということに対する、四つの要素を使って見てみましょう。まず四つの要素というのが。

  • 質料因 (その物の素材)

  • 形相因 (その物の形状)

  • 作用因 (その物が作られた過程)

  • 目的因 (その物が存在する目的)

だそうで、先ほどの船の話でいうと。

  • 質料因 : 異なる (元の素材とは異なる木材)

  • 形相因 : 同一 (同じ形の船を復元)

  • 作用因 : 同一 (造船時と同じ技術で船を復元)

  • 目的因 : 同一 (船としての目的は元の船と変わらない)

となりますので、修理を繰り返した船であっても、同じものと言って差し支えない気がしますね。よかったよかった。

え、そんな小難しいこと考えて物を直してないって?
奇遇ですね。握手。

おわりに

今年も明けてしばらく経ちますが、日付を書くタイミングでは 2022 とうっかり書きそうになります。今年はこの手癖がリニューアルされるまでどのくらいかかるやら。

ちなみに心は小学五年生のまま、今年もリニューアルの予定はありません。 つらぬけ童心。センスオブワンダー。



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