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近づくほどに遠く

"アキレスは亀に追いつけない" なんて詭弁がありますが、別に途中から亀が異常な速さで走り出すのではないので、あれはアキレスが無限に亀に近づいて行く話。

それとは違い、迫ろうとすればするほど、より近づくことの叶わない......といったものにまつわる雑談。

儚い水たまり

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先日梅雨入りをしたそうですが、僕の周りでは雨天もまちまち。路上の水たまりも出来ては消え、出来ては消えを繰り返していますが、暑い季節にはもっと儚いそれを目にすることがあります。

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それはこんな水たまり。そしてこれは近づくほどに遠ざかり、やがて消えてしまいます。主に夏の暑い日に出会う事が多いこの現象は "逃げ水" と呼ばれています。

海の向こうの空に、街や船が浮かび上がって見える蜃気楼という現象がありますが、あれは海面付近の空気が冷やされることで海上の空気に温度差が生まれ、そこを通過する光が屈折する事によって起こる現象です。

逃げ水はその逆パターン。炎天下のアスファルトによって地面に近い空気が温められることで、海とは逆の温度差が生まれます。その結果海とは逆方向に蜃気楼が生じ、地面に景色が反射しているように見える、ということだそうです。

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こんな図がありました。わかりやすい!

田舎にいた頃は目にすることもありましたが、都会に出て電車生活を始めてからは、とんと出会わなくなりました。どうやら僕の生活の外へ、遠く逃げ切られてしまったようです。なんてね。

さてそんな不思議な逃げ水ですが、幻覚ではなく確かな自然現象ですので、写真に収めることができます。では次は、同じように写真に収めることができる不思議な生物について......

空を泳ぐなにか

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1994年頃、アメリカはニューメキシコ州ロズウェルで、未確認動物が映像に映り込むという出来事がありました。その生き物は棒状の体に波打つ羽が生えており、高速で空中を移動していたといいます。

その後2000年に入ってからも、同様の生き物が映像や写真に映り込む報告例が続き、その生物は Flying Rod 日本では主に "スカイフィッシュ" と呼ばれています。

コレがその姿。確かに棒状の何かが高速で空中を横切っていますね。この生物は世界各地に存在しており、メキシコの "ゴロンドリナス洞窟" や日本では兵庫県の六甲山で多くみられました。

このスカイフィッシュですが、世界各地で多くの撮影報告があるものの、不思議と肉眼での目撃情報や "捕まえた" という話は聞きません。なぜかと言えば、とてつもない速度で飛び交っているために、人間の目ではその姿を捉える事ができないからなのだとか。

しかし実際は......

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カメラの性能が虫を捉えきれず生じていた残像だった、というオチだそうです。そのためハイスピードカメラをはじめ、性能の良いカメラにはスカイフィッシュは映らず、人間の目にも見えることは無いとのこと。現実世界と剥離のあるカメラ越しだからこそ、その姿を見ることが出来ていたのですね。

淋しさの結晶

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ところで "第七女子会彷徨" という漫画が好きなのですが、コミックス3巻に "地下鉄の恐怖" という話があります。

主人公たちが帰宅しようと歩いていると、原因不明の巨大な地割れによって道が分断されていました。そこで地割れを避けて帰るために、昔作られたという地下鉄のトンネルに潜って行きます。

トンネルを進んでいく主人公たちは、ふとしたことで天井を見上げます。そして綺麗なつららのような何かが、びっしりとトンネルの天井を埋め尽くしているのを目撃します。その直後、トンネルが崩れだして......というようなお話。

何年も幾年も
誰の目にも触れない
大きな空間には
世界の「孤独」が
ゆっくりと積もっていって......
それが結晶化するって
ことが起こるらしい

でも それは
誰かが観測した時点で
また形を失うか
あるいは逆に
膨れ上がってしまう

話の最後にはこのように書かれていました。つららのような何かは、作られたきり放っておかれたトンネルに積もった、孤独の結晶だったようです。

近づいたが為に形を保てなくなったという儚さと "孤独" が綺麗な結晶として描かれている様、なにより天井に群生する巨大な鍾乳石のような結晶が、怖ろしいような物哀しいような描かれ方をしていて、何だがとても心に残っていて好きな話。

他の話も言わずもがな、とても面白いのでご興味あれば。
不条理ギャグをベースにどこか淋しさの同居する、ふしぎな雰囲気の漫画です。

おわりに

 そういえば "近づくほどに〜" と書いていて思い出したのですが、聖飢魔IIの "エルドラド" という曲にそのような歌詞がありました。その曲では "早く行け、見失わないうちに" と繰り返され、存在しない黄金郷があたかも辿り着ける場所かのように謳われています。

今僕が早く辿り着きたいのは、堂々と居酒屋に行ける世界線です。世界よ頼む!




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