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夢で逢いましょう

夢の話は共感を呼びにくいので、メディアでするのはよろしくない、なんていう話があります。

ならば、多くの人が見れる夢についての話なら……と、思ったわけではないですが、夢についての雑談です。

夢十夜

夏目漱石の作品に "夢十夜" というものがあります。1908 年 7 月から 8 月にかけて、朝日新聞に連載されていた短編の連作であり、各話は "第〇夜" と題されています。

"こんな夢を見た" という書き出しから始まる十篇の……と思いきや、それが使われるのは最初の三篇だけ。しかし、五篇目で思い出したようにまた使われます。なんで?

全体を通してどこか幻想的な、それこそ "そういう夢" を集めたような作品です。第一夜の話は特に、詩的で美しいなぁと思います。その一方 "なんじゃそりゃ" な話もあります。個人的に好きなのは第六夜、木彫りの仁王像を掘る運慶を見ての話。

正確に仁王を彫る運慶を見て、どうしてあんなことができるのか、と疑問に思っていると、横にいた男が声をかけてきます。曰く、"あれは、木に埋まっている仁王を掘り出しているのだから、間違うはずもない" とのこと。それを真に受けて、それなら自分もと思った主人公は……というお話。

全編が青空文庫で読めます!ご興味あれば。

お猿の電車の悪夢

暦の上ではすっかり秋のはずですが、まだまだずいぶんと暑いですね。そこで夢に関する怪談の話題を一つ。"猿夢" というものについて。

これは 2000 年にインターネット掲示板に投稿された、有名なネット怪談で、明晰夢の中、お猿の電車に乗り込んだ投稿者は、他の乗客が次々と無残な最期を辿る悪夢を見ます。あわや次は自分の番という時に、自力で目を覚ましますが、同じ内容の夢を四年後に再び見て……という内容。

明晰夢は夢の中で、自由自在にふるまえる印象がありますが、この怪談の中では、自力で目を覚ますのにひどく苦労をしている描写があります。

内容の残虐さも怖ろしいですが、できるはずのことが中々できない無力感、というのも随分とホラーな要素だなぁと。

"猿夢" というのは俗称ですが、この単語でインターネットを検索すれば、全文が読めるかと思います。が、この話を聞いた人間は同じ夢を見る、という噂もありますので、十分にご注意を。

This man

同じ夢を見るといえば、こんなポスターがあります。

あなたは見たことがありますか?僕はないです。

このインパクトのある顔は 2006 年 1 月に、ニューヨークの精神科に通う患者が描いた、自身の夢に何度も出てくるという男性のもの。そしてこの絵を見た別の患者が、自分も夢でこの男に逢ったと言い出したのだそう。そして調査を進めると、夢の中でこの実在しない男に逢ったという人間が、世界各国に大勢いることがわかったそうです。

そんな彼が、どんな夢に出てくるかというと。

  • サンタの格好をして現れ、頭が風船になって頭上に浮かんだ。

  • 人の居ないショッピングモールで、小一時間追いまわされた。

  • 鏡の中にあらわれ、そのまま微動だにせずじっとこちらを見つめてきた。

いや、怖っ。

猿夢も真っ青な悪夢ですね。絶対見たくない。

さてこの This man ですが、実はマーケティングのためにでっち上げられた存在とのこと。しかし、何のマーケティングなのかは未だ正確な情報がなく、不気味なインターネットミームとして、今も残っているのです。

おわりに

夢占いによると "追いかけまわされる夢" は、ストレスやプレッシャーから逃れたいというサインらしいです。This man に追われる夢を見た男性は、その時期は仕事で大変な思いをしていたとのこと。おお、当たっている。

では、頭が風船のサンタが出てくる夢は……検索しても出てきませんね。

そりゃそうだ。



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Image from thisman.org 
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