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人知れず燃ゆる

飛んで火に入る夏の虫も、飛び込む炎がなければただの虫。しかし必要は発明の母。炎がなければ起こしてしまえば......と思っているかは別として、飛び込むどころか自発的に燃え上がろうとするものについての雑談。

スポンティニアス・コンバッション

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もしくはスポンティニアス・ヒューマン・コンバッション、 俗に言う "人体発火現象" です。古くは中世の文献の中にも登場する、非常に奇妙な現象ですが、その原因は今も解明されていません。

多くは脚や腕を残して焼失した姿で発見されますが、その周囲は不自然なほどに炎の影響を受けておらず、発火した人体が周りを巻き込むことなく静かに燃え尽きたようにしか見えないのだとか。

その原因として様々な仮説・憶測が飛び交っていますが、その中に人体の細胞が原因で発火するという説があります。

人体には UCP1 というタンパク質があり、これは活性化すると発熱し脂肪を燃焼させる働きをするのだそうです。そして人体の一部の細胞には UCP1 の活性化を促す性質を持つものがあり、その細胞が異常に活性化した状況下では UPC1 による脂肪代謝の発熱が 90 度に達するとのこと。

流石にそうはならんやろ、と言いたいところですが、事実は小説より〜とも申します。事実、自ら発火する性質を持つと考えられている生き物は、人間だけではありません。

物騒な花

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花といえば花言葉。贈り物として選ぶときには、気に掛ける要素としては外せません。そんな花言葉を持つ植物の中に "私は明日死ぬだろう" という言葉を持つ、ゴジアオイという花があります。随分と物騒ですね。

ゴジアオイの茎や葉には、良い香りのする樹脂が多く含まれています。良い香りがするということはそれは揮発性の油であり、すると山に咲くゴジアオイの周りには揮発した油が漂っていることになります。そしてそれらは、周りの木々の摩擦や日光などのちょっとしたきっかけで発火する可能性があるのだそうです。

それに加えゴジアオイの種には山火事に強いという性質がありそこから、繁殖時期には自分もろとも周りを焼き払い、子孫を残す花なのではないかといわれているのです。物騒な花言葉に物騒な性質。なんとも怖ろしく興味深い植物ですね。

しかし、ゴジアオイが原因とされる山林の火災は、実際には報告例がないのだとか。花言葉も自ら発火するという噂からではなく、正午に咲いた花が翌日には萎んでいるという儚い性質から取られたそうです。

幸か不幸かゴジアオイに関する、小説より奇妙な事実は未だ確認されていないようですね。

焼け跡から芽を出すもの

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では世の中にはやはり、自らを燃やそうとする生き物なんていないのでしょうか......と書いたら、もう結論を言っているも同じですね。それはユーカリです。あのコアラが食べるやつ。

彼らがなにをするかといえば、ゴジアオイと同じく引火性の物質を周囲に放出するのですが、その量と規模が桁違いで、オーストラリアの遠くの山々が青く美しいのは、大気による効果だけでなく山に生い茂るユーカリの放出した引火性物質によるものなのだそうです。

そして、ユーカリには火事を意識した性質があります。その幹は剥がれやすい皮で覆われており、火を受けるとすぐに剥がれて本体に燃え移るのを防ぎます。そして本体すら燃え尽きるほどの山火事だったとしても、その種は火事による熱や煙をきっかけに、ユーカリの木々もろとも全てが焼けた跡にその芽を出すのだと言われています。

オーストラリアのブルーマウンテンズ。日差しが強く乾燥したその山々では引火性の青い空気の中、ユーカリの木々が風が吹くたび、あちらこちらで葉をこすり合わせています。

とはいえ乾燥した地域の山林では、火事は定期的に起こるイベントの一つでしかなく、そこで育つ植物たちはそれに対応できるような仕組みを整えていて、特にユーカリは火事を積極的に利用する方向性で頑張っている、というだけの事なのでしょう。

おわりに

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今年も折り返しまして、燃えるような季節が徐々に近づいてきますね。僕は暑いのがホントダメなので毎年 "勘弁してくれ〜" という気持ちでいます。しいて良いいところを挙げるなら、キンキンのビールが美味しいくらい......

やっぱり楽しみになってきました。



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