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ペーズリー

みなさんは、ペーズリーという言葉をご存知だろうか。

私は恥ずかしながら、この齢になるまでその言葉を知らなかった。

調べてみれば、ペーズリーとは日本語で勾玉模様と呼ばれる、優美な曲線や草花を元にしたモチーフが繰り返される模様のデザインを指す言葉で、その柄はネクタイなどで人気らしい。そう言われれば、誰かの衣服に見かけたことがあるような気もする。

なるほど、ペーズリー。憶えておこう。

それにしても今回は、危ないところだった。


社会には常識とされていることが多く存在する。

それらを知らなくても、ほとんどの場合は少し眉を顰められるぐらいで大した問題にならない。

しかし、大顰蹙を買う場面も確かにある。

例えば、その無知故の勘違いが「不適切」な類のものに図らずもなってしまっていた場合。

今回、私はペーズリーが勾玉模様であることを学んだ。しかし、これを知らないまま誰かが会話の中で「ペーズリー」と言うのを耳にしたとしたら、私は間違いなく、なんでこいつは脈絡もなく孫悟空のマネをしてパイズリと言ったんだろう? と思ったに違いないのだ。


私は『ドラゴンボール』を読んだことがなく、だから孫悟空のイメージは、野沢雅子やそのモノマネ芸人がする、あのひどく訛った喋り方だ。

その訛り方は、次の法則に従うらしい。

1) ai, oiはeeになる

2) ruはttuになる

つまり、「オラ強い相手と戦えるの、ワクワクするぞ」は「オラ強え相手と戦えっの、ワクワクすっぞ」となり、パイズリpaizuriも、もちろんペーズリpeezuriになる。

私の連想は、孫悟空的に言えば極めて正しい。


ペーズリーを知らないままの私は、突然のパイズリ発言にドギマギしてしまうだろう。

しかし、「え、なんで今パイズリって言ったの?」と訊ねることは、社会的に極めて正しくない。だってその会話は、絶対にファッションやインテリアに関する会話であって猥談ではないはずだから。

このままでは非常にもやって仕方がない。誰にも頼れない以上、このもやもやは自分でなんとかするしかない。

だから私は考える。なぜ「いきなりパイズリ」だったのか。しかし、そもそもそれを言った事実がないのだから、答えなど出るわけがない。

答えのない問いの辛さに耐えかねて、私はおっぱいのことを考えるだろう。パイズリ。おっぱい。無理のない連想である。

大きなおっぱい。こぶりなおっぱい。きれいなおっぱい。おっぱいがいっぱい。

私の頭のなかは、たちまちおっぱいで満杯になる。

そうこうしているうちに、私はもう会話にはついていけなくなっている。


しかし、ペーズリーを知ってひとつ賢くなった私は、もうこんな勘違いをしない。

ペーズリーは模様のデザインの名前であって、パイズリが訛ったものじゃない。

たまたま読んだ本の一節に、ペーズリーという言葉があって本当に良かった。


こんなゆるい感じで、エッセイをやっていこうと思います。


【今回の一曲】

感覚ピエロ/O・P・P・A・I(2015年)



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