ミツルのこと

とにかく最初は関わった人物との思い出を積み上げていこう。

ミツルは私の人生にとって僅かな時間一緒にいたクラスメイト。でも自分の存在について考えさせてくれたやつ。悪い意味で。

初めてミツルと話したのは高校1年生の時、小さな予備校のエレベーターの中だった。予備校のクラスでは目立たないけど精悍な顔立ちをした少年で、自分みたいな不細工に声なんてかけないだろうと思っていたので驚いた。そこから度々一緒に帰った。なんとなく私が先に帰ろうとすると後から彼が来てくれるのが多かったと思う。自分から誘うのが釣り合わない気がして、怖かったから。こんな時から駆け引きで何かを確かめようとしていたんだな。

しばらくして、私と同じ高校の人と以前付き合っていたことを知らされた。

1回のデートの後、次は皆で遊ぼうと言われた。今ならその時点で振られたと思えるけど、諦めきれず連絡し続けた。

更に日が経ち、偶然にも高校で彼の元交際相手と同じクラスになった。彼女は私の上位互換みたいな人で、その時やっと、彼は私に昔の彼女を重ねていただけだと悟ったのだった。同じ制服を着て、同じ髪型で。多分デートの時に彼女と真逆の私服で現れた私を見た瞬間、彼女の像が崩れたのだろう。

私は彼にバレンタインデーの日、手作りのチョコレートを渡した。テンパリングなんて知らなかったので、酷い出来だった。彼はお返しにGUCCIの香水をくれた。高校生で!

私は彼に元交際相手の面影として消費され、何もかも勝てないまま、予備校を辞めて疎遠になった。その後、すぐに彼も辞めたと聞いた。

もう香水は廃番になってしまったけど、強烈な悔しさと共に、今までで集めたどの香水よりも好きな香りであり続けている。

香水の名は、“ENVY (嫉妬)” 。

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